友情とジェラシーで育っていく米ツアー選手たち【舩越園子コラム】

友情とジェラシーで育っていく米ツアー選手たち【舩越園子コラム】

トーマス、スピースとジュニア時代から友情を育み、また競い合い成長してきた(撮影:GettyImages)

プレーオフ第2戦、デル・テクノロジーズ選手権最終日の優勝争いはジャスティン・トーマス、ジョーダン・スピース、マーク・リーシュマンの三つ巴の様相を呈していたが、終盤はスピースとリーシュマンが失速する一方でトーマスが抜け出し、最後はスピースを3打引き離してトーマスが快勝。今季5勝目、米ツアー通算6勝目を挙げた。


4年前の今大会の72ホール目。イーグルパットを見事に沈めて大歓声を浴びたのはスピースだった。とはいえ、優勝したわけではなかった。初出場ながら4位タイに食い込み、その2日後、プレジデンツカップの米国キャプテン、フレッド・カプルスから指名を受けてチーム入りを果たした。

あのときは、ジム・フューリックやダスティン・ジョンソン、リッキー・ファウラー、バッバ・ワトソンといった面々が、みなキャプテン推薦を心待ちにしており、そうした人気選手やベテラン選手をすべて押しのけて指名されたスピースには、大きな期待が寄せられ、スポットライトが向けられていた。

4年後の今年、スピースはその72ホール目でイーグルを取らない限り、首位を走るトーマスには追いつけないという状況を迎えたが、スピースの第2打が捉えたのはグリーンではなくバンカー。そこからの脱出も次打の寄せもうまくは行かず、悔しいボギーフィニッシュで2位に甘んじた。

そして、4年前にスピースが浴びた輝かしいスポットライトを、今年は優勝したトーマスが浴びる形になった。

そんな2人の追いかけっこのような歩みを眺めながら、米メディアがスピースにこんな質問をした。「トーマスを突き動かしてきたのはキミへのジェラシーだと思うかい?」。

スピースいわく、「ジャスティンのモチベーションは僕へのジェラシーではない。スポットライトを浴びる場所に自分も立ちたいという気持ちだと思う。僕は彼より少し先に、それをこのツアーでやっただけのことだ」。

なるほど。スピースが先にやったことをトーマスが後から追いかけて達成した例は、いろいろある。スピースが先に大学を離れて米ツアーに挑み始め、2013年に初優勝。2015年にマスターズと全米オープン、そして今年は全英オープンを制してメジャー3勝を挙げた。トーマスは2015年から米ツアーに挑み始め、その年の秋にCIMBクラシックで初優勝、そして今年は全米プロを制してメジャーチャンプになった。

スピースは2015年に年間5勝を挙げ、トーマスは今大会を制した時点で今季5勝目を達成。まさに、スピースがかつて浴びたスポットライトをトーマスが今、浴びつつある。

果たして、トーマスはスピースにジェラシーを感じていたのかどうか。「もちろん感じていたし、今でも彼にジェラシーを抱く。僕にもメジャー優勝が3つあったらいいなと思う」。

だから僕も、もっと勝ってやる。その気持ちがモチベーションになるし、「モチベーションにするのだ」と、トーマスはこれまでも言っていた。

そう、今年の全英オープンでスピースが優勝したとき、18番グリーンの奥にはトーマスの姿があった。「友達の優勝を見ることで、僕自身の勝利への渇望を膨らませたいから」と言っていたトーマスは、その翌月、全米プロでメジャー初優勝を遂げた。

4年前のスピースと同じように年間5勝を挙げ、プレーオフの残り2試合でさらなる優勝と年間王者の座も狙っているトーマス。だが、今、彼の胸の中にあるのは今週のウエブドットコムツアー・ファイナルズ第1戦で3位に食い込んで来季の米ツアー出場権をほぼ確定させた大学時代のルームメイト、トム・ラブレディのことだと言う。

「自宅に戻り、明日の夜、トムのツアーカード獲得と僕の優勝を一緒にディナーで祝う。それが何より楽しみでたまらない」。2年後、3年後、今度はトーマスの元ルームメイトが今のトーマスの後を追いかけ、スポットライトを浴びているかもしれない。

追いかけ、追いつき、追い越していく米ツアーは厳しい戦場だが、そこに友情も存在しているからこそ、彼らはさらなるエネルギーを得て、素敵なドラマを披露してくれる。
そんな米ツアーだからこそ、大勢の人々から愛される。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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