【小川淳子の女子ツアーリポート】“臭いものにフタ“をしてばかりでは、前に進めない

【小川淳子の女子ツアーリポート】“臭いものにフタ“をしてばかりでは、前に進めない

全米オープンで起こった“ミケルソン問題”  米国のみならず、日本にも波紋を呼んでいる(撮影:GettyImages)

仕事柄、友人、知人からスポーツ関係の話題について質問されることは多い。もちろん、ゴルフ関連が中心だが…。尋ねる人は様々で、基本的に業界とは関係のない仕事をしている人の質問傾向から、色々なことを感じ取ることができる。


最近多いのは「片山晋呉って本当にあんなことしたの?」「全米オープンでフィル・ミケルソンがやったことはどう考えたらいいの?」。どちらも少しはゴルフをする人の問いだ。

ゴルフをしない人からの質問にはこんなものがある。「プロアマって何?」「ゴルフって動いているボールを打つこともあるの?」「宮里藍ちゃんっていま、何してるの?」「石川遼くんは毎週試合に出ていないの?」…。

いずれも、スポーツ紙やワイドショーに取り上げられ、その後、SNSなどで拡散されたことで、興味の対象となっている。

ちなみに、その前によく聞かれたのは、日大アメリカンフットボールチーム、フェニックスの悪質タックル問題だったり、レスリングのパワハラ問題。メディアのしつこい報道のせいもあるが、スキャンダルやトラブル、失敗してしまった話は、興味を引きやすいということだ。逆に、スポーツそのものや、アスリートたちの本質、いわゆる“いい話”などは、興味を持って初めて、読んでもらえるものだということがわかる。

スキャンダルやトラブルとまではいかなくても、失敗した話などが、人の興味を引くのはなぜか。それは、より身近なものだからだ。手が届かないアスリートが、自分と同じ人間であることが感じられ、興味のなかったスポーツにも「なんだろう?」と関心を示すことになる。つまり、スキャンダルやトラブル、失敗話などを表に出すことは、必ずしもマイナス面ばかりではないということだ。

危機管理の面から見ても、イマドキの常識では、トラブルが発生したらできる限り早く正直にそのことを公表する。謝罪するべきことはして、速やかに対処する。隠したり、嘘をつくことは、リスクを増大させる。

ところが、日本のゴルフの世界はまだまだそうはなっていない。“紳士のスポーツ”などといわれているからなのか、一部の人間に特権意識が強いからなのか、トラブルなどを必要以上に隠したがる傾向が強い。情報を自ら発信するということに関しても、不十分といわざるを得ない。LPGAもしかりだ。来年からプロテスト改革、予選会改革が始まることを知っている一般のゴルファーはどれだけいるのだろうか。

ボールはあるがまま、自分自身が審判で、ペナルティも自己申告というスポーツなのに、都合の悪いことは隠し、公表しなければならないこと以外は、聞かれても答えない。将来のビジョンも示さない。これでは、つまらない文章を読んでいるようなもの。周囲に何のアピールもできない。

実は、男子ツアーのプロアマトラブル事件が、これほどまでに注目を集めたことに、個人的には少しホッとしている。「へぇ〜。まだ世の中は、ゴルフにこれほど興味を示してくれているんだ」と。試合の結果以外が、ひと目に触れることがあまりにも少なかったからだ。

人気スポーツなら大きく取り上げられるはずの団体トップの交代やスキャンダルが報じられるのもごくごく小さく、それを歓迎するムードが漂い続けてきた。ゴルフというスポーツをまともに伝えるためには、いいこともそうでないこともできる限り表に出した方がいいというのに。それほど危機的な状況を感じていた。

しかし、周囲の反応は、必ずしもそうではなかった。「あんな事件が表沙汰になって」とか「ワイドショーでまで取り上げられちゃって」、「なんで公表したんだろう?」などと嘆く人の多さに驚いた。筆者同様、ものを伝える仕事をしている人間にまで、そんな“臭いモノにはフタ”派が少なくないのには仰天した。しかも、それを恥ずかしいとも思っていないなんて。完全に腐っている。人間の知る権利を誰が奪えるというのだろうか?

話が少しそれた。だが、都合の悪いことまでほじくられるのは、そのスポーツ(アスリート)が注目されている証し。そのことを肝に銘じてほしい。アスリート個人もそうだが、それをまとめる立場にあるツアーは、常に発信を続け、都合が悪いことでも事実は事実として伝え続けることで、存在感をアピールする。“臭いモノにはフタ”では、すべてが隠されてしまうのだから。(文・小川淳子)

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