バイエルンは“最強にして最恐”だが…“先制パンチ”が決まればリヨンにも勝機あり/CL準決勝プレビュー

バイエルンは“最強にして最恐”だが…“先制パンチ”が決まればリヨンにも勝機あり/CL準決勝プレビュー

チャンピオンズリーグ準決勝でリヨンとバイエルンが対戦する [写真]=Getty Images

 サプライズに次ぐサプライズ――。チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝は驚きの連続だったが、下馬評を覆したという点で最も大きなインパクトを与えたのはリヨンだった。

 決勝トーナメント1回戦でユヴェントスを下すと、準々決勝ではマンチェスター・Cを撃破。それぞれ昨シーズンのリーグ王者を下しての4強入りである。CLで準決勝に進出するのは2009−10シーズン以来2度目のことだ。

「僕らがここにいるのは偶然ではない。全員がハードワークをしてきたし、絶対に諦めることがなかった」

 マンチェスター・C戦で値千金の先制ゴールを決めたFWマクスウェル・コルネがそう強調したように、リヨンの快進撃は“奇跡”の一言では片づけられない。3−5−2(守備時には5−3−2)をベースとした堅守速攻のサッカーは非常に統率が取れており、大崩れしない。コンパクトな距離を保ったまま仕掛けるプレス、そしてボールを奪った後のカウンターはしっかりと設計されたもので、メガクラブ相手にも脅威を与えている。マンチェスター・C相手に3ゴールを奪ったのが何よりの証拠だろう。DFアイメリク・ラポルテのパスをカットしたあと、浅いラインの裏を突いて奪った2点目のゴールは、まさに“してやったり”のゴールだったはずだ。

 リュディ・ガルシア監督も試合後に「我々は戦術バトルに勝利した」と勝ち誇ったが、ジョゼップ・グアルディオラとの頭脳戦で引けを取ることもなかった。マンチェスター・Cが後半途中にシステムを変更(3−4−3→4−3−3)すると、リヨンもすかさず4バックに移行。一旦は同点に追いつかれたものの、交代出場のFWムサ・デンベレが2得点を挙げて采配を的中させると、再び3バックに戻してリードを守り切った。

「自分たちを信じていた」と指揮官が振り返ったように、終盤に受けた猛攻もチーム一丸となって対処。選手個々のメンタルコンディション、またチームスピリットも高いレベルにある。一発勝負のトーナメント戦で上位に勝ち上がっていくチームの特徴を備えた集団と言えるだろう。

 そんなリヨンに立ちはだかるのが、“ドイツ王者”バイエルンだ。彼らが公式戦で激突するのは10年ぶり。2009−10シーズンのCL準決勝以来の対戦となる。そう、前回リヨンのファイナル進出を阻んだのが、バイエルンなのだ。当時はホーム&アウェイの2試合ともにバイエルンが完封勝利を収め、2戦合計4−0でファイナルへの切符を掴んだ。(決勝ではインテルに0−2で敗れて準優勝)

 10年越しのリベンジを果たすべく、またクラブ史上初の決勝進出へ向けて、リヨンのモチベーションが最高潮に高まっているのは想像に難くない。そもそも彼らには“絶対に負けられない理由”が存在する。今シーズンのリーグ・アンは途中で打ち切りとなったため、7位フィニッシュが確定。さらに国内カップ戦でも優勝を逃したため、CLで優勝しない限りは来シーズンの欧州カップ戦に出られないのだ(CL優勝チームには来季のCLグループステージ出場権が与えられる)。欧州制覇など、おそらくリヨン関係者以外の誰もが不可能だと思っていたはずだが、快進撃は止まらず、目標達成まであと2勝というところに迫っている。

 ただし、今のバイエルンは“最強にして最恐”、攻守において隙がない。

 準々決勝は圧巻だった。バルセロナに対して大量8ゴールをマーク。2失点を喫したものの、90分を通してペースを握らせなかった。バルセロナの出来が非常に悪かったのは事実だが、バイエルンが強すぎたと言っても過言ではない。

 2020年になってから負け知らずで、公式戦19連勝中。CLでは開幕から9戦全勝、ここまで39得点(1試合平均4.33得点)を奪う一方、許した失点はわずかに「8」だ。ブンデスリーガとDFBポカールを制した彼らは、2012−13シーズン以来の3冠を狙うが、ユップ・ハインケス監督が率いた当時のチームを上回る“クラブ史上最強”ではないか、という声も上がっているという。

 エースFWのロベルト・レヴァンドフスキは、今大会ここまで出場した全8試合でゴールネットを揺らし、ランキングトップの14ゴールをマーク。さらにアシスト数も、リヨンMFフセム・アワールやパリ・サンジェルマンFWキリアン・エンバペらと並ぶ最多5つを数えている。

 ただし、今のバイエルンは“レヴァンドフスキのチーム”でない。バルセロナ戦では先発11人のうち、2列目より前に入った4人全員(レヴァンドフスキ、トーマス・ミュラー、イヴァン・ペリシッチ、セルジュ・ニャブリ)がゴールを奪った。さらに5点目のゴールは、左サイドバックに入ったアルフォンソ・デイヴィスからのパスを、右サイドバックのジョシュア・キミッヒが決めたものだった。

 リヨンが今大会の決勝ラウンドで対峙してきた2チーム――ユヴェントスであればクリスティアーノ・ロナウド、マンチェスター・Cであればケヴィン・デ・ブライネを徹底的に封じ込むことが勝利への最短距離だった。だが、バイエルンは違う。どこからでもプレスを仕掛けられるし、どこからでも点を奪える。“超”万能型のチームであるがゆえに、2度の番狂わせを演じてきたリヨンといえども、対策は容易ではない。

 では、今のバイエルンに死角はないのか? データをひも解くと、彼らはCL準決勝をそれほど得意としていない。CLベスト4はここ9シーズンで7度目のことだが、最後にファイナル進出を果たしたのは、3冠を成し遂げた2012−13シーズンのこと。それ以降は4回連続で決勝進出を逃している。

 ただし、敗れた相手はレアル・マドリード(2回)、アトレティコ・マドリード(1回)、バルセロナ(1回)といずれもスペイン勢。CLのノックアウトステージでフランス勢に苦杯をなめたのは過去に1度だけ、しかも1969年までさかのぼる。当時「ヨーロピアン・カップ」と呼ばれた大会はすべてホーム&アウェイ方式のトーナメント制で行われ、バイエルンは1回戦でサンテティエンヌに敗れた(2戦合計2−3)。以後、CLのノックアウトステージでは4度にわたってフランス勢と対戦してきたが、敗退を味わったことはない。1976年のヨーロピアン・カップ決勝では、中立地のスコットランドでサンテティエンヌと対戦したが、1−0の勝利を挙げて優勝を飾っている。一発勝負では何が起こるか分からないとはいえ、フランス勢との相性はかなり良い方だ。

 では、リヨンに勝機はないのだろうか? そうとは言い切れない。彼らには“必勝パターン”が存在するからだ。CLの試合でリードしてハーフタイムを迎えると、47試合連続で負けていない。その間の成績は39勝8分けと、83%の勝率を誇るのだ。今シーズンのリーグ・アンでも、先制したゲームは8勝4分けの無敗。明らかな“先行逃げ切り型”のチームである。

 それゆえ、先制点が何よりも重要になってくる。こういったゲームでは当たり前の話だが、リヨンにとっては命綱に等しい。ちなみに今シーズンの公式戦で先に先制点を奪われると、4勝3分け12敗(4勝のうち1勝はPK勝ち)。勝率は21%まで低下する。今のバイエルンなら、先制パンチを浴びせないことには勝利への道は見えてこないだろう。

 幸い、リヨンには目立った負傷者がおらず、ベストメンバーで大一番に臨むことができる。あとは、アカデミー育ちのアワールを起点としたカウンターから、メンフィス・デパイ、カール・トコ・エカンビ、デンベレといったアタッカーたちがゴールをこじ開けられるか。90分、あるいは120分を無失点で切り抜けることは難しいだけに、攻撃の質が問われるゲームになりそうだ。

 ドイツ勢とフランス勢による準決勝“第2ラウンド”。バイエルンが3冠達成に王手をかけるのか。それとも、リヨンが三たびアップセットを演じるのか。波乱多き大会だけに、この試合も最後の最後まで目が離せない。

(記事/Footmedia)

関連記事(外部サイト)