久保建英が挑む高い壁 なぜスペインで日本選手は輝けないのか

久保建英が挑む高い壁 なぜスペインで日本選手は輝けないのか

東京オリンピックでも日本代表の中心として活躍した久保建英(左)。所属するスペイン1部・マジョルカでさらなる飛躍が期待される=カシマスタジアムで2021年7月31日、宮武祐希撮影

 日本選手がサッカーの本場・欧州で活躍する姿は今や珍しくはない。中田英寿が2000〜01年シーズンにローマでイタリア1部リーグを制して以降、ドイツ、イングランド、フランスの強豪クラブで多くの選手が主力となった。だが、苦戦が続くリーグもある。

 スペインの「ラ・リーガ」だ。何人もの日本人がはね返されてきた地では現在、久保建英(20)=マジョルカ=らが挑戦を続ける。「日本の至宝」が鬼門で輝く鍵は何か。スペインでプレーした元日本代表FWの言葉からヒントを探った。

あの中村俊輔も、苦戦続きなワケ

 スペインで歴史を切り開いた日本人は1998年のフランス・ワールドカップ(W杯)日本代表の城彰二だ。00年1月、バリャドリードで1部での日本人初出場を果たし、翌月に初ゴールを挙げた。だが、出場15試合で得点は2。挑戦はわずか半年で終わった。

 その後も西沢明訓や大久保嘉人、清武弘嗣らがスペインへ渡ったが、継続して結果を出せなかった。スコットランド・セルティックで国内リーグ3連覇を果たし、09年にエスパニョールへ移籍した中村俊輔も、故障もあって約7カ月で退団。日本を代表する攻撃的な選手たちに立ちはだかる壁は高く、「成功例」はエイバルなどで6季プレーし、リーグ通算166試合で16得点を挙げた乾貴士くらいだろう。

 こうした中、スペインで3季目を迎えたのが久保建だ。10歳から3年半、強豪バルセロナの育成組織で過ごし、18歳で初ゴールをマークするなど早くから存在感を発揮している。現在は膝の故障で戦線離脱しているが、復帰後のプレーからは目が離せそうにない。

元日本代表FWが痛感した言葉の壁

 なぜ、スペインで日本選手は輝けないのか。元日本代表FWのハーフナー・マイク(34)=東海社会人リーグ2部・FCボンボネーラ=も壁に当たった一人だ。オランダ1部では通算51ゴールをマークした長身ストライカーが、スペインでのプレーをこう振り返る。

 「対戦したことないレベルでした。普通なら勝てるシンプルなロングボールの競り合いでも、3回連続でやられて、『あーどうしよう』と」

 14年8月。42年ぶりに1部に昇格したコルドバに加入したハーフナーは開幕戦の先発に名を連ねた。デビュー戦の相手は名門レアル・マドリードで、スペイン代表DFセルヒオラモスと相対した。「お互い人間。通用するところも絶対ある」と思っていたが、「実力的に完璧に違いました」。世界のスターが集う憧れの地は、予想以上にハイレベルだった。

 「日本人はヨーロッパでも技術は1個上だと思います。でも、スペインはさらに上。イニエスタ選手(神戸)を見たらわかりますよね? 体は大きくなくても、相手に触れられる前にテクニックでカバーする。無名でも『こんなにうまいのか』という選手は多くいました」

 これこそが、ファンや選手を引きつける理由である。「ポゼッションサッカーが魅力です。ボールを回し、徹底的に相手を崩して何もできなくする。見ている方も気持ちいい」。そんなサッカーに魅せられ、ハーフナーは27歳で夢だったスペイン挑戦を決断。オランダ・フィテッセで2年連続2桁得点を挙げ、自信を深めていた時だった。

 ところが、半年間で挑戦は終わりを告げた。英語とオランダ語を話せるため、通訳なしで乗り込んだが「みんな英語をしゃべらないんです。自分の国の言葉にプライドを持っているというか……」。コミュニケーションだけでなく、戦術面でもフィットしなかった。チームは自陣深くでブロックを敷き、カウンターを狙うスタイル。「『1人で勝負してシュートまでいけ』という感じで、孤立することも多かったですね」。持ち味のパワーや高さを生かし切れぬまま、出場5試合で退団した。

 ハーフナーのケースは、多くの日本選手が力を発揮できなかった点と重なる。ほとんどの日本選手は下位クラブに所属してきた。守備に重点が置かれ、カウンターが戦術の軸となる。1人で局面を打開する能力が求められ、ハーフナーは「仕掛けてシュートまでいくことを意識していれば、変わったかもしれません」と語る。

 加えてポイントに挙げたのが「サボる」能力だ。「カウンターを狙う上でずっと守備をしていたら疲れます。チャンスでへばって仕掛けられない。日本では子供の時から勤勉さをたたき込まれるが、サボりのうまさは守備のうまさにもつながると思います」。日本選手にとって、攻守で活躍を難しくさせる土壌があった。

 「久保選手は若いし、技術も高いので期待できる。三笘薫選手(ベルギー・サンジロワーズ)も面白いかな」と語ったハーフナー。「活躍できなかったので語る資格はない」と言いつつ、後輩たちに思いを託した。「スペインの観客は魅了されたいという思いが強い。相手を抜き去って、『オーレ!』みたいな。最後は決めて、観客のボルテージを上げる選手が活躍する。そういう部分を磨いて頑張ってほしい」【長宗拓弥、細谷拓海】

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 世界の舞台で、夢の扉を開く日本のアスリート。ワールドスポーツの今を、独自の視点で掘り下げます。=随時掲載

ハーフナー・マイク

 広島市出身。横浜マのユースから2006年にトップチームに昇格。甲府在籍時の11年にJリーグのベストイレブンに選出。12年にオランダ1部のフィテッセに移籍し、その後はスペインやフィンランド、タイでもプレーした。今季から東海社会人2部のボンボネーラ(岐阜)に所属。日本代表通算18試合4得点。父ディドさんもGKとして名古屋などでプレーした。弟ニッキ(26)はスイス2部のトゥーンに所属するDF。

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