“究極のユーティリティプレーヤー”へ…原口元気がボランチでつかんだ手応え

“究極のユーティリティプレーヤー”へ…原口元気がボランチでつかんだ手応え

[写真]=Getty Images

「正直、今年はよく耐えたなと。『ここが踏ん張りどころだ』と思った時期が何度もあって、ここを踏ん張れなかったら自分はズルズル行くだろうなと。今までうまく行かなかった選手はこうやって消えてったんだろうなと思いましたね。夏に移籍できなくて(ブンデスリーガ)2部でやることになって、(ミルコ・スロムカ前)監督とも正直、うまく行ってなかった。8〜10月は結構大変でしたよ」

 2019−20シーズン前半戦を終え、ウインターブレイクを日本で過ごすため、23日に一時帰国した原口元気は安堵感の中に複雑な感情をにじませた。2017−18シーズン後半戦に出場機会を求めて2部のデュッセルドルフへ移籍したことはあったが、今季2部でプレーすることは本意ではなかった。加えて、試合にコンスタントに出ることができず、チームも開幕から低迷を余儀なくされたのだから、モヤモヤ感が募るのも当然と言える。

 それを日本代表という別の舞台で晴らすことができればよかったのだが……。森保一監督は中島翔哉、南野拓実、堂安律の3人を2列目で重用し、原口にはなかなか出番が与えられなかった。9月のミャンマー戦から始まった2022年カタール・ワールドカップアジア2次予選でも、開幕から3試合はモンゴル戦の70分からピッチに立っただけだった。ロシアW杯でベスト16進出に貢献した1人として「このままでは終われない」という危機感は強まる一方だったに違いない。

 クラブ、代表で思うような活躍ができず、まさに「八方塞がり」と言っても過言ではない苦境……。メンタルの弱い人間なら自分自身を支えきれなくなる状況だったのではないか。それでも、原口は「とにかく前向きになること」を心掛けて日々を過ごしていた。

「空元気でもいいから元気にやるってことが大事なんだよね。そうなると人間、意外に元気になれるもんだから。自分を冷静かつ客観的に見れば『2部でベンチにいる俺って……』という気持ちにもなってくるけど、試合に出なければ1試合分の負荷をかけることを忘れなかったし、準備だけはしっかり続けてきた。チームメートに声をかけたりもしましたよ」

 2017年も同じような苦境を味わったことがある。当時所属していたヘルタ・ベルリンと契約延長を巡って折り合いがつかず、出番が激減した。その苦い経験も原口を奮い立たせるエネルギーになったという。

 地道な努力が実を結び始めたのは、11月に入ってからだった。まず代表のキルギス戦で中島に代わって左サイドで先発出場し、チーム2点目となる直接FKを決めたことで、少しずつ風向きが変わり始めた。ハノーファーの方は同時期にスロムカ監督が更迭され、ケナン・コチャク監督が後を引き継ぐことになったが、新指揮官は代表から戻ってきた原口にボランチ起用を明言。微妙な違和感を覚えながらもそれを受け入れ、少しでも流れを変えようと献身的にプレー続けた。すると、11月25日のダルムシュタット戦で今季初ゴールをゲット。12月7日のアウエ戦でも2点目を決めた。チームも13位まで順位を上げ、原口はチーム復調の原動力になったのだ。

「自分からポジションを主張する前に、コチャク監督から『お前のことはサイドの選手だと思ってないから』と言われて、外でやるのは難しくなりましたね。でも僕のことをボランチで使おうとしたのは今の監督だけじゃない。ハリル(ホジッチ)さん含めて4人目くらいだから(苦笑)。そう割り切ったら、自分のパフォーマンスが良くなって、ラスト5,6試合に関しては楽しかったし、ある程度の手応えも感じました。今は勉強しながらだけど、やっていけばできるなという気にはなってますね」と本人は笑顔を見せる。

 ボランチの場合、サイドや最前線に比べると相手のマークが薄く、思い切って攻撃参加すればフリーになれるシーンも少なくない。こういった状況を有効活用し、大胆な飛び出しを試みた結果、ゴールが生まれた。長い距離を精力的にアップダウンできる長所は、ポジションを中央に移しても十分に発揮できる。そんな手応えをつかみ、彼は目の前の苦境を打開するきっかけを手にしたのだ。

「代表でも仮に『ボランチをやれ』って言われたらボランチやりますよ。サイドバックやれって言われてもやるし。どこでやろうともサッカーなんで、できると思ってます。自分が一番嫌なのはベンチ。どこかで出られるように努力するっていうのが自分のスタイルだしね。出たら必ずチームを助けられる選手だと思っていますから」

“究極のユーティリティプレーヤー”になるべく自分を研ぎ澄ませていけば、どんな監督からも重宝されるだろう。さらに、得点やアシストという目に見える結果で貢献できれば鬼に金棒だ。そんな理想像を脳裏に描きつつ、カタールW杯でベスト8入りの野望を胸に秘め、来年も原口元気は泥臭く貪欲に走り続けていく……。

文=元川悦子

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