マリティモ前田大然を直撃<前>「目指すのはマークされてもスピードで相手をぶち抜ける選手」

マリティモ前田大然を直撃<前>「目指すのはマークされてもスピードで相手をぶち抜ける選手」

6月に生まれた長女・爽世ちゃんと(C)元川悦子

元川悦子【代表欧州組 直撃行脚19-20】#6

前田大然(ポルトガル1部マリティモFW・22歳)=前編=

 ◇  ◇  ◇

 ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)の故郷として知られるマディラ諸島。首都リスボンから空路2時間のリゾート地で、東京五輪出場を目指す快足FW前田大然(マリティモ)が躍動している。当初3カ月間は、家族も通訳もサポートスタッフも不在の中で孤軍奮闘。新天地で公式戦10試合出場3得点と気を吐いている。同リーグ所属の中島翔哉(ポルトMF)以上の輝きを放っている22歳の現状に迫った。

「日本人がいないリーグに行きたい」と熱望した前田にマリティモからオファーが届いたのは7月半ば。6月に長女・爽世(そよ)ちゃんが誕生したばかりで「正直、迷った」と言うが、J2松本山雅から1年間のレンタル移籍を決断。オファーの1週間後には、単身でマリティモに赴いた。

 最初はホテルから練習場に通った。ポルトガル語を話せず、サントス監督の指示も理解できない。仲良くなったブラジル人FWに手助けしてもらいつつ、必死に食らいつくのが精一杯だった。

「『前後左右』とか『何タッチ』とかサッカーで使う言葉って決まってくるじゃないですか。それを家に帰って調べて、次の日はほんの少し聞き取れるようになる。その繰り返しでした」

 練習場も粘土質のピッチで雑草が生い茂っている状況。クラブハウスも設備が整っていないかった。

「体のケアは、家でストレッチポールをするくらい。筋トレルームも普段カギがかかっているんで、空いている時にこそっとやるくらい(苦笑)。10月中旬に家族が来るまでは食事も外食でしたし、いろんなことを自分でコントロールしなきゃいけない状態でしたね」と苦笑する。

「足りないのは仕掛けるプレー」

 日本とは、何もかも事情が違う異国で地位を確立するのは難しい。移籍直後は、主力組に入れてもらえずに苦しんだ。

「監督から戦力として見られていないように感じました。でも開幕1週間前の練習試合でいいパフォーマンスを出せて、多少は認めてもらえるようになった。8月11日のリーグ初戦スポルティング戦も後半からチャンスをもらえました。ポルトガル3強の一角が相手だったけど、リーグのことが全然分かんない状態だったんで逆に良かった。『いけるんちゃうか?』と感じましたね」

 3戦目となった8月25日のトンデラ戦。前田は初スタメンを勝ち取り、松本山雅時代にはほとんどなかったヘディングで豪快にゴール。指揮官から信頼を勝ち取ることに成功した。その後9月23日のブラガ戦、10月21日のカップ戦でもゴール。序盤戦は、上々の出来と言っていいだろう。

「ブラガ戦はサイドバックが裏に出したボールに反応し、スピードに乗った状態で相手の前に入って倒されてPKをもらいました。『自分で蹴ります』と主張したら、『ダメ』みたいに言われたけど、『俺が蹴る』と。海外ではそういうのが大事かなと思いました」と大阪出身らしい押しの強さで貴重な得点をもぎ取った。海外で成功した日本人アタッカーは本田圭佑(無所属)、岡崎慎司(スペイン2部ウエスカFW)、香川真司(スペイン2部サラゴサMF)と関西人が多いが、前田もその1人に加わりそうな気配も漂う。

「ただ、自分に足りないのは仕掛けるプレー。最初は2トップの一角でプレーしていたけど、5試合目くらいから4−1−4−1の右MFがメインになりました。そこでは最低(相手を一人)1枚ははがしてグイグイ行くことが求められる。日本人は海外の相手とやるとスピードで負けることが多いけど、僕はぶち抜ける選手を目指しています。まだまだですが、マークされてもスピードでぶち抜くのが理想ですね」と野心をのぞかせる。

 松本山雅時代は〈ハードワーカー〉のイメージが強かったが、「守備ができるのは確かに武器だけど、自分に足りない攻撃面をプラスするためにここに来た」と言い切る。その言葉通り、爆発的な打開力を身に着け、目標である今季10得点をマークすることが、前田大然の名を広く知らしめる方法だ。強い自覚を持って彼は今、遠い異国で必死に戦っている。=つづく

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

関連記事(外部サイト)