若き日の本田圭佑がダブる 19歳トゥエンテ中村敬斗の胸中に迫る

若き日の本田圭佑がダブる 19歳トゥエンテ中村敬斗の胸中に迫る

中村敬斗(写真)元川悦子

元川悦子【代表欧州組 直撃行脚19-20】

 中村敬斗(トゥエンテ・FW・19歳)

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 今夏は久保建英(マジョルカMF)を筆頭に前途有望な10代選手たちが欧州挑戦に踏み切った。今年のJリーグ・ルヴァン杯ニューヒーロー賞に輝いた19歳の中村敬斗(トゥエンテFW)もその1人だ。同大会で3得点を挙げ、5〜6月の2019年U−20W杯(ポーランド)にも参戦。その実績を引っさげて新天地へ赴き、8月のリーグ開幕・PSV戦と2節のフローニンゲン戦で連続弾。衝撃の新天地デビューを飾ったのだ。それから3か月が経過。中村は9戦に先発して3得点1アシストを記録した。遠いアジアからやってきた新人としては、まずまずの結果を残した中村の現在地を探った。

 個人的には、まったくの想定外だった。オランダのピッチで躍動する姿を思い描きながら、トゥエンテの本拠地であるエンスヘーデのグロールシュ・フェステ・シュタディオンに足を運んだ。

10月25日の第11節エメン戦。中村の名前は、先発リストにはなかった。

9月の第6節フォルトゥナ・シッタード戦で退場処分となり、続くヘラクレス戦を欠場したことはあったが、単純な先発落ちは今回が初めてだ。

「そのヘラクレス戦からフェイエノールト、スパルタ、ヴィレムとチームは4連敗していた。『先発を代えるとすればこのへんかな?』とうすうす感じていました」と本人も悔しさをにじませる。

 ベンチで見守ることになったエメン戦は、序盤こそ敵に主導権を握られて苦しんだが、20分過ぎにセットプレーの流れから先制。勢いに乗って前半だけで3−0とした。

中村の主戦場である4−3−3の左FWに入ったノルウェー人FWゼクニーニが2アシストと活躍し、後半途中から同じ位置に入ったオランダ人のメングMFも猛烈なスピードを披露。終わってみれば4−1で圧勝した。

ライバルの活躍で中村は今後、相当に厳しいポジション争いを強いられることになりそうだ。

「ゼクニーニは去年からいてずっとレギュラーで出ていた選手。僕が来てスタメンを取る形になったんでライバル意識が強かったはず。メングもいつも途中から出て流れを変えている。自分も彼らに負けないように練習から巻き返していくしかない。ガルシア監督からは、シュート力が一番の武器だと思われているんで、それを増やしていくことが大事だと思います」と19歳のアタッカーは自分の進むべき道をしっかりと見据えていた。

■野心家の本田圭佑との共通点

 若い選手に浮き沈みはつきものだ。中村自身も2018年から1年半在籍したガンバでは、トップの主力からU−23の控えまで幅広い立ち位置を経験した。特に宮本恒靖監督体制の昨年夏から今年春にかけては「走れない、守れない、戦えない」と烙印を押され、下積み生活を余儀なくされた。

「あの時間はガンバでは必要だったけど、2年のレンタルで来ているオランダでそんな足踏みをしている暇はない。限られた時間でどれだけ上に行けるか、だから。他のライバルとの違いを示すためにもゴールに絡む動きがもっと必要。それをやらなきゃ生き残れないのも分かってますから」

 強い言葉で向上心を押し出す様子は、かつてオランダで成功を収め、CSKAモスクワ、ACミランへと飛躍した本田圭佑の若き日に重なる。

奇しくもトゥエンテの本拠地は、2009年9月の日本ーオランダ戦で本田が中村俊輔(横浜FC)に「FKを蹴らせてくれ」と直訴した場所でもある。

 当時9歳の中村は「それは分かんないや」と苦笑したが、「僕もこれまでの人生で確立された立場にいたことが一度もない選手。自然とこういう(強気の)性格になりますね」と野心家の本田との共通点を認めていた。

偉大な先輩は、挫折を糧にスターダムにのし上がったが、中村も同じ道のりを辿る可能性は大いにある。抜群のスピードと高度なドリブル技術、パワフルなシュートでゴールを量産できれば、トゥエンテでの定位置奪回も叶うはず。まずは〈直面している壁〉を乗り越えることに集中してほしい。

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

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