森保ジャパンのU-23アジア敗退は「日常的Jリーグサッカー」の敗退だ

森保ジャパンのU-23アジア敗退は「日常的Jリーグサッカー」の敗退だ

日本の初戦の相手サウジアラビアはベスト4に勝ち進んだ(C)Norio ROKUKAWA/Office La Strada

【六川亨のフットボール縦横無尽】

 1万4958人と214人――。

 これは1月18日にタイのバンコクで行われたU-23(23歳以下)アジア選手権の準々決勝2試合の入場者数である。

 前者がホスト国のタイが、サウジアラビアと戦った試合である(結果は1-0でサウジアアラビアが準決勝に進出)。驚くべき数字となった後者は、オーストラリアが延長戦の末にシリアをPK戦で破った試合である。

 筆者は当日、バンコク郊外のタマサート・スタジアムに出向き、午後5時15分キックオフのタイ対サウジアラビア戦を取材した。

 終わってからバンコク市内中心部に近いメインスタジアムであるラジャマンガラ・スタジアムに隣接した道路の歩道脇にズラリ立ち並んだ屋台に入り、西野タイランド惜敗の残念会を開いた。

 地元ビールのレオをあおりながらチャーハンや空心菜、エビやイカの炒め物に舌鼓を打った。

 しかし、すぐ隣のスタジアムで行われているオーストラリア対シリア戦からは一切、歓声が聞こえてこない。それもそのはず。6万5000人収容の巨大スタジアムに、214人しか入っていないのだから。

 恐らくシリアのファンは皆無に近かっただろうし、オーストラリアのファンも11日のタイとの試合を取材した際、数人の家族連れしかいなかったことから、準々決勝シリア戦も推して知るべし。

 ホスト国タイと親日家の多いタイで日本が敗退してしまい、大会の熱気は一気に下がってしまった。多くのサポーターが駆け付けた韓国が、どこまで勝ち上がるか? これが大会の熱気を左右するだろう。

 今夏の東京五輪の最終予選を兼ねた今大会もベスト4が出揃って韓国、サウジアラビア、ウズベキスタン、オーストラリアがリーチをかけた。

 順当な顔ぶれとも言えるが、ここに日本の名前がないのは寂しい限りでもある。日本がグループリーグを1位で突破していれば、準々決勝で森保ジャパンはタイと対戦。これをクリアすれば、ウズベキスタンと準決勝を戦う公算が強かった。これ以上にない盛り上がりをみせるはずだった2試合は、夢に終わった。

 森保ジャパンは、中国で開催された2年前の大会で田川亨介や立田悠悟ら21歳以下の選手で臨んでベスト8に進出。準々決勝で優勝したウズベキスタンに0-4で完敗したが、そのリベンジを果たすこともなく、終戦を迎えてしまった。

 継続的な強化をしたにもかかわらず、最低限のノルマさえも達成できなかった原因を日本サッカー協会の技術委員会には、しっかりと検証してもらいたいものである。さて――。

■日本はポゼッションではアジアNo.1だが…

 ベスト4に進出した国でサウジアラビアとオーストラリアは、良く言えば「伝統的」、言葉を変えれば「ワンパターン」のサッカーだった。

 サウジは、持ち前の堅守速攻型でチームとして体力の消耗をセーブできたのが、連戦を勝ち抜いた勝因でもある。ロングパス、あるいはクリア1本で1トップのストライカーが決定的な場面を作るのは、いかにもサウジアラビアらしい。さらにボランチやサイドMFもスペースがあれば、ドリブル突破を仕掛けるなど「個」で勝負できるのも伝統の強み。今大会はタイ戦でも議論を呼ぶPKから決勝点を奪うなど、VARの恩恵も受けたと言っていいだろう。

 オーストラリアは56歳のアーノルド監督が指揮を執ったが、プレースタイルは前任のポステゴグルー監督(現横浜F・マリノス監督)と同様、ポゼッション重視のサッカーとなっている。

 しかしA代表が一時代を築いた2000年代と比べるとタレントが小粒になり、日本の天敵であったMFケーヒルのような<いるだけで脅威>となる選手はいない。

 正直な感想としては「よく勝ち上がったな」といったところ。グループリーグの戦いを見る限り、シリアの方がクオリティーの高いサッカーをしていた。

 ちなみにアーノルド監督は90年代に広島でプレー。その後は仙台の監督を務めた。かつてのチームメイトと対戦する可能性を森保監督に聞いてみると「お互いに準決勝で対戦しようと話しました」だった。

 残念ながらアーノルド監督の希望は、日本の早期敗退で実現することはなかった。

 ベスト4に進出した残り2カ国でウズベキスタンは、現地バンコクで取材する機会がなかったので論評はパスしたい。

 そして優勝候補の韓国である。完成度の高さは大会ナンバーワンと言える。巧みなボールポゼッションで試合の主導権を握りながらフィジカルコンタクト、スタミナ、スピードとあらゆる面で対戦相手を凌駕しながら勝ち上がってきた。

 もっとも、日本と対戦することになっていたら、韓国はボールポゼッションを放棄したことだろう。彼らは日本に勝つためにボールポゼッションで対抗しようとはしない。

 昨年12月の東アジアEー1選手権決勝、12年ロンドン五輪3位決定戦でやったように韓国はロングパスやドリブルによるカウンター攻撃で攻勢をかけ、最後は空中戦に活路を見出そうとする。

 対戦相手に応じて、そうした使い分けをできるのが韓国のアドバンテージであり、日本サイドからしてみたら、癪に障るところでもある。

 翻って日本はどうか?

 ボールポゼッションでは、アジアでナンバーワンだろう。練習のメディア公開が冒頭15分に限られることがほとんどだが、日本の選手が1タッチ、2タッチに限定した5対5や8対2のボール回しを見ているとため息が出るほど巧い。時には、20回くらいボールを奪われずに続いていく。しかしながら、問題なのは今大会、それが横パスやバックパスでのポゼッションが多かったということなのである。

 確かにボールを奪われるリスクは減るが、それで効果的な攻撃ができるのか? 突き詰めていけば、それでゴールを奪えるのか? というサッカーの本質論=究極の問題にたどり着いてしまう。

 かつて代表練習を全公開していたオシム元監督や部分的に公開していたハリルホジッチ元監督は、広いエリアでの1対1の勝負からのシュート、2対2や3対3などのドリブル突破をベースにした練習を行っていた。

 サッカーの原点は「1対1の勝負」にある。

 日本代表のパス回しの練習もいいが、1対1の個人技の練習をもっと多く採用した方がいいのではないか? 今大会もJリーグで得意のドリブル突破を披露する選手が、その真価をタイではほとんど発揮できなかった。その原因を解明することも必要だろう。

 攻めるも守るも、とにかく1対1で負けない。そのことが一番、分かりやすいのがドリブル突破である。

 サッカーの原点とも言うべき「1対1の重要性」をタイで突きつけられてしまった。このことを知らずに育ったJリーグのエリート選手が、失意のまま早すぎる敗退を経験した。今回の森保ジャパンの敗退は、Jリーグで見られる<日常的なサッカー>が敗退したと感じさせられた。そんなことを思いながら、バンコクの夜は更けていった。

(六川亨/サッカージャーナリスト)

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