オフウィークの話題は“2人のリッキー” 【舩越園子コラム】

オフウィークの話題は“2人のリッキー” 【舩越園子コラム】

キャプテン推薦でライダーカップに出場するリッキー・ファウラー(撮影:GettyImages)

 米ツアーは試合のないオフウィーク。そして、週が明ければいよいよプレーオフ最終戦のツアー選手権が開催されるのだが、今、米ゴルフ界で注目を集めているのは10ミリオンの行方より、復帰間近のタイガー・ウッズと米欧対抗戦のライダーカップ。その中でも、前向きにドライに物事を割り切る“2人のリッキー”が話題になっている。


 1人目のリッキーとは、もちろんリッキー・ファウラーのことだ。

 昨年はプレーヤーズ選手権とドイツ銀行選手権を制し、名実ともにトッププレーヤーの仲間入りをしたファウラー。今年は「僕の最大のゴールはライダーカップに出場すること」と公言し、シーズン序盤から上位入りを重ねてきた。

 しかし、松山英樹との激しい優勝争いに敗れた今年2月のウェイスト・マネージメント・フェニックス・オープン以来、「土壇場で弱くなった」と米メディアから揶揄され続け、実際、今季は未勝利。だが、ライダーカップへの想いは熱くなるばかりで、ライダーカップポイントを稼いで自力出場の8枠に入ることを目指し、リオ五輪からとんぼ返りで米ツアーのウインダム選手権にも出場。その翌週のプレーオフ第1戦、ザ・バークレイズでは最終日を首位で迎えた。

 だが、後半に崩れて7位に甘んじ、8枠入りは叶わなかった。気を取り直し、次はキャプテン推薦の3枠に入ることを目指して第2戦のドイツ銀行選手権、第3戦のBMW選手権で必死に戦った。が、どちらも振るわず、フェデックスカップランキングは31位へ後退。ライダーカップを目指すあまり、ツアー選手権進出と10ミリオンのチャンスを逃し、がっくり肩を落として今季を終える結果になった。

 ところが、嫌なことの後にはいいことがあるようで、ライダーカップ米国キャプテンのデービス・ラブIIIは3名のうちの1名にファウラーを指名。

 その途端、ファウラーはリオ五輪で銅メダルに輝いた米国人ダイバーとお揃いで五輪マークのタトゥーを腕に入れ、満面の笑顔でSNSにアップした。

 さらには「フロリダで14ミリオンの豪邸を購入し、ライダーカップ開幕直前に売買契約完了の見込み」とゴシップ紙に報じられたばかり。タトゥーの良し悪しは個々人の価値観次第だし、14ミリオンの家というのも庶民感覚からかけ離れすぎていてピンとこない数字だが、ともあれ一度は沈み切った気持ちを即座に前へ向けるそのスピードの速さとスケールの大きさは、さすがトッププレーヤーだと恐れ入ってしまう。

 さて、もう1人のリッキーは、米国人選手のブルックス・ケプカのキャディを務めるリッキー・エリオットのこと。

 エリオットは北アイルランド出身だが、ボスのケプカはライダーカップで米国チームのために戦う米国人選手だ。ここ20年、米国人選手のバッグを担ぐ欧州出身キャディの誰もが、「ライダーカップだけは米国のために働くわけにはいかない」と仕事を拒んできた。
 
 だが、エリオットは「ブルックスのバッグを担ぐのは僕のキャディとしての仕事。ブルックスのためにサポートするけど、僕はあくまでも北アイルランド人で欧州人だ」。

 そんなふうに割り切り、前を向くエリオットの姿勢が、国籍やアイデンティティの狭間で揺れるウエットな話を、明るくドライなストーリーに変えてくれている。

 過ぎたこと、済んだことはスパッと割り切り、先へ先へと視線を移して前向きになろうとするリッキー・ファウラー。自分は自分、仕事は仕事と割り切り、ここ20年間の前例を覆して前向きにライダーカップ会場へ赴くリッキー・エリオット。

 2人のリッキーの話題は、ライダーカップに興味がない人々にも訴えかけるものがある。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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