圧倒的人気はリヴァプールとバルセロナ…インドネシアにおけるJリーグの認知度は?

圧倒的人気はリヴァプールとバルセロナ…インドネシアにおけるJリーグの認知度は?

[写真]=Getty Images

[サッカーキング アジアサッカー特集号(2019年10月号増刊)掲載]

2012年より本格的にアジア戦略を推進してきたJリーグ。果たして、アジア各国ではどのように情報が展開され、どのくらい浸透してきているのだろうか。インドネシアにおけるJリーグの認知度は、まだまだ高いとは言えないのが現状だ。リーグやクラブが続けている指導者派遣や定期的なクリニックなどの地道な活動が、Jリーグの認知度を高める方法の一つになるのかもしれない。

イニエスタが神戸に加入したインパクトも届いているが……
 インドネシアでJリーグの話題を聞くことは正直ほとんどありません。しかし、それは人気がないわけではなくて、「よく知らない」と言ったほうが正しいのだと思います。

 これは大いにインドネシアの特殊性が関係しています。そもそもインドネシアには、日本のおよそ2倍の人が住んでいて、面積では5倍となる国。島国のため物流インフラが分断される地域もあり、この大きな国の多彩な人々に情報を届けるには、スマートフォンが普及するまでは、全国放送を使うくらいしかありませんでした。

 かつて「Metro TV」、「MNC」などの地上波テレビ局で放送されたJリーグ中継は、「スカパー!」のアジア進出に合わせて衛星テレビ局の「Waku Waku Japan」に代わり、「DAZN」の配信が中心となった今ではブラウン管から姿を消しました。
 ブラウン管テレビはインドネシアではまだ現役。サッカーは、近所のワルン(大衆食堂)のテレビに集まって見るのがインドネシア・スタイルなのです。

 選手はなかなかJリーグに移籍しないし、AFCチャンピオンズリーグでもプレーオフより上に行かないから、Jクラブとの対戦もない。もちろん、サッカー関係者やメディアは、近年ジャカルタでプレーしたFC東京やガンバ大阪の名前を覚えています。アンドレス・イニエスタがヴィッセル神戸に加入したインパクトも届いています。ですが、大衆にとってJリーグはまだ遠い存在、そもそも見たことがない存在と言えます。

Jリーグ認知を高めていくには感情移入できる選手が必要

 では、この国のファンに人気があるのは、どのリーグか? それはズバリ、リーガ・インドネシアです! 人気があるどころか、熱狂的、狂信的という表現のほうが合っているかもしれません。彼らにとってインドネシアは決してサッカー後進国ではなく、ここ最近、ほんの20〜30年間勝てなくなっているだけなのです(笑)。スタジアムは満員、テレビ中継もあり、とても恵まれた環境です。

 その隙間に入り込む形となる海外サッカーは、リヴァプールとバルセロナが圧倒的にリード。ワールドカップの放送を通じて、サムライブルーも人気があり、“ロストフの死闘”は驚くほど多くの人が知っています。人気ある日本人選手は、現地で9シーズンプレーする松永祥兵と、圧倒的に名字を覚えやすいアドバンテージもある本田圭佑。これからは「ジャパン・メッシ」として知られる久保建英が伸びていくでしょう。

 Jリーグ認知を高めていくには、映像をテレビやネット配信、SNSに乗せていくのがセオリーとなるのでしょうが、まずそれらのきっかけとコンテンツとなる、ファンが感情移入できる選手が必要です。

 ヴァンフォーレ甲府と北海道コンサドーレ札幌でプレーしたイルファン・バフディム、同じく札幌でプレーしたステファノ・リリパリは現在でも人気です。Jリーグ移籍によって評価を高めた彼らのユニフォームは飛ぶように売れています。ただ、2人の後に続く選手が出てこないのが残念なところ。「インドネシアのイニエスタ」と呼ばれるエヴァン・ディマス、破壊的なスピードを持つフェブリ・ハリヤディなどは移籍の噂が立ちますが、実際にJクラブが動いたという話は聞きません。

 動向に注目したいのは、昨シーズン、ポーランドリーグでプレーした2000年生まれのエギー・モウラナ。ヨーロッパのクラブからオファーを受ける逸材で、インドネシア人サッカー選手の新しいキャリアを切り拓く存在になるかもしれません。

 もう一人、唯一のインドネシア人JリーガーであるAC長野パルセイロのリュウ・ヌグラハ。長野で生まれ育ち「専門的な指導を受ければもっと成長する」とクラブの代表である堀江三定氏の目に留まり、地元のJクラブ入りを果たしました。まだ有名ではありませんが、クラブを代表できる選手を目指してほしいものです。

 Jリーグやクラブが続けている、指導者派遣や定期的なクリニック開催も堅実な活動です。インドネシアではユース年代の選手が溢れ出てきますので、日本の指導者の確かな目で優れた才能を選び、ヌグラハのように10代のうちから日本で練習に参加できたり、移籍できるようになることが、遠回りながらもJリーグプロモーションの近道ではないでしょうか。

文=長谷川雅治

※この記事はサッカーキング アジアサッカー特集号(2019年10月号増刊)に掲載された記事を再編集したものです

関連記事(外部サイト)