ウッズ不在の開幕戦は新時代の始まり【舩越園子コラム】

ウッズ不在の開幕戦は新時代の始まり【舩越園子コラム】

逆転Vで昨年のリベンジを果たしたブレンダン・スティール(撮影:GettyImages)

 米ツアーの2016―17シーズンは、開幕戦のセーフウェイ・オープンにタイガー・ウッズがエントリーして注目されたと思ったら、今度は「ウッズ、ドタキャン」という展開となり、ファンも関係者も大いに落胆させられる波乱の幕開けとなった。


 おまけにカリフォルニア州ナパのシルバラードCCは悪天候に見舞われてサスペンデッドを繰り返す不規則進行になったが、その雨を誰よりも味方に付けたブレンダン・スティールが最終日に一気に7つスコアを伸ばし、4打差から大逆転優勝。素晴らしいプレーで試合を締め括り、波乱つづきだったウッズの不在の大会を最後には素敵な開幕戦にしてくれた。

 スティールと言えば、昨年のこの大会でも首位で最終日を迎えた33歳の米国人選手。1年前の今大会で、スティールが苦労しながらゴルフの練習をしたというジュニア時代の話を初めて聞き、その忍耐と努力にそれはそれは驚かされた。

 スティールが住んでいたカリフォルニアの山の中にはゴルフ場も練習場もまったくなく、それでもゴルフをしたいと言ったスティールのために、父親は庭にネットを張ったり、穴を掘って買ってきた砂を入れたり、池を作ったり。そんな手作り練習場でスティールはゴルフの腕をコツコツ自力で磨いたそうだ。

 隣町、と言っても、母親が朝晩、車で片道小1時間の送迎をしてくれて、やっと通えるようになった“遠く離れた隣町”のハイスクールのゴルフ部に入り、そこで初めて人並みの練習ができるようになったスティールは、文字通り、水を得た魚のように本物の練習場とコースで球を打ち、プロへの道を進んでいった。

 昨年大会は最終日で「76」と崩れ、首位から17位へ後退して終わったが、今年は6位から4打差を覆し、2011年のテキサスオープンに次ぐ通算2勝目を飾った。

 「アグレッシブに攻めて、でもミスをしないように、それだけを考えてプレーした。雨によるソフトなコンディションが僕を助けてくれた」と、雨上がりのコース上で晴れやかな笑顔を見せた。

 ところで、スティールのようにハングリー精神や貧しくハングリーな状況がモチベーションになったというのはグッドストーリーだが、選手たちの戦いの場である米ツアーが貧しくハングリーになってしまっては困る。

 というのも、始まったばかりの新シーズンは、その運営においても新時代を迎えようとしている。1994年から米ツアーを率いてきたティム・フィンチェム会長はすでに69歳。その任期は昨季で終わり、新シーズンからは46歳のジェイ・モナハンが新会長を務める。

 フィンチェム会長がリーダーを務めたこの20年超の歳月は、1996年に米ツアーにデビューしたタイガー・ウッズとともに歩んできた時代でもあった。

 賞金がみるみる高額化していったのも、テレビの放映権料が引き上げられ、それが米ツアーの大きな収入源となって潤っていったのも、すべてはフィンチェムとウッズの二人三脚がもたらした成果だった。社会貢献、社会還元に尽力し、チャリティ活動も積極的に行って、2014年には寄付総額が2ビリオンを超えた。

 1994年の米ツアーの賞金総額は56.4ミリオン(5640万ドル)だった。2016年のそれは325ミリオン(3億2500万ドル)まで増えた。賞金だけを見ても米ツアーを5倍以上に拡大成長させたフィンチェム体制の成功と功績は多大だ。

 それを引き継ぐモナハン体制は、そのぶんプレッシャーも大きいだろう。しかし、世界のゴルフ界をリードする米ツアーの成功は世界のお手本となる。強固で魅力的な舞台があってこそ、努力している選手たちの花が開く。だからこそ、モナハン体制とこれからの米ツアー新時代に大いに期待したい。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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