テクニシャンといえども苦労の連続…中3の夏に「ユース昇格見送り」の通告【鎌田大地 叩き上げの原点】

テクニシャンといえども苦労の連続…中3の夏に「ユース昇格見送り」の通告【鎌田大地 叩き上げの原点】

中学時代に鎌田は母・貴子さん(左)の大阪・岸和田市の実家に住んでいた(提供写真)

【鎌田大地 叩き上げの原点】#6

 2022年カタールW杯行きの命運を握る10月のサウジアラビア(ジッダ)・豪州(埼玉)2連戦でキーマンとして期待される鎌田は名門・ガンバ大阪のジュニアユース出身だ。が、エリート集団の競争は極めて熾烈。同期に井手口陽介(G大阪)、2学年下に堂安律(PSV)と日本代表の有力選手がひしめき、テクニシャンの鎌田といえども苦労の連続。最終的には「ユース昇格見送り」の判断を下された。

  ◇  ◇  ◇

「大地は体幹が細いのにスルスルとゴール前に顔を出して点を取れる攻撃センスの高い選手で、僕の好きなタイプでした。『スルーパスを出す時はスペースにボールを置くように心がけて』などとアドバイスすると、うれしそうに取り組んでいた。そんな姿勢が貴史(宇佐美=G大阪)に似ていて、生粋のサッカー小僧だなと感じましたね」

 中学時代の恩師・梅津博徳コーチ(現横浜U-13コーチ)が述懐するように、中1でJリーグのエリートプログラムに選出されるなど周囲の期待も高まった。ところが、中1の途中に手の骨折で3カ月の離脱。相次ぐ苦境に直面するようになる。

 中2で2度目の手の骨折に見舞われ、身長の急激な伸びでクラムジーにも苦しめられた。

 父・幹雄さんも長男の様子を心配していた。

「1年の時は、梅津さんから『陽介と大地を全国大会に連れていきたい』と言われるくらい目をかけてもらいました。でも当時U-15日本代表だった井手口選手とは、やはり差がありました。チームメートの親御さんからも『大地君はうまいね』と言われる半面、『戦えない』というネガティブな声も聞かれた。それでも私自身は、技術やセンスはあるので、フィジカルさえ整えば活躍できると思っていました」

■高体連で選択肢を広げる

 中2の時はBチームとAチームを行ったり来たり。絶対的存在ではなかった。そんな息子を見て「仮にユースに上がれたとしても、井手口選手くらいスーパーでなければトップに上がれないかもしれない。高体連に行って選択肢を広げた方がいいのではないか」という考えが浮かび始めた。

「中2から中3に上がる春に『ユースならガンバしか上がれないけど、高体連に行けばいろんな道が見える。いろんなプロへの上がり方があるよ』という話を大地にしました。本人は『そういう考えもあるね』と納得した表情を見せていました」

 父の助言を聞いた息子も素直に受け入れた。

「自分が主力でプレーできる環境で一からやり直した方がいい。最初は他のJクラブもいいかなと考えたけど、お父さんの言う高体連がベストだと判断したんです」

 中3の夏、ガンバ側から「ユース昇格見送り」を通告された。

■「点を取るイメージが湧かない。ハードワークも足りない」

「監督だった鴨川幸司さん(現枚方コーチ)から、『大地を見てると<点を取るイメージ>が湧かない。ハードワークも足りないから、昇格は難しい』と言われたんです。でも、心の準備はしていたので、そこまでショックは受けませんでした」と父は本音を吐露する。

 最終決定を受け、鎌田が決めた進路は京都府の東山高。福重良一監督が幹雄さんの大阪体育大時代の1学年後輩という縁があり、前々から誘いを受けていたからだ。

「ガンバの試合で大地の出すスルーパスを見て、いいものを持っているとピンときました。攻守の切り替えやハードワークが課題と聞いていたけど、高校3年間で改善できると感じた。『十分、プロを目指せます』とお父さんに伝えました」と福重監督も語ったが、その言葉は鎌田親子の大きな力になったはずだ。

 進路を定めて迎えた中学生活最後の高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権。腰の骨折に悩まされた時期を乗り越え、悲願の全国の大舞台に立った鎌田は、磐田U-15との1回戦で待望の先制点を奪った。

「我々も長崎・島原市まで行きましたが、『全国に出たい』とずっと言い続けた息子がピッチに立つ姿は感無量でした。ゴールもうれしかったですね。でも松原后選手(シントトロイデン)がFWにいた相手も強く、2―2の同点からPK負けしてしまった。あれが中学最後の試合になりました」

 岸和田の祖父母宅から吹田まで3年間、毎日通い続けた息子を両親は改めてねぎらった。 =つづく

▽鎌田大地(かまだ・だいち) 1996年8月5日生まれ。愛媛県出身。キッズFC−G大阪ジュニアユース−東山高−鳥栖から2017年にフランクフルトに移籍。昨季トップ下で5得点、リーグ3位の12アシスト。19年3月のコロンビア戦で代表デビュー。同10月のモンゴル戦で代表初ゴール。身長184センチ・体重73キロ。

【父・鎌田幹雄さん】1969年4月生まれ。鳥取市出身。鳥取東高、大阪体育大卒。兵庫・尼崎在住のサラリーマン。
【母・貴子さん】1970年11月生まれ。大阪・岸和田市出身。砂川高から専門学校。兵庫・西宮で「ジャザサイズ」のインストラクター業をフランチャイズで運営。

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

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