【アジア最前線:韓国 #8】eSportsを新たな起爆剤に…Kリーグが目論むファンベースの拡大

【アジア最前線:韓国 #8】eSportsを新たな起爆剤に…Kリーグが目論むファンベースの拡大

[写真]=Getty Images

『eKリーグ2020』は約300万人が視聴する注目度を誇った
 韓国では最近、KリーグがeSports大会を初めて開催したことで大きな話題を呼んだ。PCオンラインサッカーゲーム『FIFA Online 4』を用いた『eKリーグ2020』が、それだ。

 国際サッカー連盟(FIFA)の公認を受けたeSports大会で、Kリーグを主管する韓国プロサッカー連盟が韓国eSports協会と共同で初開催。日本でもJリーグが「eJリーグ」を展開しているが、『eKリーグ2020』は昨年10月末の予選開始から今年1月16日の決勝まで、約4カ月にわたって行われたリーグ戦顔負けの長丁場だった。大会で使われたゲーム『FIFA Online 4』は、エレクトロニック・アーツ社(EA)の韓国スタジオSpearheadによって開発された基本プレイ無料のオンラインゲームで、2018年5月24日から韓国で配信がスタートした。

 現時点で日本語版は配信されていないが、韓国以外では中国やベトナム、タイなど主にアジア諸国で配信されていて、『EAチャンピオンズカップ』(EACC)なる国際大会も行われるほどの人気を誇る。2019年のEAの発表によると、『FIFA Online 4』の登録プレイヤー数は1億1500万人以上で、そのうちの韓国ユーザーは200万人を超えるという。

 こうした『FIFA Online 4』の人気もあって、『eKリーグ2020』は開催前から注目されていた。Kリーグ1・2部全22クラブの本戦出場選手を決めるクラブ代表選考会には、満16歳以上で3人1チームを組めば誰でも参加できることもあり、総勢595チームがエントリー。特に、全北現代モータースやFCソウルの代表選考会には各60チーム以上がエントリーした。参加者の顔ぶれもさまざまだ。サッカーファンや一般ユーザー、Kリーグでプレーするプロサッカー選手、クラブのフロント職員のほか、2020年11月に開催された『EACC』で優勝し、賞金1万5000ドル(約155万円)を獲得したプロeSportsチーム「CrazyWin」など、国際大会で上位入賞経験のあるプロゲーマーまでも参戦した。

 大会は本戦グループステージが始まってから注目度がさらに上昇。大会を独占生中継した韓国の動画配信サイト『AfreecaTV』によれば、グループステージ開幕戦の最高同時視聴者数約4万3000人。合計視聴者数は約80万人、決勝で最高同時視聴者約2万6000人の合計視聴者数約40万人を記録。『eKリーグ』本戦全23試合の合計視聴者数は約300万人に達したという。

 注目の要因の一つとして挙げられるのが、視聴者参加型企画の開催だ。『eKリーグ』は生放送のスクリーンショットをSNSに投稿する“視聴認証イベント”や、試合ごとに勝者を予想する“勝敗予測イベント”を実施。抽選で当たればKリーグ公認球や『FIFA Online 4』で使えるクーポンのほか、ゲーミング周辺機器やビジネスホテル宿泊券といった豪華賞品がもらえることもあり、サッカーファンからゲームユーザーに至るあらゆる層が『eKリーグ』を視聴した。

『eKリーグ2020』では2部クラブ勢が躍進
 そんな『eKリーグ』で初代チャンピオンに輝いたのは、Kリーグ2(2部)所属の安山グリナースだった。安山はグループステージを大田ハナシチズンに次ぐ2位で突破すると、準々決勝でソウルイーランドFC、準決勝で浦項スティーラースを下し決勝進出。大田との再戦となった5戦3先勝方式の決勝では先に大田の2勝を許したが、その後の3セットを連続で制し、見事逆転での優勝を果たした。

 安山は2017年2月に創設されたばかりの新興クラブで、これまで一度も優勝経験がなかった。2020年シーズンのKリーグ2では7勝7分13敗の12チーム中7位と、優勝はおろか昇格争いにも絡めずにいた。そんな安山がリアルではなくゲームの世界とはいえ、クラブ史上初のタイトルをeSports大会で獲得したのだから、安山のサポーターからすれば喜び半分、驚き半分といったところだろう。

 なお、優勝した安山の選手には賞金1000万ウォン(約100万円)のほか、副賞としてゲーミングチェアが贈られ、毎年PCバン(オンラインPCゲームのプレイに特化したネットカフェ)で行われる『EACC』韓国代表選抜戦オフライン予選への出場権も与えられた。また、2位の大田には賞金500万ウォン(約50万円)、3位の済州ユナイテッドには賞金200万ウォン(約20万円)が与えられた。

 ちなみに、今回の『eKリーグ』では、国内2冠(Kリーグ1、FAカップ)を達成した全北現代が準々決勝敗退、AFCチャンピオンズリーグ王者の蔚山現代がグループステージ敗退と、1部上位勢が早々に脱落。その一方で、安山や大田、ソウルイーランドといった2部クラブ勢の躍進が目立つ形となった。

 韓国プロサッカー連盟は今後もeSports事業に積極的に取り組み、Kリーグのファンベースを拡大することを目標に掲げている。eSportsを通じて、これまでサッカーに興味のなかったゲームユーザーを新規ファンとして獲得し、既存のサッカーファンにはゲームプレイを通じて自身が応援するチームや選手への愛着を深めてもらう。これが、韓国プロサッカー連盟の描く理想図だろう。『eKリーグ』の登場によって国内サッカー人気に変化が現れるかどうか、今後の動向に注目したいところだ。

文=姜 亨起(ピッチコミュニケーションズ)

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