【記者の目】トーナメントの盛り上げは…プレーとギャラリーサービスの両輪がバランスよく回転することだと思う

【記者の目】トーナメントの盛り上げは…プレーとギャラリーサービスの両輪がバランスよく回転することだと思う

「ニチレイレディス」ギャラリープラザの充実ぶりはすごい?(撮影:ALBA)

鈴木愛の逆転優勝で幕を閉じた今年の「ニチレイレディス」。申ジエ(韓国)、テレサ・ルー(台湾)とのプレーオフを含めた優勝争いは十分見ごたえがあっただけに、現地に足を運んだゴルフファンは満足したのではないだろうか。


プロトーナメントを会場で観戦すると、テレビ中継ではなかなか伝わりにくい部分を理解できる。コースの高低差やグリーンのアンジュレーション、ラフの深さ、ショットの際に発するインパクトの音など、現地に来て”なるほどな”と感じることは少なくない。ただ、その反面、不便に感じることが多いのも事実だ。

野球やサッカーと違い、ゴルフは広大な敷地を必要とするため、都心から離れたところでトーナメントが開催される。電車やバスを乗り継ぎ、会場まで1時間以上かけてくる人がほとんどだろう。さらに、コース内でも同じ選手を観戦し続けるには相当な距離を歩くことになる。それも、選手より確実に足場の悪いところを歩かなければいけない。観る方も体力を必要とされるだけに、ゆっくりと休憩するエリアが欲しいところだが、ギャラリーが満足するだけのスペースを持ったトーナメントは少ないように思う。

その意味では、今回のニチレイレディスのギャラリープラザには驚かされた。クラブハウスと18番グリーンとの間に設置されていたが、まず目についたのが、テーブルとイスを覆うように作られた巨大なテントだ。ゆうに500人以上は座れるだけのスペースを持つ。

そのテントの横には食事や飲み物を提供する店舗が並び、ギャラリーはそこで購入したものをテントの下まで運んでランチタイムを楽しむが、岸正明大会事務局長は次のように語る。「大型テントは災害時の避難場所としてはもちろん、梅雨時の開催なのでギャラリーの皆様が雨をしのげることを考えて設置しました」。予算的にはまずまずの出費となったらしいが、ギャラリーファーストの理念を優先させたという。

しかし、トーナメント会場を仕事場とする身としては、大型テントよりも気になったことがある。ギャラリープラザやコース内に出店しているケータリングカーの数と種類だ。ピザやホットドッグ、焼きそば、牛丼といった定番のファストフードから、ドーナツやカステラ、フレンチトースト、ジェラートといったデザート類まで13台のケータリングカーと2つのミニテント、計15店舗もあった。

それぐらい大したことがないと思うかもしれないが、石窯で焼いたピザやスイカの実を凍らせて削ったかき氷やハワイで有名なマラサダドーナツ、揚げたてのパンにトッピングしたソフトクリームなど、ほかのトーナメント会場ではまず見たことのないお店ばかり。「そういえば腹がへったな」といつも心の中でつぶやいていた。

最終日は太陽がたまに顔を見せるなど、まずまずの天気だったため、巨大テントには入らず、芝生の上に座って食事を楽しむギャラリーも少なくなかった。その近くでは、決勝ラウンドに進めなかった選手などがアプローチやバンカー、パッティングの練習をしており、その風景を眺めながら、ジェラートを口に運ぶなど、のんびりした風景が印象的だった。さらに、キッズ用の遊び場やチャリティパターコーナーなども充実しており、ゴルフ未経験の小さな子供が楽しそうにボールをコロがしていた。残念ながらというか、当たり前だが、こちらは選手のプレーを見たり、ホールアウト後に話を聞いたりでコース内やクラブハウス近くをうろうろしなければならず、ギャラリープラザを楽しむ余裕はなかったが、横目で見るだけでもどこか幸せな気分になることができた。

おそらく、ゴルフをしない小さな子どもはトーナメント会場に来たことすら忘れてしまうかもしれない。しかし、将来、ふとしたことで”そういえばゴルフ場にいったことがあったな〜よく分からないけど楽しかったな”と思い出してくれれば、ゴルフに興味を持ってくれるのではないだろうか。

ゴルフ人気の低下が叫ばれる今日、ゴルフに関わる人々が人気回復に向け、陰に日向に様々な努力をしている。岸大会事務局長によれば、今大会のコンセプトは『カジュアルに、華やかに、ゴルフをファミリーで楽しもう』であり、地元密着を目指しつつ、毎年試行錯誤しながら改良しているという。選手が好プレーで観ているものを感動させる一方で、どこかワクワクするようなギャラリーサービスを提供する。来年もまた行ってみたいと思わせるためのヒントが今回のトーナメントにあったような気がしてならない。(文・山西英希)

<ゴルフ情報ALBA.Net>