【辻にぃ見聞】調子が悪ければ“李知姫の後ろで練習”!ショット巧者が憧れるリズム

【辻にぃ見聞】調子が悪ければ“李知姫の後ろで練習”!ショット巧者が憧れるリズム

李知姫はショットメーカーが認めるショットメーカー(撮影:標英俊)

 李知姫がツアー史上3人目・外国勢としては初の生涯獲得賞金10億円を突破する快挙を達成することとなった『ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント』。今回の勝利で2年連続複数回優勝、ベテランの域に到達してもなお勝利を積み上げられる彼女の強さの『深層』を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。


■16年間でパーオン率TOP10内14度、知姫の後ろの打席で練習すれば上手くなる!?

 ツアーデビューした2000年に『LPGA新人戦 加賀電子カップ』で勝利、ツアー本格参戦となった2001年から賞金シードを上位で守り続けている息の長いプロだが、誰もが認める魅力はショット力。16年間でパーオン率トップ10に入ること14度(※1位が2度)。記録が示すように“ショットメーカーが憧れるショットメーカー”との印象を失うことなく、ツアーの中核選手として活躍しているが、辻村氏からその凄さを象徴するエピソードが…。

 「強さを語る上で一番のポイントは“リズムとテンポ”。実は…練習場で彼女が打ち込んでいると、“リズムが良くないな”と感じているほかの選手が後ろの打席に入って、知姫のリズムを参考にすることが多いんです。スイング理論の植え付けや、微調整はコーチの指導で良い方向に導くことが可能ですが、リズムを教え込むことは最も難しく、そのプロの核となる部分。私も実際にコーチングとして指導する選手に知姫の凄さを伝えたことがあります。

 赤堀奈々(※2012年引退)を教えていた2011年頃ですが、2人でレストランで“スイングリズムがいい選手ランキング”と話し合って“練習場で探そう”と改めてつぶさに観察したときに、今季シーズンを通して安定した成績で現在賞金ランク2位につける笠りつ子も候補にあがりましたが“やはり知姫が一番かな”と行き着きました。

 プロゴルファーはスイングに悩めば悩むほど、自分のリズムを失っていくことが往々にしてありますが、彼女の後ろの打席で“同じテンポで同じ球数が打てれば必ず上手くなる”と断言できる。僕ら以外にも行動に移していたプロ、練習をストップして観察していたプロも多くいましたからね(辻村氏)」

■力感がない=道具の重さを使えている証拠!力強いスピンでどんなグリーンにも対応

 ショットメーカーに羨ましがられるリズムを紐解いていくと、クラブを上手く使うことに長けていることに繋がると辻村氏。力感が生まれれば生まれるほど、シャフトのしなりを使えず、ヘッドの重さと体の捻転差で生み出すエネルギーをボールに伝えることができなくなる。だが知姫は力感のないスイングでクラブ&腕の重さを利用し、手元を体の近くに落としているので重心を低く保つことができ、ボールを打ち抜く手前で体が浮きあがってエネルギーをロスすることがない。それが安定した球をつねに打てる理由だという。

 「彼女は“重さを使う縦振りタイプ”。バックスイングで高く引き上げて、ヘッドを落とすタイプですが、それを実現するためには、力感を極力抑えてヘッド&シャフトのバランスからなるクラブの特性を生かす“リズム感”が重要になります。逆を言えば、クラブの重さを最大限引き出すことを考え抜くことが“いいリズム感”を作りあげることに繋がるということです。また、もう1つ付け加えると、ヒザを柔らかく使うことにより、自分の体重もボールに乗せられている。道具の重さ、自分の重さをリズミカルにボールにぶつける素晴らしいスイングです。

 横から払い打つタイプは当然サイドスピンが入りやすいですが、彼女のスイングはボールがネジれない=力強いバックスピンを入れることができ、かつしっかりと弾道の高さも与えられる。硬いグリーンにも対応できるからこそ、安定したパーオン率となるのです。

 彼女は普段から練習場で、体の近くに“道具の重さを縦に落としていくイメージ”のシャドースイングをやっています。リズム&テンポを整えるルーティンですね。アマチュアの方でもスイングの形などは雑誌や個人レッスンで学べる部分が多くありますが、リズムは学ぶことができない。教わる部分よりも見て感じる部分もある。だからこそ試合に訪れるギャラリーの方にはリズムがいい選手のプレーやショット練習風景を観察するのも楽しみのひとつかもしれません(辻村氏)」


解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。今季は上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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