ヒールになったマキロイの笑顔 「最高」だったライダーカップ【舩越園子コラム】

ヒールになったマキロイの笑顔 「最高」だったライダーカップ【舩越園子コラム】

敗れはしたものの今大会の主役の一人だったマキロイ(撮影:GettyImages)

2年に1度の米欧対抗戦、ライダーカップは「17対11」の大差で米国チームが圧勝。ここ3大会すべてで連敗した米国チームは、2008年以来、8年ぶりのカップ奪還に成功し、ヘーゼルティンナショナルに詰め寄せた大観衆とともにシャンパンシャワーで勝利を祝った。


振り返れば、2年前の前回大会のときは、もちろん勝利を挙げた欧州チームは笑顔だったが、大敗した米国チームは誰もが暗く険しい表情だった。負けた悔しさのみならず、キャプテンのトム・ワトソンの采配を巡ってチーム内に初日から広がった険悪なムードが「戦うことすらできなかった」という想いを選手たちに抱かせ、それが彼らの表情をどうしようもなく暗く険しくしていた。

今回は優勝した米国チーム全員が弾ける笑顔になったのだが、欧州チームの最大勢力となり、米国の大観衆の“最大の敵”にもなったローリー・マキロイが敗北したとはいえ、最後は笑顔で去っていったこと。それが何より良かったと思えてならない。

そう、ライダーカップ初日からマキロイの強さは群を抜いていた。それもそのはず、米ツアーのプレーオフシリーズでドイツ銀行選手権とツアー選手権を制し、総合優勝と10ミリオンを手に入れたばかりのマキロイは、一番ホットな状態でヘーゼルティンにやってきた選手だった。

初日の午後のフォーボールマッチ。マキロイは16番でイーグルパットを見事に沈め、大観衆に向かって「どうも!どうも!」とコミカルに2度お辞儀して見せた。その仕草は米国側にとっては「侮辱的」「挑戦的」に映り、米国側の戦意を燃え上がらせた。

一番激しく火が付いたのはパトリック・リードだった。そもそもリードは開幕前から「オレを3日間5マッチすべてに出してくれ」とキャプテンのラブに懇願していたほどだったが、2日目の午後のフォアボールの6番でチップインイーグルを決めた途端、静かに秘めていた彼の戦意は一気に燃え盛り、激しいガッツポーズとジェスチャーと雄叫びで大観衆を煽りながら戦い始めた。

何か不思議な力に操られてでもいるかのように次々にパットを沈めたリードが大観衆を沸かせながらマッチを制した一方で、マキロイが池に打ち込めば「USA!USA!」の嵐。それでもマッチを制したマキロイとリードが激突することになった最終日の個人マッチの直前には、大会を主催するPGAオブ・アメリカから「スポーツマンシップにのっとった応援をすること」「過度な言動は退場させる」という異例の声明が出された。

しかし、そんな声明で会場が静まり返るはずもない。蓋を開けてみれば、2人の一騎打ちに大観衆は狂喜し、自らを「欧州の最も危険な男」と称したマキロイが激しい野次のターゲットにされ続けたことは言うまでもない。

8番で長いバーディパットを沈めたマキロイは、ブーイングの嵐の中、今度は耳に手をかざし「拍手が聞こえないよ」というジェスチャーで観衆を怒らせた。

だが、続くリードも長いバーディパットを沈め返し、マキロイに向かって人差し指を小刻みに動かしながら「ノー、ノー、ノー(オマエだけに勝たせないぜ)」の仕草。それを見たマキロイは思わず笑顔。マキロイの笑顔を見たリードも笑顔。あのワンシーンに何かを感じ取った人は多かったはずだ。

18番。マッチを制し、再び激しい雄叫びを上げたリードが、すぐさまマキロイと笑顔で健闘を讃え合った姿。欧州敗北が決まった後、米国キャプテンのラブと言葉を交わし、ハグを交わしたマキロイの姿。勝者も敗者も、そんな姿こそが美しかった。

「僕は米国のために戦っていたけど、ローリーは毎週一緒にプレーする仲間でもある。ライダーカップはそこに関わるすべての人がいるからこそのライダーカップだと思っている」とは、リードの言。そんなリードの気持ちが、野次の嵐の中で敗北したマキロイにも最後には笑顔をもたらしたのだと私は思う。

勝ってうれしく、負けて悔しいのは当たり前。だが、それでも誰もが「いい戦いだった」と感じながら笑顔で帰っていったこと。今年のライダーカップは最高だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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