試合は苦戦も…FW南野拓実がキルギス戦で残したインパクトは計り知れない

試合は苦戦も…FW南野拓実がキルギス戦で残したインパクトは計り知れない

W杯予選4試合連続ゴールとなる、先制のPKを決めた南野(C)共同通信社

「日本戦はキルギスにとってはワールドカップくらいの位置づけ。物凄いモチベーションで向かってくる」。原口元気(ハノーファー)の言葉が示す通り、14日の2022年カタールW杯アジア2次予選・キルギス戦(ビシュケク)での地元サポーターの熱気は凄まじいものがあった。異様な雰囲気と劣悪ピッチに悩まされ、森保日本は大苦戦を強いられたが、最終的には2-0で勝利。2次予選4連勝で2019年を終えることになった。

 試合当日、キルギス国立競技場周辺は朝から物々しい空気に包まれた。キルギス人は日頃温厚だが、2005年のチューリップ革命と2010年のキルギス騒乱に象徴されるように、感情がほとばしると想定外の行動を取ることがあるという。

 同国政府とサッカー協会が万が一の事態を想定したのか、過剰なほど警備体制を強化し、現場には数えきれないくらいの警察官を動員した。

 とはいえ、開始2時間前まではノーチェックで会場に入れたし、特に呼び止められることもなかった。厳格になり過ぎず、どこか緩さも残しているのが、キルギス人らしい部分なのなのかもしれない。

 試合前の会場ではさまざまな催しがあり、遊牧民が暮らすユルタ(テント)も展示されていた。美しい民族衣装を来た美女たちが案内してくれ、ボルソック(揚げパン)やショロ(飲み物)などを振舞ってくれた。こういう趣向は外国人にとっては興味深くも有難い。来年の東京五輪でも取り入れたら世界各国の観客も喜ぶのではないだろうか。

 そうこうしているうちにメンバー表が配られ、日本は中島翔哉(ポルト)ではなく、原口が先発入りした。「新ユニフォームお披露目試合に(使用スパイクが)アディダスからミズノに移ったばかりの中島は使えなかったのではないか?」などという憶測も飛び交ったが、森保一監督は相手キルギスが日本の左サイドを狙ってくるのを想定。守備力の高い原口を起用したのだった。

 案の定、キルギスの主将・キチンの右への展開から長友佑都(ガラタサライ)が1対1にさらされてピンチを迎えることが何度もあり、日本は嫌なムードになりかけた。

 前半は明らかに相手ペース。守護神・権田修一(ポルティモネンセ)の好セーブがなければ失点していてもおかしくなかった。

「ようこそ、ミナミノ」の横断幕が

 悪い流れを止めたのが、新エースFWの南野拓実(ザルツブルク)である。前半40分にペナルティーエリア内で相手GKのファウルを誘い、PKをゲット。これを確実に決めて相手を突き放したのだ。

「純也(伊東=ゲンク)君からボールがこぼれてきたところに反応したけど、ああいうのは狙っていた部分。ゴール前でのしたたかさというのは、日本が世界と対戦した時にいつも感じるところ。それを出せてよかった」

 W杯開幕4戦連続ゴールで1993年にカズ(三浦知良=横浜FC)がマークした記録を超えた背番号9は、自らのプレーを冷静に振り返った。森保体制発足後11ゴール、今年1年間で7ゴールというのは驚異的。このハイペースが続けば、岡崎慎司(ウエスカ)の代表50得点も、5〜6年で達成してしまう計算になる。

 今季欧州CLでも欧州王者・リバプールから華麗なボレー弾を決めているが、その卓越した決定力は本物というしかない。

 試合前まで彼のことを知らなかったキルギスサポーターも「ミナミノ」の名を脳裏に色濃く焼き付けたはずだ。実際、試合後には「キルギスへようこそ、ミナミノ」と書かれた横断幕を持った現地男性も出現したほどだ。

 本田圭佑(フィテッセ)や香川真司(サラゴサ)の知名度に到達するにはまだまだ活躍が必要だし、欧州強豪クラブへのステップアップも求められる。ただ、それに向けても着実に前進しているのは確かだろう。

 中島・堂安律(PSV)とともに「三銃士」と称される2列目アタッカー陣の中で一歩抜け出した感のある南野。このまま一気に突き抜けて、真のスターにのし上がってほしい。大苦戦のキルギス戦で彼は、1つの光明となった。

(元川悦子/サッカージャーナリスト)

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