初の8強進出へ…大一番に臨む横浜FM主将・喜田拓也「歴史を変えに来た」

初の8強進出へ…大一番に臨む横浜FM主将・喜田拓也「歴史を変えに来た」

横浜FMの主将を務める喜田拓也 [写真]=J.LEAGUE

「クラブとして史上初のACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)決勝トーナメント。これまでマリノスの長い歴史の中で成し遂げられなかったことにチャレンジできるのは非常に楽しみです。今、誰1人恐れている人はいない。自分たちはここに歴史を変えに来た。まずは目の前の試合にすべてを賭けて臨んでいきたいと思います」

 目下、カタールで集中開催されているACL。日本勢は3チームとも1次ラウンドを突破したが、6日のラウンド16でFC東京が北京国安に惜敗し、早くも敗退が決定してしまった。残るはヴィッセル神戸と横浜F・マリノスだが、7日に水原三星と激突する昨季J1王者への期待値は高い。キャプテン・喜田拓也はクラブ初の決勝トーナメント進出の勢いに乗って、このまま一気に頂点まで突き進むつもりだ。

 横浜FMのここまでの勝ち上がりを見ると、新型コロナウイルス感染拡大前の2月時点で、1次ラウンド2連勝で首位に立っていた。そして11月25日の再開初戦・上海上港戦を若き守護神、オビ・パウエルオビンナのPKセーブと天野純の決勝弾で勝利。幸先のいいリスタートを切ることに成功する。続く上海上港との2戦目は落としたものの、全北現代に4−1で圧勝して16強入りが決定。グループ最終戦でシドニーFCと引き分けて1位通過を決め、有利な条件でこのステージまで勝ち上がってきたのだ。

「我々は自分たちのサッカーをすることで沢山の成功をもたらすことができた。マリノスのスタイルをブレずにやり続けることが大事だと選手たちにも伝えた」とアンジェ・ポステコグルー監督も強調したように、流動的にポジションを変えながら主導権を握るスタイルはACLの舞台でも十分通用している。

「全体の運動量が多いことと、相手に休むスキを与えないことが敵にとって嫌なところ。ボスが就任してからの流れを継続できているところがアジアで通用しているポイントだと思います」と松原健も自信をのぞかせる。

 その一方で、彼が「ここまではそんなに研究されている感じはしなかったけど、決勝トーナメントに行けば対策を練られる。そこでどう打開していくかが大きな課題」と警戒心を募らせた通り、水原三星は徹底したマリノス封じに乗り出してくるに違いない。

 延長・PKも視野に入れながらの大一番。相手は主力にケガ人を抱えるものの、キム・ミヌらタレントを抱える強豪だけに、困難に直面する時間帯は必ずある。そういう時こそ、チームを確実にコントロールするリーダーが必要不可欠だ。中盤でタクトを振るう喜田の一挙手一投足は極めて重要になると言っていい。

 昨季の背番号8は扇原貴宏との鉄壁ボランチコンビで大いなる輝きを放った。波戸康広アンバサダーからも「最高のキャプテン」と絶賛されるほどの圧倒的存在感を誇っていた。けれども、今季は超過密日程と戦いの幅を広げたい指揮官の思惑もあって、全試合でスタメンで起用されたわけではなかった。クラブOBの中町公祐も「先発に慣れている選手は初めての経験に戸惑うでしょうし、気持ちを切り替えたり、メンタルバランスを整えるのが難しくなる」とシーズン序盤に話したが、喜田自身も違和感を覚えた部分があっただろう。渡辺皓太、大津祐樹らとコンビを組むことで、扇原と培ってきた感覚とのズレに苦しんだことも皆無ではなかったはずだ。

 それでも、今季J1では29試合に出場し、クラブ最多出場時間となる2168分を記録。心身ともにタフさに磨きをかけてカタールの地に乗り込んできた。1次ラウンドは全4試合に出場。フル出場は2試合にとどまったが、途中出場した初戦の上海上港戦とラストのシドニーFC戦ではクローザーとしてしっかりとチームを引き締めた。

「これだけ長い間、異国の地で過ごすことはなかなかないことです。選手同士の絆が深まったのもありましたけど、チームスタッフのことをより近くで見れたことで、チームや選手に対しての思いを強く感じられました。クラブ全体の絆を感じられるいい時間になってます。僕ら選手はそういう人たちの思いをピッチで表現しなければいけない。日本に残ってる選手やスタッフ、サポーターの人たちの思いも含めて、横浜F・マリノスの誇りとプライドを持って最後まで全力を尽くしたい」とトリコロールの生え抜き主将は改めて気合を入れた。

 未知なる頂点を目指すチームは今、攻守両面のバランスがうまく取れているのが前向きな点だ。マルコス・ジュニオールやエリキは依然として高い決定力を誇っているし、今季はケガで苦しんだ昨季JリーグMVPの仲川輝人も復調しつつある。守備面も今回は伊藤槙人と實藤友紀が出場停止というマイナス面があるものの、チアゴ・マルチンスと畠中槙之輔が率いる最終ラインは見る者に安心感を与えてくれる。さらに若きGKオビが急成長しているのも大きなアドバンテージになる。「レンタル移籍していた栃木で前を早く見る意識を身に着けたので、『近くがダメなら遠く』という意識でやれるようになったし、自分の中の引き出しが増えた」と胸を張る大型守護神がいることで、彼らはより自信と余裕を持って戦えるだろう。

 こうしたチームメートのよさを引き出す指示や声掛けを率先して行うのが喜田の役目だ。もちろん相手の攻撃の芽を摘み、さらに攻めの起点となるパス出しや展開といったピッチ上の仕事もこなさなければならない。今の彼ならば、それだけの多彩な役割を着実に遂行できるはず。まずは目の前の宿敵を倒すべく、持てる力のすべてを出し切ってほしい。

文=元川悦子

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