0-4惨敗にも動じず 久保建英がチリ戦後に垣間見せた自信【コパ・アメリカ 日本代表密着記 #4】

0-4惨敗にも動じず 久保建英がチリ戦後に垣間見せた自信【コパ・アメリカ 日本代表密着記 #4】

チリ戦に完敗しサポーターにあいさつに向かう(C)共同通信社

【コパ・アメリカ 日本代表密着記 #4】6月17日 月曜日

「南米の地で南米の国に勝利がないというデータはあるかもしれないが、日本代表はロシアW杯でコロンビアに勝って新たな歴史を作った。今回のコパ・アメリカでも過去になかった勝利というデータをつかみ取れるように頑張りたい」

 日本代表の森保一監督は南米王者・チリとの初戦(サンパウロ)に並々ならぬ意欲を示していた。が、17日の大一番は序盤こそ善戦したものの、0−4の惨敗。強豪との実力差を突き付けられる結果となった。

 ◇  ◇  ◇

 2015・2016年大会2連覇中のチリへの期待値は現地でも非常に高い。母国からのサポーターも大挙して現地を訪れていた。モルンビー・スタジアムに集まった2万3253人の観衆のうち、8割方がチリの応援。「アレクシス・サンチェス(マンU)とバルガス(ティグレス)のゴールで2−0で勝つよ」「ビダル(バルセロナ)もいるから3−0だ」といった自信満々の声が試合前の会場付近のあちこちから聞こえてきて、日本は間違いなく劣勢だった。

 下馬評を覆すべく、指揮官が打って出た秘策は4バックの採用。東京五輪世代はチーム立ち上げ時から3バックを軸にしてきたが、「今回呼んだメンバーを見て4枚で行こうと決めた」と打ち明けた。3トップのチリに対して数的優位になれる4バックが有効という考えもあったのだろう。

 加えて快足FW前田大然(松本山雅)を慣れない右MFに置くというサプライズも披露。森保監督はリスクを冒して勝ち点を狙いに行った。

 序盤こそ作戦的中かと思われたが、時間の経過とともに押し込まれ、守備陣に綻びが生じ始める。前半終了間際のCKからの1失点が重くのしかかり、後半9分にはバルガスに2点目を献上。これが致命傷になった。前述のファンの予想通り、バルガスとサンチェスの両FWに点を取られて完敗。「5バックにしていればもう少し違った守り方ができたと思う」と守備リーダーの冨安健洋(シントトロイデン)も悔やんだが、森保監督の大胆采配が裏目に出た格好になってしまった。

日本語とスペイン語を巧みに使い分け

 8強進出にいきなり黄信号が灯った日本。そんな中、A代表初先発した久保建英(レアル・マドリード)の思い切った仕掛けは目を引いた。とりわけ後半20分にチリDF2人をドリブルでキリキリ舞いして、放った左足シュートがサイドネットに飛んだ決定機は会場をざわめかせた。

 これには各国報道陣も驚き、取材ゾーンでは久保に殺到。日本記者向けの囲みにもチリ人やスペイン人が強引に割り込んできて、矢継ぎ早に質問を浴びせかけた。18歳のアタッカーは「1問ずつでお願いします」と過熱気味の大人たちをけん制しながら、1つ1つ回答していった。

「チリは強いチームだった。だから自分たちは4−0で負けた」

「試合に負けてしまっては何の価値もない」

「今、コパアメリカを戦っているのだから年齢は言い訳したくない。僕らはA代表としてここに来ている」

 約5分間のやり取りは日西混在。敗戦直後だけに頭が混乱してもおかしくないが、彼は一切動じることなく2つの言語を巧みに使い分け、冷静に答えていく。かつて中田英寿はイタリア語と英語、本田圭佑(メルボルン)は英語、川島永嗣(ストラスブール)も英語とフランス語を操りながら外国メディアと対峙してきたが、久保の場合はまるでスペイン人ネイティブのような余裕。教育も現地で受けた逆輸入選手はメンタリティ自体が違うのかもしれない。敗戦の屈辱感に打ちひしがれるどころか、「自分はまだやれる」という自信すら垣間見せていた。

 強気の姿勢は他の若手にもぜひ見習ってほしい点。1失点目など複数のミスに絡んだ中山雄太(ズウォレ)、3〜4回の決定機を逃した上田綺世(法政大)などは特にそう。ここでへこんでいたところで何も始まらない。「チリは強いから負けるのも仕方ない」と考えるのではなく、気持ちで上回るところからスタートしないと、20日の次戦の相手・ウルグアイでも同じ轍を踏まないとも限らない。

 南米での南米勢撃破という新たな歴史を築こうと思うなら、「モルンビーの惨劇」を糧にするしかない。久保を筆頭に選手全員がここからどう変化するのか。それが残り2試合のカギになる。

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

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