「ホーム」で勝利するバッバ・ワトソンの“勝ち方”【舩越園子コラム】

「ホーム」で勝利するバッバ・ワトソンの“勝ち方”【舩越園子コラム】

“第2のホーム”で今季3勝目を挙げたバッバ・ワトソン(撮影:GettyImages)

<トラベラーズ選手権 最終日◇24日◇TPCリバー・ハイランズ(6841ヤード・パー70)>

「トラベラーズ選手権」の最終日は、今度こそポール・ケーシー(イングランド)が逃げ切り優勝するのではないかと見られていた。3日目に自身のキャリア最小スコア「62」をマークし、2位に4打差の単独首位で最終日を迎えたケーシーにとって、この大会で優勝に迫るのは初めてではなかった。


2015年大会でもケーシーは優勝争いに絡んだが、バッバ・ワトソン(米国)とのプレーオフで敗れた。あのとき彼は悔しさを噛み締めながら「必ずここへ戻ってきて勝ってみせる」と言った。

今大会に限らず、ケーシーの名を聞くと、彼が勝利した場面より、惜敗した場面のほうが多く思い出される。それもそのはず、これまで彼は米ツアーで2位に甘んじたことが7回もあった。勝った経験はというと、09年「シェル・ヒューストン・オープン」初優勝以来、ずっと惜敗続き。今年3月の「バルスパー選手権」でようやく米ツアー2勝目を飾り、実に9年ぶりに勝利の美酒を味わった。

そのときケーシーはこう言っていた。

「いつも、あと少しというところで勝利に手が届かなった。その原因はパット。今年はパットがすごく好調になって勝つことができた。これからもっともっと勝つ」

実際、それからのケーシーは好調で5月の「ウェルズ・ファーゴ選手権」では5位に食い込み、先週の「全米オープン」は16位と安定して上位を維持。今大会では3日目に単独首位へ浮上し、最終日へ。3年前の彼の言葉を覚えていた地元のファンや大会関係者は「戻ってきたケーシーが今度こそ勝つ」と期待を寄せ、そんな雪辱とカムバック優勝を誰よりも期待していたのはケーシー本人だった。

「このコースは飛ばし屋向きのコースではなく、いろんな勝ち方ができるコースだ」。だからこそ、自分向きであるとケーシーは自信を膨らませていた。

しかし、蓋を開けてみれば、最終日は飛ばし屋のワトソンが8バーディー・1ボギーの快進撃で一気に単独首位へ浮上し、先にホールアウト。ケーシー以下、J・B・ホームズ(米国)など数人がワトソンを追う形になったが、誰一人ワトソンに追いつくことはできず、ケーシーも上がり3ホールで2ボギーと肝心な終盤にスコアを落とし、ワトソンには3打も及ばず2位タイで終わった。

ずっと好調だったパットが最終日は乱れ、そうなるとショットも乱れ始め、2オーバーのラウンド。「いろんな勝ち方ができる」と意気込んでいたケーシーは、勝利を意識したあまり、今大会でまたしても2位に甘んじ、またしてもワトソンに敗れ、「いろんな負け方を味わう」という皮肉な結末を迎えた。

そんなケーシーとは対照的に大逆転優勝を遂げたワトソンは、10年に今大会で初優勝を挙げ、15年にはケーシーを下して大会2勝目を挙げ、そしてこの日は大会3勝目、今季3勝目、米ツアー通算12勝目を挙げた。

過去に2度も勝利していながら、今大会の舞台であるTPCリバーハイランズは「僕に向いていないから嫌いだ」と言って、一歩引いて構えていたワトソン。過去の優勝者として「大会に恩返しがしたい一心で、この大会に出ることにした」。いざ、試合会場に来たら、親しみのある人やモノと再会できて「第2のホーム(故郷)に帰ってきた気がした」。

「プロゴルファーである前に一人の人間でありたい」というワトソンは、養子縁組で長男と長女を家族に迎え、幸せな我が家を作ることを何より大切にしてきた。そして、「マスターズ」を12年と14年に制し、今年2月の「ジェネシス・オープン」では大会3勝目を挙げ、今週はトラベラーズ選手権で3勝目。ゴーイング・マイ・ウェイだからこそ、家庭にも戦う場所にも「ホーム」と感じることができる心地良い環境を整え、メンタル面を整えてから戦うからこそ、いいゴルフができる。ワトソンは、そんな勝ち方を披露してくれた。

またしても惜敗したケーシーが、それでも気丈に敗戦の弁を語り、ワトソンを讃えていた姿が印象的だった。

「今日のバッバの63は素晴らしい。彼は勝者にふさわしい」

心地よい余韻が残ったサンデーアフタヌーンだった。

文・舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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