2003年以来の大阪ダービー敵地勝利。黒子のイメージ払拭の左サイド・丸橋祐介が主役に

2003年以来の大阪ダービー敵地勝利。黒子のイメージ払拭の左サイド・丸橋祐介が主役に

大阪ダービーの勝利に貢献した丸橋 [写真]=J.LEAGUE

「やっとJリーグが始まる感じで、ワクワクしています。無観客というのは本当にどうなるのか想像がつかない。大阪ダービーの異様な空気を楽しみにしていたので、そこは寂しいです。だけど、僕らはしっかり戦わないといけないし、やらなきゃいけない。見ている人が『週末にJリーグが戻ってきて良かった』と思える試合にしたいです」

 史上初のリモートマッチ開催となった7月4日の「大阪ダービー」。遠藤保仁(ガンバ大阪)のJ1通算632試合出場という偉業達成もあり、注目度の高い一戦となったが、セレッソ大阪のキャプテン・清武弘嗣は勝利への特別な意欲を口にしていた。彼らは敵地での大阪ダービーに2003年から勝っていない。17年間も続いていた不名誉な記録を打ち破るべく、チーム一丸となって吹田スタジアムに向かったのだ。

 策士・ロティーナ監督はFWにブルーノ・メンデスではなく、都倉賢を先発起用。前線で起点を作りながら相手守備陣を攻略しようと試みた。

 両者とも堅い入りとなった大一番。均衡を破ったのはセレッソだった。前半終了間際の47分。清武からのパスを左サイドで受けた丸橋祐介が絶妙の折り返しを中央に送った。ここに飛び込んだのが奥埜博亮。指揮官から絶大な信頼を受けるアタッカーは確実に左足を振り抜き、待望の先制点を手に入れる。最高の時間帯のゴールに彼らは勢いを得た。

 そして後半17分、勝利を力強く引き寄せる2点目が生まれる。交代出場した片山瑛一が右サイドをえぐって入れたマイナスのクロスを清武が触り、ペナルティエリア外の丸橋へ。背番号14は目の覚めるような左足ミドルシュートをネットに突き刺し、ガンバ守備陣を粉砕した。最終的に1点を返されたものの、セレッソは2−1で快勝。1ゴール1アシストの丸橋は負の歴史に終止符を打たせる原動力となったのだ。

「1点目は練習からああいう形に取り組んでいて、それがうまく得点につながりました。2点目はキヨ君が優しいボールを落としてくれた。あの距離なら振り抜こうと思った。ふかさないようにイメージして、思いきり蹴り込みました。入って良かったです」

 2009年にユースから昇格してプロ12年。ガンバ戦敗戦の悔しさを何度も何度も脳裏に刻み付けてきた男は改めて喜びを爆発させた。

 アカデミー生え抜きの左サイドバックはプロ2年目の2010年からレギュラーポジションを確保。10年間、コンスタントに働き続けてきたが、二つ年上の香川真司(サラゴサ)、一つ上の柿谷曜一朗や清武、同期の山口蛍(神戸)ら同世代のスター選手の陰に隠れて脚光を浴びる機会が少なかった。2011年アジアカップ(カタール)の予備登録メンバーに選ばれ、セレッソが初タイトルを獲得した2016年頃にも代表入りの期待が高まったが、それは叶うことなく現在に至っている。こうした経緯もあって、本人も自身の立ち位置を理解しているのか、これまでメディアの前で多くを語るタイプの選手ではなかった。

 しかしながら、今回の新型コロナウイルス感染拡大による長期活動休止を経て、ようやく本格的な練習再開にこぎつけた6月、久しぶりに笑顔で饒舌に話す丸橋の姿があった。

「4、5月は再開に向けて家でできることをコツコツとやるだけでしたね。リモートでトレーニングをやりながら、自分でできる体幹や筋トレに励みました。外に出るのも怖かったし、家でずっと子供と遊んだりしてました。それはそれで楽しかったかなと(笑)。その後、やっと練習ができるようになって順調に調整ができています。再開初戦は大阪ダービー。サポーターがいないのは少し寂しいですけど、しっかり勝ち切りたい。ダービーは勝っているイメージがあまりないけど、去年はホームで勝ちました。今年もそれを継続できるようにしたいと思ってます」

 半月以上前の時点でいち早く、今回の大一番を視野に入れ、高いモチベーションを抱いていた丸橋。凄まじい闘争心と向上心が1得点1アシスト。貴重な再開初戦白星という結果につながったのだから、本人も感無量だったはずだ。

 加えて言うと、ロティーナ体制になってからのセレッソ・左サイドは清武か柿谷と縦関係を形成することが多く、チームにとって攻撃の生命線になっている。丸橋が非凡なセンスを誇る2人のアタッカーを生かし、自らも生かされるような攻撃参加や組み立て、クロスの供給を行うことで、確実にチャンスの数が増えてくる。この日も指揮官が求めた通りのコンビネーションからゴールを演出し、彼の評価は一段と高まったに違いない。もはや「黒子の存在」から「チームのキーマン」へと変貌を遂げたと言っても過言ではないだろう。

「久しぶりの試合でどうなるか分からなかったですけど、実際にやってみてボールを持てる時間もありましたし、僕たちのサッカーが出せた部分もあったので、その点については良かったです。無観客だったけど、給水タイムがあってコミュニケーションが取れたし、90分間しっかり声も通った。集中を切らさず戦えたと思います」と丸橋自身もチーム全体が納得いくパフォーマンスを出せたことを前向きに捉えている様子だった。

 これで開幕2連勝。サンフレッチェ広島、FC東京と並んで勝ち点6という好発進をしてみせた。ここから清水エスパルス、名古屋グランパス、広島、ヴィッセル神戸、サガン鳥栖と7月だけで5試合を消化しなければならないが、連勝街道をひた走ることができれば、悲願のリーグ初制覇も見えてくる。ロティーナ監督も「この過密日程、5人交代の状況下では選手層の厚いチームが有利」と話していたが、それだけのポテンシャルが今季のセレッソにはある。そのけん引役たるべき丸橋にはこれまで以上にゴールに直結する仕事を大いに期待したい。

文=元川悦子

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