「勝者と敗者の納得」と「A・パーマーの訃報」で幕を閉じた16年シーズン【舩越園子コラム】

「勝者と敗者の納得」と「A・パーマーの訃報」で幕を閉じた16年シーズン【舩越園子コラム】

「グレートな1年だった」と、今年の年間王者は満足げに振り返った(撮影:GettyImages)

 ツアー選手権が終わり、米ツアーの今季が終了した。2007年から始まったフェデックスカップはプレーオフ4試合の仕組みやポイントの設定算出に関して、最初のうちは批判も続出したが、数々の改良を重ねてきたおかげで、今年はとてもいい締め括りになったと思う。

 
 大会を制し、総合優勝と10ミリオンのボーナスも獲得したローリー・マキロイは、デビュー当初からあたかも天才ゴルファーのように言われてきたが、彼には彼なりの苦悩が山ほどあり、この優勝は「ようやく報われた」と感じるほど長い長い想いの果ての勝利だった。

 ストレートな物言いから「生意気」「思い上がり」と米メディアからすいぶん揶揄された。友人とサッカーに興じて足首を故障し、前年覇者として全英オープンに挑めず、世界中から酷評されたこともある。

 近年は「過度の筋トレで筋肉をつけすぎ」「それが原因で優勝から遠ざかっている」と言われてきたが、プレーオフ第2戦のドイツ銀行選手権を制したことで、そうした批判を自ら払拭した。

 そして今日は逆転で首位に並んでプレーオフに突入。優勝目前に迫っては決め手のパットを外し、プレーオフ4ホール目で、ついに勝利。そのウイニングパットを沈めた瞬間、総合優勝も手に入れた。

 マキロイは2012年と2013年に総合優勝に迫りながら、それを逃した。その「逃し方」は、ちょうど今年のダスティン・ジョンソンとそっくりだった。

 だからなのだろう。「ダスティンにゴメンねって謝るかい?」と優勝会見で問われたマキロイ。

 「ノー。謝らない。だって僕も同じ悔しさを2度も味わってきたんだからね」

 喉から手が出るほど欲しかったタイトルを手に入れるため、なんとしても達成したかった偉業を達成するため、彼は彼なりに苦労と努力を重ねてきた。

 今週は幼少時代からのコーチ、マイケル・バノンの姿があった。今季終盤はパット専門コーチのフィル・ケニヨンの指導も受け始め、苦悩してきたパットが一気に上向いた。それがプレーオフ4試合で2勝、そして総合優勝という成功につながった。

 「ローリーは勝者に値する。脱帽だよ」
 
 初日から首位を独走しながら最終日は大きく崩れ、10ミリオンも逃したジョンソンは、しかし潔くマキロイの勝利を讃えた。

 ジョンソンが理由を明かさず姿を消し、戦線離脱したのは2年前のこと。復帰できるのか、復活できるのかと囁かれ、いろんな陰口もきかれた。メジャー大会では勝ちかけては何度も敗北。ルール絡みの惜敗もあった。今年の全米オープンでは、またしてもルール絡みの珍事が起こったが、それでも勝利したあのときからジョンソンは強くなった。

 「僕には最後まで10ミリオンのチャンスはあった。勝てなかったけど、今年はとてもグレートな1年だった。自分のプレーにも、とても満足できた1年だった」

 今大会で優勝に迫り、注目されたケビン・チャペルは、ツアー選手権で優勝すれば自身の初優勝になるところだった。「ダスティンは大学時代からの友だち。今はずいぶん差が開いてるけど、今一番ホットな選手がなぜ好調かを、この目で見たい。失うものは何もない」と捨て身で挑んだ。マキロイとのプレーオフ1ホール目で敗れ、初優勝もお預けになったが「今季の自分を誇りに思う」と頷いた。

 最終日に6アンダーで回って首位に並び、プレーオフ4ホール目までマキロイに絡んだライアン・ムーアも「グレートな1年だった。安定したプレーができた1年だった」と敗北しても安堵の笑顔を見せた。

 勝者も敗者も、みな笑顔で締め括った最終戦。それは、この大会と今季の米ツアーの努力の結晶と成功を意味していたのだと思う。

 そして、マキロイがウイニングパットを沈めたちょうどそのころ、ゴルフ界の“キング”、アーノルド・パーマーの訃報が飛び込んだこと。その不思議なタイミングにも何か深い意味を感じずにはいられなかった。
 
 米ツアーの2016年シーズンは、かくして幕を閉じた。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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