【辻にぃ見聞】史上初アマV・畑岡奈紗が纏う“一流アスリートに共通する”感覚<前編>

【辻にぃ見聞】史上初アマV・畑岡奈紗が纏う“一流アスリートに共通する”感覚<前編>

野球、陸上の良いところを余すところなくゴルフに活かしたスイングだ!(撮影:上山敬太)

 史上初となるアマチュアのメジャー覇者が生まれた「日本女子オープン」。優勝スコアが4アンダーとプロでも厳しいコンディションの中、ゴルフを始めて6年の高校3年生・畑岡奈紗が日本一となれた『深層』を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が語った。


■ゴルフを始めて6年でメジャー制覇 急成長の要因は“一流アスリートに共通する”感覚
 現在17歳の畑岡がゴルフを始めたのは11歳のとき。つまりクラブを握ってわずか6年でメジャータイトルを手にしたことになる。その類まれなポテンシャルをLPGA会長の小林浩美は「30年に1人の逸材」と評したが、辻村氏も「とんでもない可能性を秘めている」と絶賛する。

 「ゴルフを開始した年齢は現在の子にしては遅いですが、それまでに経験してきた野球、そして陸上の良いところを存分に活かしているからこそ、短い年月でもここまでの完成度が高さを誇るゴルファーが作り上げられたのではないでしょうか。

 野球とゴルフで共通する“棒を振る”という動作の中で“最短に振り落とすこと”を身に付けたことで無駄のないスイングを。そして陸上では下半身の強化はもちろんのこと、走るという動作を通じて“軸の安定性”を身に付けたのだと思います。

 そして2つのスポーツで育んだ体力が再現性の高いスイングにつながっています。陸上もゴルフも反復の練習を延々と行うスポーツで、再現性が問われるとともに練習をする体力がとても求められます。繰り返しトレーニングしてきたことで、練習するための体力がついていたことも大きいでしょう。以前このコラムでも取り上げた鈴木愛選手も、長い時間練習する力があるからこそ平均パット1位になっているわけですから、如何に練習量が大事かを分かってもらえると思います」(辻村氏)

 ただ、別のスポーツを経験してきているゴルファーはプロアマ問わず多い。畑岡が抜きに出ているのは、それらの経験を“あくまで自然にゴルフにつなげられている”こと。

 「ゴルフ全般においてそうなのですが、コースで“コレをやろう”と意識してプレーすること自体、“やれていない”ことと同じなのです。“なぜ、このドリルをやっているのか?”を理解したうえで反復練習を繰り返し、コースでは、自然に出せるようになることが大切なのです。

 彼女は別のスポーツからの動きをつなげるのが非常に上手い印象。これはイメージ力の高さがなければできない芸当。想像ができなければ動きにつながってこないですからね。彼女が一般的な女子プロよりも速い46〜47m/sのヘッドスピードを出すことができるのもイメージと実際の動きの誤差が非常に少ないからでしょう。これは一流アスリートの共通点で彼女の感覚の鋭さは計り知れません」

■スイング、アプローチ、パター…すべて総合した完成度は文句なしのアマチュアNO.1

 続いて「完成度はアマチュアでナンバーワンでしょう」と辻村氏が絶賛するスイングを具体的に聞くと…。

 「体の回転を利用してしっかりと振り切っている無駄がないスイングですね。手元の位置を体の正面を維持しながら、手元とお腹の間の“懐”にエネルギーをためてテークバックしていきます。そのため、トップはコンパクトながらもしっかりと捻転差が作られ、エネルギーがすごくたまっています。

 そして“野球で身に付けた動き=最短に振り落とすこと”、トップの位置から縦に、かつインサイドにクラブが下りてきます。トップで作った手首の角度がギリギリまでほどけず、左腰から右腰に力が切り替わるタイミングとクラブが出てくるタイミングが見事に一致してインパクトを迎えます。

 ここまでの一連の流れのなかでも“太い軸”がキープされて左右のブレがありません。158センチと小柄な体躯でも平均250ヤードが出せる理由は、シンプルですがとても力強く再現性の高いスイングの賜物ですね」

 また畑岡自身は『小技とパットが苦手だが、ショットでピンを攻めていけるのが自分のゴルフ』と語っていたが、辻村氏はショートゲームにも目を見張るものがあるという。

 「パターの良いポイントは2つ。1つは決断してから早い点。ボールの後ろで素振りをしながらイメージを出したら、迷わず打つ。ウイニングパットも同じように打っていました。もう1点は下半身が微動だにしないこと。ゆっくり体幹を使うパッティングほど体力が必要ですが、彼女のお尻はピクリともしません。プロでも苦戦するコースで優勝できたのは、総合的な上手さがあるからにほかなりません」


解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。今季は上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

<ゴルフ情報ALBA.Net>

関連記事(外部サイト)