欧米どちらも素敵なルーキー優勝!【舩越園子コラム】

欧米どちらも素敵なルーキー優勝!【舩越園子コラム】

欧米共に今後の活躍が期待される新たなチャンピオンが登場した。(左からジョン・ラーム、ザンダー・シャウフェレ)(撮影:GettyImages)

今週は欧州ツアーでも米ツアーでもベテラン選手やビッグネームが期待に応えきれず、優勝はどちらもルーキーという展開になった。

欧州ツアーでは“マキロイの大会”、「ドバイデューティーフリー・アイリッシュオープンで」大会ホストのローリー・マキロイがあえなく予選落ち。世界ナンバー2の松山英樹は14位に終わり、優勝を十分に狙える位置で最終日を迎えた谷原秀人は残念ながら10位に終わった。

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堂々の欧州ツアー初優勝を飾ったのはスペインのジョン・ラーム。すでに今季のファーマーズ・インシュアランス・オープンを制して米ツアー初優勝を飾り、ランク急上昇中のラームは新人であることを忘れられてしまいがち。だが彼は、昨年プロ転向し、今年からフル参戦を開始したばかりの22歳だ。

「まだベイビーだから」とは、ラームとともに転戦し、一挙一動を見守っているガールフレンドのケリー嬢。彼女もラームもアリゾナ州立大学の出身で、ケリーは槍投げの選手として活躍していた。

ラームはスイングコーチもメンタルコーチも付けない主義。そんな彼を心身両面から支えているのはケリーだ。カロリーコントロールした手料理を食べさせ、「ジョンを30ポンド(13・6キロ)も減量させたのは実は私」とこっそり教えてくれたケリーは、熱しやすいラームの心をコース外で沈める方法も心得ている。「アナタも私もまだまだベイビー」と言い聞かせ、すでにビッグな賞金を得てはいるものの、常に倹約を強調して驕りや油断を排除している。残る課題は「コース上で冷静さを保てるかどうか」。彼女はしみじみ、そう言っていた。

その課題は6月のメモリアル・トーナメントでも全米オープンでもクリアできず、続けざまに予選落ち。だが「母国のある欧州行きを楽しみにしている」と言っていただけあって、今大会では我慢強く戦うことができ、それが2位に6打差の圧勝につながった。

最終ラウンドではルール上の騒動もあった。ラームが6番でマークしたボールを戻す際、ボールとマーカーの位置関係が違っていたとTV視聴者から物言いが付き、ルールオフィシャルとラームがやり取りする場面があった。結果は無罰となったが、優勝争いの真っ只中、そんな出来事に心を乱されることなく戦い通せたのは、ひょっとしたらケリー嬢の日頃の“教育”のおかげだったのかもしれない。

一方、米ツアーの「ザ・グリーンブライヤー・クラシック」では、キャディを25年来の相棒ジム・“ボーンズ”・マッケイから弟ティムに変えたばかりのフィル・ミケルソン、あるいは最年長優勝に迫った53歳のデービス・ラブに注目が集まった。だが、ラブは力尽きたかのように最終日は75とスコアを落とし、29位に甘んじた。辛くも予選を通過したミケルソンは最終日に64をマークして20位へ急上昇。全英オープンへ弾みをつけた。

優勝は米ツアーでも新人が挙げた。2015年にプロ転向し、下部ツアーを経て今季からフル参戦を開始したばかりのザンダー・シャウフェレ、23歳。わずか24試合目で初優勝を遂げ、全英オープンへの切符を手に入れた新人というストーリーは、かつてのジョーダン・スピースのそれとそっくりである。これまでは名前の読み方すら知られていない存在だったが、近い将来、シャウフェレがビッグスターになる可能性は高いだろう。

バックグラウンドもユニークだ。カリフォルニア出身で、ツアー登録は米国籍。だが、実を言えばシャウフェレは4つの国籍の持ち主。父親はフランスとドイツのハーフ、母親は台湾出身で日本育ち。“日本所縁”のイケメンという点はリッキー・ファウラーと通じるものがある。ゴルフはクラブプロ資格を持つ父親から手ほどきを受け、9歳から始めた。

72ホール目にバーディーパットをしっかり沈め、逆転勝利を飾ったシャウフェレの第一声は、歓喜に溢れながらもスマートで、サラブレッド性とスター性が垣間見えた。

「あれは初優勝がかかったパットの典型という感じで、とても震えたけど、あのパットが僕の人生を変えるパットになってくれた」。

ルーキー優勝が達成され、新たなるチャンピオンが誕生した今週の欧米両ツアー。ゴルフ界の未来は決して暗くない。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)


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