カタールW杯への道は目の前の試合から 権田修一は苦境の清水を救えるか

カタールW杯への道は目の前の試合から 権田修一は苦境の清水を救えるか

清水GK権田修一 [写真]=兼子愼一郎

「我々の仕事はタイトルを取ること」と大熊清GMが公言した2022年だが、序盤9試合を消化した時点では、1勝5分3敗の勝ち点8で16位という苦戦を強いられている清水エスパルス。2021年は最終節まで残留争いに巻き込まれ、何とか踏みとどまって14位フィニッシュしているだけに、ここから急上昇カーブを描くことが必要だ。

 この重責を誰よりも強く感じているのが、キャプテンの権田修一である。日本代表としてFIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選で10試合中9戦に出場した絶対的守護神は「ゴールを守るのが自分の仕事」と言い続け、10日のサガン鳥栖戦でもクリーンシート達成の原動力となった。ただ、肝心の攻撃陣が不発でスコアレスドロー。今は耐え忍ぶ時期と言っていい。いかにして、ここから這い上がるべきか。それを真剣に考え、周囲に発信していくことが、リーダーに託された大仕事となるはずだ。

 その権田が「国際ゴールキーパーの日」だった14日、日本サッカー協会が主催したイベントに登場。小中学生のGKたちと交流する場を持った。

「自分は日本のGKの地位をもっともっと向上させたいし、人気のある、やりがいのあるポジションにしていきたい。子供たちのためにも、やれることをいろいろやっていきたい」と、改めて気合を入れていた。

 人気の低下傾向が顕著と言われる日本代表。再ブレイクへの一番の近道は、7カ月後に迫っているW杯で結果を出すことだ。彼自身も「日本サッカーの人気が爆発的に上がる可能性のある大会」と語気を強める。

「今回のグループは相当シビアだなと感じていると思います。でも日本が突破した時の盛り上がりはすごくなる。抽選会の結果を見て、僕はそう思ったんです。正直、嬉しかったです」と彼はどこまでも前向きだ。

 とはいえ、ドイツのマヌエル・ノイアー、スペインのウナイ・シモン、プレーオフを勝ち上がってくればコスタリカのケイラ―・ナバス、と、対戦国GKの顔ぶれは凄まじいものがある。目下、Jリーグに在籍する権田は「最も知名度の低い選手」と見られても仕方ない。しかしながら、ネガティブな評価をひっくり返してやろうという野心を今、メラメラと燃やしている。

「どう頑張って比較されるし、『そこ大丈夫か』と言われる。メディアの皆さんが報道しなくても百も千も承知です。結果が全てのW杯で勝てなかったら叩かれることも分かっています。でも彼らの中に僕の名前が並ぶことは物凄いモチベーション。そう思って、貪欲に取り組んでいきます」と、権田は世界中の人々を驚かせる覚悟だ。

 闘争心は高まる一方だが、世界の壁が想像以上に高いこともよく理解している。というのも、彼はとてつもなく長い間、自らの力でW杯を掴もうと努力し続けてきたからだ。遡れば、始まりは2004年のAFC U−17選手権。北朝鮮、タイ、中国と同居するグループを突破できずに、2005年U−17W杯出場への道を断たれた時から、世界への強い渇望が生まれたといっても過言ではない。

 あれから18年。2008年AFC U−19選手権敗退があり、やっとの思いで参戦した2012年ロンドン五輪では宿敵の韓国に敗れてメダルを逃す屈辱もあった。A代表に継続的に呼ばれるようになってからも、川島永嗣という偉大な先輩の存在に阻まれ、定位置確保は遠かった。

「僕は2014年ブラジルW杯のメンバーに入っていたわけだから、2018年ロシアW杯にも出なければいけないのでは、と思っている方も多いと思います」と、33歳の守護神は苦渋の表情を浮かべた。

 それでも、決して諦めることなく、高みを目指し、日々の積み重ねを大事にしてきたからこそ、今がある。紆余曲折の末にカタールW杯に手をかけた今、堂々と大舞台に挑んでいく権利を手にした状態なのだ。

「僕は毎日毎日、サッカーの練習を一生懸命やってきた。ここまで来られた裏技もないし、抜け道もなかった。メチャメチャ長い時間だったし、たくさんのことがありましたけど、なんだかんだ言って、これが僕のベストの道だったのかなと今、すごく思っています」

 神妙な面持ちで自らのキャリアに思いを馳せた権田。「喜びより苦労の方が多かった」とも話したが、未来を信じて先に進むしか成功は得られない。厳しい現実を33歳の代表守護神は、改めて多くの少年少女たちに伝えてくれた。

 こうした努力を結実させるのは、ピッチ上しかない。カタールW杯は重要なターゲットではあるが、その前に低迷する清水の救世主になることが最優先だ。サッカー王国を代表する名門の今季通算失点は11。総得点が得点力7とやや乏しい分、失点を極力ゼロに近づけることが、浮上の大きなポイントとなる。権田としてはセービング技術に磨きをかけ、シュートストップの範囲を広げることはもちろんのこと、守備陣との連携を強化し、穴のない強固な守備組織を築き上げていくことが重要になってくる。

「大舞台で結果を残すため、GKの担うウエイトは大きい」と語る男は清水を引き上げ、上位浮上請負人となり、その勢いに乗ってカタールに突き進むという理想の道のりを歩めるのか。ここからが本当の勝負だ。

取材・文=元川悦子

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