岡崎慎司が抱く“ポジティブな危機感” 常に逆境を跳ね返し続けられる理由

岡崎慎司が抱く“ポジティブな危機感” 常に逆境を跳ね返し続けられる理由

チェルシー戦で2ゴールの活躍を見せた岡崎。先発復帰なるか。(写真:Getty Images)

「SHINJI SHOW(シンジ・ショウ)」

 そんな最高の褒め言葉とともに岡崎慎司の姿をスポーツ面のトップに持ってきたのは、チェルシーとのリーグ杯3回戦翌日の、地元紙『レスター・マーキュリー』である。

 この試合で公式戦3試合ぶりに先発復帰した岡崎は、前半だけで2ゴールを挙げる活躍を見せた。しかし、チームは後半に入って同点に追いつかれると、後半終盤に退場者を出して逆転負けを喫した(結果は延長戦の末に2−4)。レスターを勝利に導く殊勲のゴールとはならなかったが、75分の交代時にはホームのサポーターにスタンディング・オベーションで迎えられた。『レスター・マーキュリー』も「これまでの粘り強いハードワークが報われた」とし、岡崎にチーム最高点タイとなる8点(10点満点)の高評価をつけた。

 GKの動きを素早く察知し、技ありのヘディングシュートを決めた1点目。MFアンディ・キングの浮き球のスルーパスを胸トラップし、右足で叩きつけて入れた2点目。いずれも、高い技術と鋭いゴール嗅覚が発揮された得点だったが、何より大きいのは「ゴールを決めた」というその事実だろう。

 レスターは、夏の移籍市場でアルジェリア代表FWのイスラム・スリマニを獲得した。同選手はクラブ史上最高額となる3000万ユーロ(約34億5000万円) で加入すると、早速2試合連続で先発出場。一方、それまでレギュラーだった岡崎はこの2試合で出番が与えられず、定位置を奪われた形だ。

 そんな状況で、岡崎の2得点は生まれた。優先順位の落ちるリーグ杯だったとはいえ、先発に復帰した試合で2ゴールを挙げた意義は、やはり大きいだろう。岡崎の得点は、昨季終盤の3月に行われたニューカッスル戦で決めたオーバーヘッド弾から実に6カ月ぶりのことで、本人もこのゴールの重要性を語る。

「自分に対するラニエリ監督の見方が変わるとは思わないけど、ラッキーボーイみたいに、『今、当たっているな』と思ってもらえるだけでも全然違う。だって、今までは(スピードや高さなど突出した武器がないため)控えに置いておくのも厳しいように思われていたから。先発か、ベンチ外か。そういう立場に置かれていたと思う。でも今日の2ゴールで、『点をとり始めているし、ベンチに置いて途中から出しても良いな』と思わせられたら、次の出場チャンスにつながる。長い間ゴールをとっていなかったから、自分にとって大事なゴールです」

 その一方で、得点に浮かれすぎることもない。久しぶりのゴールに安堵(あんど)していたが、手放しで喜ぶことはなかった。「海外のクラブで、いつも毎回(試合に)出られる力は、今はないと思う。昨季は運良くチームにフィットした」と、自分の力と立ち位置を分析する。その上で、「ポジティブな危機感」という独特の表現を用いて、厳しいレギュラー争いに挑む現在の心境を明かした。

「危機感というのはいろいろあると思うんですけど、自分の場合はポジティブな危機感で。危機感がないと前に進む力が出ない。だから長い目で見たら、(今の状況も)浮上のきっかけになった。こうやって焦ったから2ゴールが生まれたと思うし。やはりその立場にならないと本当の底力は出ない。今日は、それがたまたまゴールにつながった。これをきっかけにしたい。試合に出られない状況というのは、いつでも、誰にでも起きることだと思います。だから、スリマニやバーディーの調子が出ない時のために、『自分がいる』ことをプレーで見せていかなければ」

 精神面で少しプレッシャーがかかった方が、選手として伸びていく──。岡崎にとって逆境が刺激になるのは、プロとしての歩みを始めた清水エスパルスでFWの8番手としてスタートし、世界最高峰とうたわれるプレミアリーグまでたどり着いた事実が証明している。だからこそ、「自分に自信が持てなくなかったら終わり」と胸を張る。

 しかし、プレーそのものについては、今のスタイルを変える必要はないと考えているという。キーワードは、「自分のカラー」だ。

 「試合に出られるか、出られないかということを意識しすぎたら、駄目になると思いましたね。今シーズンはやるべきことをきっちりこなしながら、プレーのクオリティーを上げたい。それが結局、サッカー選手として質を上げることにつながるから」

「スリマニやウジョアのように、身体を張って(空中戦で)勝てるようなタイプではない。だから、MFとDFの間のスペースに入って、厳しい位置でもボールを受ける。そして、パスをたたいて、ゴール前に入り、今日みたいにシュートを打つ。それが自分のスタイルだと思う。『違う色を出せる』、『他の人とは違うものを出せる』ところを見せたいですね」

 レギュラー争いに闘志を燃やしながらも、変に気負うことなく己のプレーを貫く。そんな覚悟でいる岡崎だが、起用の有無は当然、ラニエリ監督の考えにかかっている。

 レスターにとってヤマ場となるのが、24日に行われるアウェイでのマンチェスター・U戦だ。2トップの一角としてエースのバーディーを「当確」とすれば、もう一人はスリマニか、あるいは岡崎か。クロスボールで効率的に攻めたいなら高さのあるスリマニを起用し、守備に重きを置きながら前からプレスをかけていくなら岡崎を使ってくるだろう。その3日後に控えるポルトとのチャンピオンズリーグ・第2節を睨みながら、はたしてラニエリ監督はどんな采配を見せるか。(文・田嶋コウスケ)

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