五輪代表“当確”を勝ち取るために 前田大然がポルトガルで語り切った野心

五輪代表“当確”を勝ち取るために 前田大然がポルトガルで語り切った野心

6月に生まれた長女・爽世ちゃんと(C)元川悦子

【代表欧州組 直撃行脚19-20】#7

前田大然(22歳・ポルトガル1部マリティモFW)=後編=

 ◇  ◇  ◇

「五輪に出るんじゃなくて活躍することが大事。それが移籍に踏み切った大きな要因のひとつです。日本でプレーしていたら、五輪に出れたとしてもいざ戦った時に勝てないな、とコパアメリカで感じたんで」

 6月に日本代表の一員としてブラジルに赴いた前田大然。その経験がサッカー人生を賭けた決断に繋がった。ポルトガルでの経験を8カ月後の東京五輪の大舞台につなげようと彼は今、躍起になっている。

 日本がフランスW杯初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」(1997年11月16日)の約1カ月前に大阪で生まれた前田大然。50メートル5.8秒の快足を武器に2016年、山梨学院高からJ2松本山雅入りした。しかしプロ1年目は9試合出場のみ。翌17年にはJ2水戸へのレンタルを強いられる。この時点では、日本代表も東京五輪代表とも無縁の存在だった。

「スピードで抜ける場面も全然なかったし、ボールを触るチャンスもなかった。代表なんてまったく考えていませんでした。でも水戸で2ケタ得点して自信ついた。18年に松本に復帰してから森保(一)日本代表監督に呼んでもらえるようになりました」と述懐する。

 昨年8月のアジア大会(インドネシア)準優勝メンバーになってからはコンスタントに五輪代表候補入りし、今年は日本代表も経験。尊敬する岡崎慎司(ウエスカFW)や川島永嗣(ストラスブールGK)らと共演。世界基準に目覚めると同時に「東京五輪で活躍したい」という思いを強め、ポルトガルに活躍の場を移している。

 とはいえ五輪代表は18人の狭き門。本田圭佑(フィテッセ入りが決定)や長友佑都(ガラタサライDF)らが名乗りを挙げているオーバーエージ枠3人を使うとなると、U−22世代には15枠しかない。堂安律(PSV・MF)や久保建英(マジョルカMF)、冨安健洋(ボローニャDF)らすでにA代表に定着している者もおり、ここまで五輪代表のコアメンバーに入っている前田も、当確とは言い切れないところがある。

「僕は今、マリティモで主に右サイドをやっているんで、そのポジションで考えるとライバルが多すぎますよね(苦笑)。ただ、堂安君や建英、安部(裕葵=バルセロナMF)ちゃんもそうだけど〈うまい系〉が多くて、自分のような〈スピード系〉は少ない。サッカーはどれだけうまくても相手がいるスポーツ。1人のスピードで打開できる存在は大事だと思います。その武器を生かすも殺すも自分次第。武器を確実に研ぎ澄ませられればチャンスかなと。それに僕は前(FW)もできる。複数ポジションができる優位性もアピールしたいです」と意気込む。

■「有名人になるチャンスやし」

 海外組は代表招集機会が限られるという難しさがあるが、彼の所属するマリティモが「どんどん(代表には)行ってこい」というスタンスなのも前田には追い風だ。

「10月のUー22代表のブラジル遠征は、腰を痛めていたので回避しましたけど、クラブは東京五輪出場に前向きな姿勢なんで、僕としては有難いですね。本番まであと8カ月もあるのかと思うと長いけど、やっぱり五輪にはぜひ出たい。これまで五輪メンバーから外れて成功している選手もいますけど、出れるなら出た方がいいし、自分のサッカー人生も変わりますよね。有名人になるチャンスやし、子供にも『パパ、五輪出たよ』って言えたらいいと思います」と野心を前面に押し出す。

 夢の実現のためにも、ポルトガルでの今後の戦いを大切にしなければならない。マリティモは本来なら上位にいるクラブだが、今季は2ケタ順位をウロウロしている。

 直近11月3日のジル・ヴィセンテ戦も0ー2で敗戦。前田にはチームを勝たせる役割が託される。

「このチームは、2点取っても3点取られるチーム。どうしても失点が多いんで、そこは修正すべき点です。自分自身もより冷静にゴール前で勝負できる選手にならないといけない。この先、首位のベンフィカなど強い相手との試合もあるので楽しみ。そこで名前を売れるように頑張ります」

 5日に発表された五輪代表(17日のUー22コロンビア代表戦=広島)メンバーにも入った。

 タフな環境でスピードと決定力に磨きをかけ、来夏には東京で異彩を放ってほしい。=終わり

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

関連記事(外部サイト)