ゲンク伊東とブルージュ植田 ベルギーでしのぎ削る代表戦士が目指す「高み」の正体

ゲンク伊東とブルージュ植田 ベルギーでしのぎ削る代表戦士が目指す「高み」の正体

試合後に取材に応じてくれた植田直通(左)と伊東純也(写真)元川悦子

元川悦子【代表欧州組 直撃行脚19-20】#3

伊東純也(ゲンクMF)
植田直通(セルクル・ブルージュDF)

 ◇  ◇  ◇

 欧州王者・リバプールとの欧州CLの激闘から3日が経ち、日本屈指のスピードスター伊東純也(ゲンクMF)は26日に再び本拠地・クリスタルアレナのピッチに立っていた。

 今回の相手は日本代表の同僚・DF植田直通が所属するセルクル・ブルージュ。今月7日にメルカダル前監督が更迭され、シュタルク新監督が就任したばかりだが、ここまでリーグ7連敗中の最下位に沈んでいる。昨季ベルギー王者のゲンクとしては負けられない一戦だった。

「正直、リバプール戦はずっと守備してたんで疲労が凄かった。監督が『今日は半分くらいスタメンを変える』と言ってたんでどうなるかなと思ったけど、自分は今回も先発。『行けるところまで全力でやってやろう』と覚悟して入りました」と快足FWは言う。

 異様な疲れを感じながらも、伊東は序盤から武器の速さとタテへの推進力を前面に押し出した。

 右サイドで上下動を繰り返して攻守両面に絡み、多彩なクロスで得点機を次々と演出する。そのハードワークと献身性がなければ、今季のゲンクは成り立たない。それくらいの絶大な存在感を90分間、示し続けたのだ。

「チームメートも『あいつは誰だ。速いな』と。敵に回すとホントに嫌な選手だと改めて感じました」とベルギー移籍後、伊東と初対戦した植田も神妙な面持ちで話す。

 勢いに乗ったゲンクは8分、セットプレーの流れから先制に成功する。

「今のチームは失点すると難しくなる。後ろは踏ん張ってゼロに抑えないといけないと思っていたのにミスからやられてしまった」と植田はダメージの大きさを吐露した。

 しかし、そこからの修正は見事だった。彼はゲンクの2メートルの大型FWオヌアチュを巧みな駆け引きで封じ、度重なる決定機を体を張って阻止。攻撃面でも正確なロングフィードでカウンター攻撃につなげたのだ。

「直通はウチのデカいやつとずっと競っていたし、いいフィードも彼からしか出てこなかった。負けが続いて先発から外されたりと理不尽な扱いを受けることもあっただろうけど、タフに戦っていると思います」と伊東も植田の確かな成長を実感した様子だった。

 結局、試合はゲンクが1−0で勝利。セルクル・ブルージュは8連敗となってしまったが、植田は「チームは少しずつ良くなっているし、何とか乗り越えていきたい」と気合を入れ直した。

■「もっと上に行きたい」

 彼が闘争心をみなぎらせるのも「早くベルギーから外に出たい」とステップアップを熱望しているから。6月のコパアメリカ(ブラジル)に参戦し、カバーニ(PSG)やスアレス(バルセロナ)ら世界トップFWと真っ向勝負を演じたことで欲が出てきたのだ。

「コパの後、チームに合流して試合に出たらすごいレベル差を感じた。もっと上に行きたいという思いが湧きました」と植田は語気を強める。

 それは伊東にも共通する点だ。彼の場合はすでにCL参戦を果たしているが、リバプール戦でサラーやマネといったアタッカーが、個の力でゴールをこじ開ける凄さを目の当たりにして、自分に足りないものを再認識したようだ。

「サイドでのスピードや突破の部分は通用するところもあったけど、僕はもっとゴールに向かう意識を高めないといけない。今季はここまで15戦に出て得点ゼロ。開幕から10試合ゴールなしというのは今までになかったこと。ちょっと焦りもありますけど、今、できているアシストを続けつつ、ゴールを狙っていけばいつか結果もついてくる。そう言い聞かせてながらやってます」

 その伊東は疲労困憊のあまり、試合終了後、ピッチに座り込んでしばらく動けなかった。

 そこに植田が歩み寄って励まし、お互いの成長を誓い合った。今季10人以上の日本人がプレーするベルギーでは、お互いが切磋琢磨できる好環境が生まれている。それは大きなプラスだろう。そこからいち早く抜け出し、高い領域に到達するのは一体誰なのか。日本代表での立ち位置を含めて、伊東と植田の今後の一挙手一投足が非常に楽しみだ。

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

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