圧巻の存在感を放つルーキー・三笘薫…日本代表入りへの武器と課題

圧巻の存在感を放つルーキー・三笘薫…日本代表入りへの武器と課題

首位独走の川崎で存在感を放つルーキー・三笘薫 [写真]=金田慎平

 コロナ禍の2020年J1リーグで11連勝と12連勝の記録を作り、2年ぶりの優勝街道を驀進してきた川崎フロンターレ。21日の敵地・大分トリニータ戦は0−1とまさかの苦杯を喫し、ガンバ大阪が22日の浦和レッズ戦を2−1で勝利したため、5試合を残しての史上最速タイトル獲得はお預けとなったが、25日の次節は本拠地・等々力競技場でG大阪との直接対決を迎える。まさに最高の舞台が整ったというわけだ。

 今季の川崎はご存じの通り、魅力あるタレントたちが持ち味を大いに発揮してきた。13ゴールをマークする33歳のエース・小林悠と11ゴールのレアンドロ・ダミアン、小気味いいパス回しを見せる家長昭博、脇坂泰斗、守田英正ら中盤、シーズン途中に華麗な復活劇を見せた中村憲剛、安定感ある谷口彰悟やジェジェウら守備陣……。チーム全体が輝く中で、ひと際強いインパクトを残したのが、大卒新人の三笘薫である。

 1つ上の三好康児、板倉滉、1つ下の田中碧に挟まれる中、川崎U−18時代から抜群の攻撃センスを披露していた彼は、トップ昇格を打診されながら筑波大学へ進学。4年間は学業とサッカーに邁進した。その間も森保一監督に一目置かれ、東京五輪代表候補に名を連ね、2018年アジア大会に参戦するなど、将来を嘱望されてきた。

 それでも本人は、「フロンターレのポジション争いは物凄く厳しい。左サイドは長谷川竜也さんだったり齋藤学さんだったり、代表を背負ってきた選手だったりするので。前からのハードワークやスプリント力という自分の課題を考えると、まだ、どの監督にも使われる選手にはなれていない。そのレベルを目指して努力していきます」と厳しい自己評価をしたうえで、今季、定位置確保に向けてゼロからのスタートを切った。

 案の定、川崎での試合出場の壁は高かった。2月22日のJ1開幕・サガン鳥栖戦で途中出場を果たしたものの、コロナ中断明けの7月以降は3試合出番なし。その後もジョーカー的な扱いが続いた。それでも7月26日の湘南ベルマーレ戦で決めた今季初ゴールを皮切りに、短時間出場ながら効率よく得点を重ねていく。10月14日には2ケタの大台に到達し、優勝に王手をかけた11月18日の横浜F・マリノス戦では12点目をマーク。2009年の渡邉千真、2014年の武藤嘉紀が持つ新人ゴール記録まであと1に迫った。

「スタメンの試合が多くなくて、途中から出て自分の特長を出したうえでの得点が多いので、『途中からしか決められない』と見られていると思う。もっとスタメンで出て、シュートを打って、ゴールに絡むことが課題なので、満足はしてないです。スタメンでも途中出場でもゴールを決められるようにしないといけない」と、彼はより高い理想像を思い描いている。このまま行けば、今季中の新人得点記録達成は濃厚。それを先発出場で叶えられれば、最高のシナリオになる。チームの優勝とは別に、三笘には自分を掻き立てる要素があるのだ。

 もう1つ、彼に関して特筆すべき点を挙げるとすれば、巧みなドリブル技術だろう。齋藤や長谷川とは異なり、三笘のドリブルは単にスピードでグイグイと仕掛けて相手を抜いていく形だけではない。緩急をつけながらDFを食いつかせて、ギリギリまで周囲の状況を見ながらスルーパスを出すか、自らシュートを打ちに行くのかを判断できるのだ。

「いつも自分が駆け引きするだけっていう状況を後ろのノボリ(登里享平)さんが作ってくれている。それはボランチの選手もそうです。そうやってボールを回していることが、自分が相手の裏を取れる秘訣だと思います。オフ・ザ・ボールで優位に立てれば、その後は楽にゴール前に行けると思うので、もっともっと磨いていきたいです」

 本人は自身のドリブルが川崎のスタイルの中でのプレーだと強調したが、鋭い戦術眼や駆け引きのタイミングはどんな環境にいても出せるはず。横浜FM戦の小林悠の3点目につながった70m超のロングドリブルなどを見れば三笘の非凡さがよく分かる。あれだけの高度なインテリジェンスとテクニックが凝縮されたプレーは滅多に見られないもの。11月の日本代表2連戦から帰国した森保監督もその一挙手一投足を見れば「ぜひ代表に呼びたい」と熱望するに違いない。

 18日のメキシコ戦(グラーツ)で露呈した通り、今の日本代表は深刻な決定力不足にあえいでいる。フィニッシュの問題のみならず、屈強な相手に対してドリブルで突破できる選手が伊東純也しかいないのも問題だ。左で途中から起用された久保建英もまだまだ物足りなさを感じさせた。そういう状況だけに「今は三笘の方が久保より脅威ではないか」という声も関係者の間で上がっているほどだ。

「自分は今まで森保さんに何度か呼ばれましたけど、アジア大会にしても、トゥーロンにしてもあまり活躍できませんでした。うまい選手たちとどうやって波長を合わせながら、生かし生かされる関係を作るかが大事だと思います」と本人は五輪代表、A代表入りへの課題を口にしていたが、川崎でのルーキーイヤーの高度な経験値を積み重ねたことで、以前よりも自信と余裕を持ったプレーができるはず。今の彼ならば、海外組と共演しても、引けを取らないフィニッシュとドリブルを示せるに違いない。

 そんなふうに大舞台でゴールという結果を残す三笘を早く見たいところだが、まずは川崎で優勝の原動力となり、左サイドの絶対的レギュラーになることが先決だ。彼自身が弱点だと言うハードワークやスプリント能力にさならる磨きをかけ、タフで逞しいアタッカーへと変貌すべく、シーズン終盤戦でもブレイクを続けてほしい。

文=元川悦子

関連記事(外部サイト)