渋野日向子フィーバーが覆い隠す女子プロ協会のゴタゴタと島国根性

渋野日向子フィーバーが覆い隠す女子プロ協会のゴタゴタと島国根性

3日間2万人超の観客を呼んだ渋野(C)日刊ゲンダイ

この日も、主役はイ・ミニョン(27)とのプレーオフを制した穴井詩(31)ではなかった。

 首位と1打差2位発進、最終組でプレーした渋野日向子(20)が、メジャーから帰国後の凱旋優勝を期待するギャラリーとメディアの視線を独り占め。一躍、女子ゴルフ界のヒロインになった渋野は、先にホールアウトした穴井、イと同じ通算14アンダー首位タイで最終18番を迎えた。

 5メートルのバーディーパットを決めたら優勝だったが、「手が動かず」(渋野)に2メートルオーバー。返しのパーパットも外してボギーとなり、プレーオフに参戦できずに負けた。

「返し(のパット)も手が動いていなかった。ラインは読めてたと思うので情けなかった」(渋野)

■宝くじに当たったようなもの

 今大会は渋野見たさに初日(5577人)から多数のギャラリーが会場を訪れた。3日間合計は2万1844人。会場へ向かう車の大渋滞や軽井沢駅で無料ギャラリーバスを待つ人の波がテレビでも大きく報じられていた。今大会の2万人超のギャラリーは2009年(2万1428人)以来だ。

 ギャラリーだけではない。

「取材に来たマスコミは3日間で延べ200人。全英優勝直後だった先週の大会もたくさん来たそうですが、最近ではこれほど注目された女子プロの大会は記憶にない」(ツアー関係者)という。

「それにしても日本女子プロゴルフ協会にとって渋野のメジャー優勝は宝くじに当たったようなものでしょう」と言うのは評論家の宮崎紘一氏だ。

「渋野がメジャー優勝で得た米ツアー出場権を見送ると表明して、協会は内心ほっとしているはずです。渋野が試合に出たらメディアに注目されて、視聴率もギャラリー動員数も大きくアップする。協会にとってこんなにおいしい話はないわけです。ただし、女子ツアーがいま抱える問題も今回の騒ぎで覆い隠されてしまうかもしれません」

■テレビ局とスポンサーの反発

 協会はいま、来季ツアーに向けて各主催者からの大会開催申し込みを受け付けており、提出締め切りは8月30日(17時必着・厳守)。協約書の締結は9月30日(同)としているが、放映権や主催権の帰属を巡って協会サイドの一方的なゴリ押しに、テレビ局や一部スポンサーが反発している。昨年同様、いつまでたってもツアー日程が決まらない事態に直面しているのだ。

 だが、渋野のメジャー優勝で協会はさらに強気に出るのではないか、と見る関係者は多い。

「小林浩美会長は、ツアー改革には痛みが伴うという考えの持ち主です。放映権と主催権を手に入れるためには一歩も譲らないという、協会のスタンスは一貫している。渋野人気で女子ツアーは盛り上がっているのに、試合を開催したくない、協会に協力しないというスポンサーは『どうぞご勝手に』というわけです。今後は新スポンサーとの交渉材料として『プロアマには必ず渋野を出場させます』と言って、メジャーチャンピオンを利用するかもしれません」(ツアー関係者)

 人気選手をしばりつけておきたいという、協会の体質は昔から変わらない。海外挑戦の選手には冷たいし、海外から撤退し、帰国してもその後のバックアップは何一つない。

 例えば、男子プロは全米や全英オープンなどの海外メジャーでの獲得賞金を国内ツアーの賞金ランクに加算しているが、渋野が全英優勝で得た約7200万円の賞金は国内ツアーとは別扱いだ。

 評論家の菅野徳雄氏は以前から日刊ゲンダイに「男女ともシード権を持っている選手が米国や欧州のツアーに出場し、帰国した時には国内ツアーに復帰できるようにするべき」と提言していた。このようなバックアップ制度がないから海外ツアーに挑戦する選手が少ないと菅野氏は言うのだが、そんな話は女子プロ協会からはちっとも聞こえてこない。

「協会は日本選手を海外に送り出すシステムやレベルアップさせる努力を何一つやってこなかった。海外へ出ていくのなら勝手にやればいいという態度がずっと続いている。その点、国内専念を明言している渋野に関しては、会場での警備など至れり尽くせりでしょう。ただ、渋野の全英優勝の偉業により、樋口久子の1977年全米女子プロ優勝から42年間もメジャーに勝てなかったのはナゼかという、国内女子プロの本質的なレベルの問題の他に、放映や主催者権に関するゴタゴタなどもみんなウヤムヤになってしまう」(前出の宮崎氏)

■スポンサーも海外挑戦後押し

 日本人のメジャー優勝は樋口と渋野の2勝だけ。しかし、韓国選手はすでに30勝を挙げており、今季だけでも3勝。しかも2011年から9年連続で韓国人選手はメジャーに勝っている。

「韓国選手のメジャー優勝は何も珍しいことではなく、渋野のように国中が大騒ぎすることもありません。韓国にとって女子プロゴルファーは世界に誇る“一流商品”という意識があって、協会は米ツアーに送り出すことで韓国女子ツアーの地位を高める“ビジョン2028”という10年計画を進めています。もちろん協会だけでなく、スポンサーも韓国内でくすぶっているのではなく、世界で活躍して欲しいと海外挑戦を応援している。韓国選手は多くが米ツアーで実績を残してきたが、それは海外に挑戦しやすい環境を国中でつくってきたからです。日本と韓国との大きな違いはそこでしょう」(ジャーナリスト・太刀川正樹氏)

 渋野は来年の東京五輪ゴルフ競技で「金メダルを獲得したい」と語っている。それなら、レベルの高い舞台で戦い、さらに自身を高めない限り、目標には手が届かない。さっさと海を渡るべき。でなければ協会に利用されるだけだ。

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