主将の重責から解き放たれた三竿健斗、“らしい”スタイルで常勝・鹿島復活の原動力に

主将の重責から解き放たれた三竿健斗、“らしい”スタイルで常勝・鹿島復活の原動力に

昨季ホーム最終戦で挨拶する三竿 [写真]=森優斗

ベルギーの名門アンデルレヒトやエジプトのアル・アハリなどで手腕を振るったスイス人指揮官、レネ・ヴァイラー監督率いる新体制で、2022年シーズン開幕に向けて調整を続けている鹿島アントラーズ。

 4日には宮崎キャンプを打ち上げ、本拠地に戻ったが、オミクロン株拡大による新規外国人入国停止措置の影響で新指揮官や新たなコーチングスタッフは依然として不在。岩政大樹コーチ中心となってトレーニングを続けているが、19日に迫ったガンバ大阪との開幕戦までにどこまでチーム完成度を引き上げられるかは未知数だ。

 やや困難な状況だけに、選手たちはこれまで以上に密な意思統一を図り、強靭なメンタリティでシーズンに挑んでいく必要がある。

 2020年から2年間、キャプテンを務め、今季も選手会長の要職に就く三竿健斗は重要なキーマンの1人。シント・トロイデンから古巣復帰した同い年の鈴木優磨とともに、力強く新生・鹿島の軸を担う覚悟だ。

「『(優磨とは)俺らが中心だから、引っ張っていこう」と言い合っています。やるべきことをやっていない選手がいるとしたら、誰彼構わず強く言うべきだと思う。『1人が激しく戦っている姿を見せたら、周りの2人目3人目もついていこう、戦う基準を示していこう』という話もしています」

 宮崎キャンプの終盤、本人はこう語ったが、ボール奪取や球際の部分は三竿の真骨頂。今季はまず原点回帰を図り、自分らしさを取り戻すところからがスタートと言っていい。

 そのうえで、ヴァイラー監督のサッカースタイルを自らに叩き込み、ピッチ上で体現していくことが肝要だ。

「選手と監督が直接話したのは、始動時のミーティングだけ。練習試合後も映像を見ながらの指導しかなかったけど、前へのスプリントやゆっくり回すところのメリハリに関しては強調されていて、より直線的にゴールを目指す形が求められているなと感じます」

「欧州から戻ってきた優磨や(安西)幸輝も『日本はせっかく前に行けるチャンスでもゆっくり動かして、敵が陣地に揃ってから攻めている』と言っていた。レネ監督の下ではそういう意識は強くなると思います」

 こういった新たなコンセプトを頭に入れつつ、三竿には攻守の起点として躍動してもらわなければならない。

 昨季の鹿島は14ゴールの上田綺世、10ゴールの荒木遼太郎の得点力に依存しがちだったが、完全復活を期すエヴェラウドやもう一段階の飛躍が求められる若い染野唯月ら異なる得点源を作ることも、躍進のポイントになってくる。

 彼らに決定的なボールを配給すればするほど、得点確率は上がる。”敵を一刺し”するようなパス出しができるか否か…。三竿には攻撃面での成長が強く求められるのだ。

「レネ監督のサッカーを実践するうえで、重要なのは、ゲームを支配してどれだけ相手を困らせるか。やはりサッカー脳を養うことが大事になると思います」

「相手を見て取るべきポジションに関しては今、練習からやっているし、それをどんどん自分たちで試すしかない。大樹さんも『守備の安定性は大事だけど、サッカーは相手より点を取らないといけないスポーツ』だと言っていますから」

「僕自身は守備で中盤を制圧することに加えて、点に直結するパス、ゴールに関わるボールを出すことを意識したい。縦パスにしろ、味方との立ち位置やタイミングはすごくいい感触を持てているので、試合を楽しみにしていただければと思います」

 爽やかな笑顔で自信をのぞかせた三竿。彼がここまで明るい雰囲気でメディア対応したのは本当に久しぶりだった。もともと真面目で責任感の強いキャラクターゆえに、この2年間は「自分が常勝軍団復活のけん引役にならないといけない」と考えすぎて、どこかで空回りしてしまったのかもしれない。

 だが、今季は土居聖真にキャプテンを託し、いい意味でプレッシャーから解放された。安西や鈴木というヨーロッパ経験豊富な同世代も支えてくれている。加えて言うと、昨秋には結婚。精神的に強くなった部分もあるだろう。心身ともにいい状態になれた2022年の三竿には、非常に大きな期待がかかるのだ。

 思い起こせば、2018年5月の西野朗監督就任直後日本代表合宿。ロシアワールドカップ最終登録メンバー選考の場に三竿は名を連ねていた。惜しくも本大会23人には入れなかったものの、森保一監督体制初陣となった同年9月のコスタリカ戦にも参戦。試合終盤にピッチに立っている。

 当時、同じようにベンチスタートを強いられた伊東純也、守田英正が今や代表の主力としてカタールW杯最終予選まであと一歩と迫っているのを見ると、三竿の成長曲線は物足りなく映る。彼ほどのポテンシャルがあれば、もっともっと高い領域に到達できるはず。25歳という年齢は決して遅くない。ここから劇的な飛躍を遂げ、カタールW杯に滑り込むくらいの気迫と心意気を今季のJ1で見せつけてほしいのだ。

「今年はとりあえず自分のプレーに集中することで、チームに多くをもたらせるとワクワクしています。この1〜2年は苦しんだので、違った姿をお見せしたいです」

 この言葉通り、圧倒的パフォーマンスを示す三竿の姿を今から楽しみに待ちたい。

取材・文=元川悦子

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