目指すは2020年東京でのメダル。森保一が五輪代表監督に適任である理由

目指すは2020年東京でのメダル。森保一が五輪代表監督に適任である理由

東京五輪でメダルを狙う五輪代表を率いることになった森保一監督について語った宮澤ミシェル氏

サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第22回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど、日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、3年後の東京五輪を目指す日本代表の指揮官に就任した森保一監督について。若い世代の育成とJリーグでの実績など、その手腕を分析する。

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3年後の東京オリンピックを戦う五輪代表監督に就任した森保っていう人間は、現役時代から全く変わらない男。いわば「森保一」という独自のジャンルなんだ。

現役時代のプレースタイルは、相手のボールホルダーを潰して、広範囲に動いて、他の選手の分まで走る。試合終盤にみんなもう体が動かないとなっても最後まで集中力が切れない。一家に一台じゃないけど、「1チームにひとり、森保がいてほしい」っていうくらいの選手だった。

そういう選手が監督になって、頑張らない選手は使わないというポリシーは曲げない。だけど、強くてファイトする選手ばかりでは試合に勝てないことも知っていて、うまくて試合を決められる選手にやる気を持たせる方法も知っている。人心掌握術に長(た)けているよね。

その森保が五輪代表監督というのは、これ以上ないほどの適任だと思う。Jリーグで優勝を経験している、それも3度も。ACLやクラブワールドカップで采配したこともあって国際経験もある。勝つチームがどういうものかをわかっているし、作ってきた実績があるのが何よりの強みだ。

勝つチームには個性があるし、団結力もある。どちらか一方では足りない。森保はそれをどういうバランスにしたらベストかというノウハウを持っているんだけど、研究熱心だし謙虚なんだよ。広島の監督を退任後は自費でドイツに行っていたらしいけど、そこがスゴい。成功体験があると、それに縛られてしまう指導者もいるからね。

常に新しいアイデアやヒントを求める柔軟性の高いスタンスだから、今の若い選手たちの考えを聞いて、汲み上げる部分は汲み取り、理解させる部分は理解させるということがきちんとできる。

若い選手を指導したり育成したりするのは本当に難しいもの。私自身もサッカースクールで指導をすることがあるけれど、欧州トップの国の指導法は常に進化しているし、国によって全く違う。どれが正しいかなんて誰にもわからないからこそ、自分の足で現地に行って、何を感じるかが大切。

私も以前、育成年代の指導法を学びたくてスペインやイングランドに足を運んだけれど、強豪国と言われる国でも練習が全然違っていて驚かされた。

当時のイングランドでの育成年代のトレーニングは、パス回しをとってもキチッとやらせていて、遊びがないんだ。まるでプレミアリーグのサッカーの子どもバージョンだった。スペインは同じようにパス回しの練習でも遊びがあったんだよね。ドリブルを入れたりして選手は楽しみながらやっているけど、練習の途中でフィジカルトレーニングを組み入れたりして、追い込む部分は追い込んでいた。

同じメニューでも少しのアイデアやエッセンスで全然違うものになる。そういうものは、実際にトレーニングしている現場に行かないと気づかないし、そこで刺激を受けることが大事だと思う。

森保は若い選手の良いところを引き出しながら、厳しく言える強さもある。例えば、浅野拓磨は森保の下で育って、飛躍的に伸びた選手だ。監督というのは、プロ中のプロという選手を集めて導くのがうまいタイプと、育成年代を伸ばしていくのがうまいタイプがいるけど、森保は後者だろう。だから、五輪代表の選手たちの能力も上手に伸ばしていくと期待している。

もちろん、自国開催となれば「勝負に徹してメダルを」という声が大きくなることは予想できる。結果を求める時にオーバーエイジ枠を使うのか、使うなら予選がない中でどの時期から使うのか。決断が迫られるだろうね。

ブラジルは自国開催のリオ五輪でオーバーエイジ枠にネイマールを使って、悲願の金メダルを獲得した。大きなプレッシャーがかかるオーバーエイジ枠を務められる選手として、誰を起用するのかも興味深い点だ。

1964年の東京五輪は10月に開催されたけれど、2020年の開会式は7月24日。真夏に行なわれるから、暑さ対策という課題もある。Jリーグでも夏場はキックオフの時間に頭を悩ませているくらいだから、どうするのか。

これまでの五輪監督よりもはるかに重くて難しいミッションを引き受けた森保だけど、日本サッカーが成長してきた中でメキシコ五輪の銅メダルを上回る、歴史を塗り替える結果に導いてくれることに期待している。

(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)

■宮澤ミシェル







1963年 7月14日生まれ 千葉県出身 身長177cm フランス人の父を持つハーフ。86年にフジタ工業サッカー部に加入し、1992年に移籍したジェフ市原で4年間プレー。93年に日本国籍を取得し、翌年には日本代表に選出。現役引退後は、サッカー解説を始め、情報番組やラジオ番組などで幅広く活躍。出演番組はWOWOW『リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』NHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』など。

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