2年で終わったJリーグの2ステージは一体何だったのか?

2年で終わったJリーグの2ステージは一体何だったのか?

2013年のナビスコカップ決勝では、サポーターが2ステージ制導入を決めた大東前チェアマンに抗議する横断幕を掲げた。2013年11月2日撮影(写真:アフロスポーツ)

 Jリーグは12日に都内で開催した理事会で、2017シーズン以降のJ1の大会方式を「1ステージ制」に戻すことを正式に決めた。

 すでにJクラブの代表取締役らで構成される実行委員会で合意に達していた事項を全会一致で承認したもので、ファンやサポーターの猛反対を押し切る形で2015シーズンから導入された「2ステージ制&チャンピオンシップ方式」は、わずか2年で幕を閉じることになった。

 理事会後に記者会見に臨んだJリーグの村井満チェアマンは、2014シーズンまで10年間実施された1ステージ制へ戻す最大の理由として「日程的な限界」をあげた。

「ACL決勝が11月の週末にホーム&アウェーの2日程で入り、国際Aマッチデーもある関係で、一番大事なタイミングで3週にわたってリーグ戦ができない。ACLに関しては2ステージ制の決定後に決まったものだが、これによって日程的に大きな限界を感じました」

 今シーズンはセカンドステージを11月3日に終える日程を組み、ACL決勝及び国際Aマッチデーによる中断明けにチャンピオンシップを実施。リーグ戦の“飛び石”状態を解消させた一方で、チャンピオンシップに出場できず、天皇杯でも早期敗退したチームは来シーズンの開幕まで約4ヶ月ものオフに入る。

 村井チェアマンは日本プロサッカー選手会会長(JPFA)の全面協力を得て、J1の全18クラブの所属選手からも意見を聴取。全クラブがそろってシーズンを終えることが重要という声とともに、約8割から1ステージ制への回帰を要望された。
 
 異論や反論があることを承知のうえで2ステージ制が導入された背景には、関心度の低下、地上波によるテレビ中継の激減、スポンサー料収入や放映権料の頭打ち、入場者数の微減などといった、Jリーグを取り巻く環境の悪化があった。
 
 世界的に見てもリーグ戦の正しいあり方は1ステージ制だと認識しながら、2ステージ制とすることで優勝争いのヤマ場を増やし、メディアへの露出をアップさせることでライト層のファンを新規開拓し、スポンサーメリットを創出する――と苦渋の決断が下されている。
 
 このうち「スポンサー料収入や放映権料の頭打ち」は、博報堂に代わって電通がマーケティングパートナーとなった2014シーズンから劇的に改善されている。約10億円が予想されていた2014年の減収が回避されたばかりか、リーグタイトルスポンサーとして明治安田生命と新たに契約を結んだ。
 
 極め付きは今年7月に締結された、イギリスの動画配信大手パフォーム・グループが提供するライブストリーミングサービス『DAZN(ダ・ゾーン)』と来シーズンから10年、総額約2100億円もの巨額な放映権料契約。これによって2ステージ制を継続する大義名分がなくなったと、村井チェアマンも9月の理事会後に暗に認めていた。
「大会日程や大会方式に関して、制約なしにあるべき姿で議論できるようになりました」

 ならば、他の課題は2ステージ制のもとで改善されたのか。例えば入場者数だ。

 各チームとも31試合を終えた総入場者数は490万4901人で、2015シーズン同時期の485万2019人、2014シーズンの470万1266人から着実に改善されている。
 
 しかし、ミクロな視点で見ると、今シーズンは事情が大きく異なる。市立吹田サッカースタジアムを完成させたガンバ大阪は、ファンやサポーターに高い関心を寄せられたこともあって、昨シーズン比で実に13万人以上もの観客動員増を達成。J1全体の数字をも引っ張っている。

 逆に考えれば、他のクラブは軒並み苦戦を強いられている。2シーズン連続でJ1を戦っている15クラブのうち、1試合平均の入場者数が減少しているチームは「9」を数える。群を抜く観客動員数を誇ってきた浦和レッズでさえも、2784人減とまさかの苦戦を強いられている。

 1日にはガンバを埼玉スタジアムに迎えたが、入場者数は4万3415人にとどまった。昨シーズンは5万3148人、2014シーズンには5万6758人を集客した黄金カードで、今シーズンもセカンドステージの首位攻防戦だったことを考えれば、寂しい数字だったと言わざるをえない。

 この一戦はTBS系列の地上波で生中継されたが、視聴率は1%台だった。両チームが対峙し、NHK総合で生中継された昨シーズンのチャンピオンシップ準決勝の5.1%から、数字を大きく後退させてもいる。
 
 セカンドステージにおけるレッズの主催試合は、横浜F・マリノスとの最終節のみ。しかし、前売りチケットの売れ行きは芳しくない。現時点の総観客動員数は57万1057人。昨シーズンの65万8668人に遠く及ばないどころか、無観客試合がひとつあった関係で60万3770人だった2014シーズンを超えるかどうかも微妙な状況だ。
 
 マリノス戦の前売りチケットが伸び悩んでいる背景には、すでにチャンピオンシップ進出を決めている関係で、実質的な“消化試合”と化している事情もある。2ステージ制の思わぬ弊害とも言っていい。レッズ関係者も困惑した表情を浮かべる。

「昨シーズンの数字は2ステージ制になったこともあり、初めてスタジアムに足を運んだ、いわゆるライト層と呼ばれる新しいファンの存在が大きかった。今シーズンの数字は彼らがリピーターにならなかったことを物語っているし、決してウチだけの問題ではないと考えている」

 昨シーズンは賛否を含めてメディアで大きく取り上げられたこともあり、2ステージ制への注目度が図らずもアップした。1ステージ制では“中だるみ”が避けられなかった折り返し点でも、ファーストステージの優勝争いがかかったこともあり、新聞への露出が前年比1.9倍、テレビが3.4倍、公式ツイートのインプレッション数は10倍になった。

 しかし、目新しさが薄れた2シーズン目で問われてくるのは、ピッチ上で演じられるサッカーが魅力的か否かという本質的な部分であり、スタジアムのエンタテインメント性を含めたハード面の充実となる。これらがまだまだ足りないからこそ、レッズを含めた大半のJ1クラブが苦戦を強いられているわけだ。

「2年で2ステージ制を撤回することには、私のなかでもすごく葛藤があった。しかし、日本のサッカーがよりよくなるためには、いまが意思決定するタイミングだった」

 会見で村井チェアマンは苦渋の決断ながらも、待ったなしの状況であると強調した。1ステージ制という“あるべき姿”へ戻る来シーズン以降へ。パフォーム・グループからの巨額な放映権料を「投資であり、その期待に応えていく必要がある」と受け止める村井チェアマンのもと、Jリーグを中心とする日本サッカー界が描く成長戦略が問われようとしている。

(文責・藤江直人/スポーツライター)