青木瀬令奈の絶対的な強み “リズム”と“テンポ”から生まれる爆発力【辻にぃ見聞】

青木瀬令奈の絶対的な強み “リズム”と“テンポ”から生まれる爆発力【辻にぃ見聞】

ツアー初優勝を挙げた青木瀬令奈とコーチ兼キャディの大西翔太氏(撮影:上山敬太)

荒天により初日の競技が中止となり、36ホールの短期決戦となった「ヨネックスレディス」は青木瀬令奈の初優勝で幕を閉じた。2014年に初シード獲得以降、中々勝利に恵まれなかった天才肌はいかにして栄冠をつかむことが出来たのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が深層を語った。


■青木瀬令奈の絶対的な持ち味 “リズム”と“テンポ”
2014年にシード獲得して以降優勝こそなかったものの、好成績を残していた青木。辻村氏が青木のプレースタイルで「絶対の持ち味」と語るのが“リズム”と“テンポ”。すなわち速さと規則性だ。

「スイングを見ていて感じるのがリズムの良さと思い切りの良さです。とにかく小気味良い。これは両親が音楽関係の仕事をしていたことや自身も楽器を演奏するなど、生まれ持った部分、育った環境も大きいですが、他の選手は持っていない明らかなストロングポイントです」。この感覚の鋭さ、リズム感こそが青木が天才肌と呼ばれる所以である。

中止となった翌日に行われた第1ラウンドは、前日に引き続き天候は悪く最高気温が13度。常に強い雨風にさらされながらのプレーにアンダーパーは3人だけ。トップが2アンダーと抜ける選手がおらず4打差に20人がひしめく大混戦となった。青木も優勝後『伸ばせばチャンスはあると思っていた』と語るように、いかに最終日にビッグスコアを出すかが優勝を左右した。その青木の強さが発揮されたのが今大会だった。

「彼女はスイングだけでなくプレー全体もテンポが素晴らしい。決断力がしっかりしていて、構えてからあれこれ考えず気持ちよくスイングするのはアマチュアの方も見習って欲しい部分です。だから良い流れに乗るのが非常に上手い。そのテンポに加えて、強気なゴルフを展開する選手で、パッティングはしっかりカップを越えてくる。だからバーディが獲れ出すと止まらない。その爆発力をようやく最終日に出せた。この勝利は彼女にとってもまた1つ自信になるのではないでしょうか」

■大西翔太氏と二人三脚で掴んだ栄冠 優勝への改善点は2つ
また、青木の初優勝に忘れてはならないのがコーチ兼キャディである大西翔太氏の存在だ。大西氏と二人三脚でスイング改造に取り組み飛距離は約20ヤードも向上。ゴルフが見違えるようになった。辻村氏がその大西氏に今回の優勝について聞いたところによると、2つの改善が大きく関係しているという。

1つ目がスイング時の下半身の使い方。「先週からしっかりと体重が左に乗り出したと言っていました。ボールにコンタクトした後が非常に長い、と。これはしっかりと下半身を使えていないと感じられないこと。調子が悪い選手は“ボールに当たるまで”の時間が長い。青木さんはしっかり右足に体重を乗せるタイプですが、今はそれから左に体重移動していくときにしっかり時間をかけられているからこその大西さんの発言だと思います」。これによりショットは安定。アップダウンの激しいヨネックスカントリークラブで、チャンスにつけたのはもちろん、ノーボギーでまとめられたのだ。

もう1つがパッティングだ。基本的にパターが得意なタイプだが、ここ数試合パッティングに不安を抱えていたという。「アライメントをもう1度見直そう、と2人で話したそうです。足、腰、肩。3つのラインがスクエアになっているか、もう1度確認しなおしたみたいですね。これによりボールのローリングが良くなったと話していました(辻村氏)」。

最終18番のバーディパットを沈めるときに、青木は『“これで勝てる”というよりも、まっすぐアドレスを取ってまっすぐ打つ、という練習を繰り返してきたので、ラインに向けて練習通り打ちました』と話している。「練習した内容はもちろん、1つ意識できる点があったからより集中できたのだと思います。結果として雑念を無くす効果もあったと言えるでしょう(辻村氏)」。

■厳しい寒さ、強い雨風の中でのゴルフ アマチュアが意識すべきこと
中止となった初日はもちろん、第1ラウンドも寒さ、雨、風と三重苦の中でのプレーとなった今大会。アマチュアであればキャンセルすべきような状況だが、そうはいかない時も…そういう時に気を付ける点を辻村氏が教えてくれた。

「絶対にしてはいけないのは寒さや風に力で勝とうとしてしまうことです。今大会でもそうやって力んだ選手がスコアを落としてしまっていたケースが多かったように思えます。また、風の日はどうしても曲げまいとして早く打ちにいきやすく、タイミングが早くなってしまいます。ましてや、寒い雨風ともなれば、身体も普段の半分ほどしか動かない感覚。また、上着を1枚着るごとに3ヤード飛ばなくなると考えてください。なので、浅くて早くなりやすいんです。風でタイミングを狂わされてしまうのです」

では、どうしたら良いのか。「飛ばないのは当たり前、と思うようにしましょう。クラブは14本あるわけですから、飛ばないならそれを踏まえたクラブを持てばいいわけです。あとは自然体でいること。柔らかくゆったり打つ、くらいでちょうど良いですよ」。


解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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