「無敵のDJ」今季3勝目の秘密【舩越園子コラム】

「無敵のDJ」今季3勝目の秘密【舩越園子コラム】

勝利に大きく貢献したスパイダーパター(撮影:GettyImages)

プレーオフシリーズ第3戦の「BMW選手権」はダスティン・ジョンソンの優勝で幕を閉じた。


屈指のロングヒッターが持ち前の飛距離に正確性を加えたら、そのドライビングにかなう者はいない。「僕のドライバーがフェアウエイを捉え続ける限り、僕を負かすのは大変だ」

ジョンソンが自らそう言い切ったのは今年の全米オープンのときだった。その状態は2週間後のブリヂストン招待でも続き、ジョンソンはファイヤーストーンで今季2勝目を飾った。彼の言葉はまさに真実。誰も反論することはできなかったが、今週のBMW選手権では、そんな彼の無敵のドライビングにパットの好調ぶりも加わった。

そうなれば、それこそ無敵。2位に3打差の通算23アンダーで今季3勝目、米ツアー通算12勝目を挙げ、フェデックスカップランキング1位へ浮上して最終戦のツアー選手権へ。イーストレイクで優勝すれば、総合優勝の座と10ミリオンのビッグボーナス、その先には、おそらくプレーヤー・オブ・ザ・イヤーの栄誉も待っている。

メジャーに勝てそうで勝てない長い年月と私生活上のいろんな出来事、いろんな苦悩を経て、ようやく掴み始めた幸せの数々。

だが、このところ「思ったラインに打ち出せない」とやや悩んでいたパットが突然、今週になって好調に転じたきっかけは、案外、単純だった。先週、ジェイソン・デイがパットをポンポン決めるのを眺めたジョンソンは、デイが手にしていたスパイダーなるテーラーメイドのパターを使ってみようと思い立った。

そして初日のスタート直前。練習グリーンでスパイダーに好感触を得ていたジョンソンは、しかし突然、首を傾げた。

「スパイダーの赤い色が嫌だと思った。ジェイソンとまったく同じは嫌だった」

ジョンソンはキャディを務める弟のオースチンに「オマエ、黒いスパイダー持ってたよな?」と尋ね、弟が「車にある」と答えると「すぐ持ってきてくれ」と頼んだ。

その黒いスパイダーが次々にパットを沈め、優勝への道を快走していった。スコアリングに直接の貢献をしたのは確かにこのパターだった。だが、パター1本でゴルフができるわけではもちろんない。

パットが面白いように決まったあと、グリーンから次ホールのティグラウンドへ移り、自信を持ってドライバーを握れば、そのドライバーがまたまた火を噴き、そこで気持ちに余裕ができればセカンドショットも好打になる。そして、またパットが決まる。

そして、ジョンソンのゲームをさらに助けていたのは、彼のウェッジだった。

「過去と比べて今年一番良くなったものはウェッジだ。ドライバーでフェアウェイをとらえ、ウエッジを手にする。そのウェッジでバーディチャンスを作る。そして今週はパターがとてもいい仕事をしてくれた」

今週の正の連鎖は、現象としてはパターチェンジから始まった連鎖だが、連鎖を生み出す原動力となっていたのは、1つ1つの成功体験からもたらされた自信だ。

今週の4日間のみならず、すでに3勝を挙げた今季の好成績のすべてが「自信によってもたらされたものだ」とジョンソンは言う。

「全米オープンの優勝がすべての始まりだった。過去のメジャーでは惜敗したり、ペナルティを科せられたり、いろんなことが起こったけど、今年の全米オープン優勝が僕に大きな自信をもたらしてくれた。」

今、ジョンソンはドライバーもアイアンもウェッジもパットも、すべてが好調の波に乗っている。もはや怖いものなし。無敵のジョンソン。「それって他選手にとっては、アンフェアではないですか?」と優勝会見で米メディアが冗談混じりに尋ねた。

「ゴルフは常にフェアだよ。好調不調に関わらず、何だって起こる。どんなにいいプレーをしていても、いつ何が起こるかわからない」数多の山谷を越えてきたジョンソンの言葉だからこそ、真実味が溢れた。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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