今季FA杯決勝はドイツ人名将対決に…トゥヘル対クロップ、過去8戦を振り返る

今季FA杯決勝はドイツ人名将対決に…トゥヘル対クロップ、過去8戦を振り返る

[写真]=Getty Images

14日に『ウェンブリー・スタジアム』で開催される2021−22シーズンのFAカップ決勝は、チェルシーとリヴァプールが対戦する。それぞれのクラブを率いるのは、トーマス・トゥヘル監督とユルゲン・クロップ監督。ドイツ人、現役時代はDF、監督として最初に率いたトップチームはマインツであり、次に率いたドルトムントで成功を収めてビッグクラブの監督にステップアップ…。共通項の多い両監督は、比較を逃れられない運命にある。

 マインツでは退任から1年後、ドルトムントでは直接、クロップ監督からチームを引き継いだトゥヘル監督。昨年、チェルシーの指揮官として初めてリヴァプールと対戦する前に、6歳年上のクロップ監督と比べられることについて、「嬉しいよ。彼は欧州屈指の監督だからね」と前置きした上で、「我々は皆が思っている半分も似ていないけどね」と発言していたが、今回も監督対決への注目は避けられない状況だ。

 過去の対戦成績は、トゥヘル監督が3勝6分け9敗(※以下、PK戦は引き分けにカウント)と大きく負け越している。しかし、トゥヘル監督がマインツ、クロップ監督がドルトムントの指揮官だった、両者ドイツ時代の対戦成績(トゥヘル監督の1勝2分け7敗)を除くと、2勝4分け2敗と互角の成績だ。

 そこで今回は、クロップ監督が2015年10月にリヴァプールの監督に就任して以降、両監督が戦った全8戦を振り返る。FA杯で優勝トロフィーを掲げると同時に、対戦成績でも一歩リードできるのは果たしてどちらの名将になるだろうか。

[写真]=Getty Images

▼2015−16 EL準々決勝ファーストレグ 2016年4月7日ドルトムント 1−1 リヴァプール



【得点者】
36分 ディヴォック・オリジ(リヴァプール)
48分 マッツ・フンメルス(ドルトムント)

「スタジアムに到着して、チームバスを降りてから控え室までの20〜30メートルで50人ほどの知った顔に会うことになるだろう」。試合前にクロップ監督が発した言葉が、ドルトムントと同監督の密な関係を端的に言い表していた。2015−16シーズンのヨーロッパリーグ(EL)準々決勝で、前年度まで7年に渡って率いていたドルトムントと対決することになったクロップ監督。“凱旋試合”はあまりに大きな注目を集め、試合前にはドイツの放送局が“クロップ密着カメラ”を企画し、同監督が苦言を呈した一幕もあった。試合はベルギー代表FWディヴォック・オリジが先発起用の期待に応えて先制点を挙げるも、ドルトムントが後半開始早々にコーナーキックから同点に追いつき、1−1で終了。現時点においてはこれが、クロップ監督がドルトムントの元監督として『ジグナル・イドゥナ・パーク』で戦った唯一の試合となっている。

▼2015−16 EL準々決勝セカンドレグ 2016年4月14日リヴァプール 4−3 ドルトムント



【得点者】
5分 ヘンリク・ムヒタリアン(ドルトムント)
9分 ピエール・エメリク・オーバメヤン(ドルトムント)
48分 ディヴォック・オリジ(リヴァプール)
57分 マルコ・ロイス(ドルトムント)
66分 フィリペ・コウチーニョ(リヴァプール)
78分 ママドゥ・サコー(リヴァプール)
90+1分 デヤン・ロヴレン(リヴァプール)

 奇跡的な逆転勝利を、クロップ監督は「未来のインスピレーションの源」に位置付けた。2点ビハインドで迎えたハーフタイム。クロップ監督は11年前のチャンピオンズリーグ(CL)決勝ミラン戦で、3点のビハインドを追い付き、PK戦の末に制した「イスタンブールの奇跡」を引き合いに出して選手たちを鼓舞したという。残り25分を切った段階で、3ゴールが必要な絶体絶命の窮地に立たされていたリヴァプール。コウチーニョとサコーのゴールが決まり、あと1点となったところで、ゴール裏から唸り声が上がった。それに後押しされたように、後半アディショナルタイムにジェイムズ・ミルナーのピンポイントクロスに合わせたデヤン・ロヴレンが強烈なヘディング弾をネットに収めた。トゥヘル監督は「スタジアムにいたサポーター全員が、土壇場にラッキーパンチを繰り出せることを知っていたかのようだった」とアンフィールドの魔力に脱帽。クロップ監督は、この試合が今後10数年に渡ってクラブのインスピレーションになるだろうと胸を張った。ドルトムントで先発出場していたMF香川真司は「リヴァプールの前への意識、フィジカルの強さを感じていた。耐えることができなかった」と試合を振り返っていた。

▼2018−19 CLグループステージ第1節 2018年9月18日リヴァプール 3−2 パリ・サンジェルマン



【得点者】
30分 ダニエル・スタリッジ(リヴァプール)
36分 ジェイムズ・ミルナー(リヴァプール)
40分 トーマス・ムニエ(PSG)
83分 キリアン・エンバペ(PSG)
90+2分 ロベルト・フィルミーノ(リヴァプール)

 リヴァプールの2018−19シーズンCL制覇は、グループステージ開幕節での劇的な勝利が無ければ成し得なかっただろう。3日前の試合で目を負傷したロベルト・フィルミーノに代わり、先発起用されたダニエル・スタリッジのゴールで先制したリヴァプール。6分後にミルナーがPKを決めてリードを広げ、試合を有利に運ぶかと思われた。しかし前半のうちに1点を返されると、83分にキリアン・エンバペに同点ゴールを許した。残り時間を考慮すれば、引き分けが濃厚かと思われた。しかし後半アディショナルタイム、当日の朝になってからこの試合への出場が可能となったというフィルミーノが決勝弾。ドルトムント時代のEL準々決勝でもアンフィールドで逆転負けを経験しているトゥヘル監督は、「これがアンフィールドなんだ。ここで戦うのに重要なのは戦術的なことではない。自信を持ってプレーをすることなんだ」と悔やんだ。

▼2018−19 CLグループステージ第5節 2018年11月28日パリ・サンジェルマン 2−1 リヴァプール



【得点者】
13分 フアン・ベルナト(PSG)
37分 ネイマール(PSG)
45+1分 ジェイムズ・ミルナー(リヴァプール)

 レオナルド・ディカプリオとミック・ジャガーがスタンド観戦していたことも話題となった一戦。2点のビハインドを負ったリヴァプールは、前半終了間際にミルナーのPKで1点を返すのがやっとだった。リードを奪った後に、ネイマールをはじめとしたPSGの選手たちがピッチの上を大袈裟に転げまわる行動に対し、クロップ監督は怒りを露わに。「我々は2年連続でイングランドのフェアプレー賞を受賞しているが、今夜の我々はまるでブッチャー(殺戮者)のようだったね。PSG、特にネイマールの賢さだ。多くの選手が何か深刻なことが起きたかのように転んでいた」と皮肉を言わずにはいられなかった。クラブ史上初めてCLグループステージのアウェイ3戦で全敗したリヴァプールは、1試合を残して3位に沈み、グループ敗退の危機に立たされた。しかし最終節でナポリに勝利して2位通過を果たし、最終的にこのシーズンのCL王者に。一方、グループを首位突破したPSGは、ラウンド16でマンチェスター・Uの前に、アウェイゴールの差で敗退している。

▼2020−21プレミアリーグ第29節 2021年3月4日リヴァプール 0−1 チェルシー



【得点者】
42分 メイソン・マウント(チェルシー)

 トゥヘル監督がチェルシーの指揮官として初めてクロップ監督と顔を合わせた一戦。リヴァプールはホームでのプレミアリーグで4連敗中。一方のチェルシーは、トゥヘル監督就任後、公式戦9試合連続無敗で、うち7試合に無失点という快進撃の最中にあった。両チームの勢いが結果に反映された。前半42分にカウンターから先制点をマークしたチェルシー。ゴールを決めたメイソン・マウントは“かめはめ波”セレブレーションを披露。遠征の時に当時チェルシー所属のDFクル・ズマが飛行機で見ていた『ドラゴンボール』からインスピレーションを受けたのだという。トゥヘル監督の就任時には8位に低迷していたチェルシーは、この日の勝利で4位に浮上。対するリヴァプールは7位に転落した。

▼2021−22プレミアリーグ第3節 2021年8月28日リヴァプール 1−1 チェルシー



【得点者】
22分 カイ・ハフェルツ(チェルシー)
45+5分 モハメド・サラー(リヴァプール)

 優勝候補の2チームが第3節で早くも対戦。序盤から激しいせめぎ合いが続いた。先制したのはホームのチェルシー。リース・ジェームズの蹴ったコーナーキックにカイ・ハフェルツがヘッドで合わせた。その後、チャンスを作りながらも追加点を上げられなかったチェルシーは、前半終了間際にサディオ・マネのシュートを手でブロックしたとしてジェームズが退場処分に。リヴァプールはここで与えられたPKをモハメド・サラーが成功させ、1−1で前半を折り返すことに成功した。しかし、終盤に怒涛の攻撃を見せるも数的優位を生かすことはできなかったリヴァプール。勝ち点1を分け合う結果となった。

▼2021−22プレミアリーグ第21節 2022年1月2日チェルシー 2−2 リヴァプール



【得点者】
9分 サディオ・マネ(リヴァプール)
26分 モハメド・サラー(リヴァプール)
42分 マテオ・コヴァチッチ(チェルシー)
45+1分 クリスティアン・プリシッチ(チェルシー)

 2位チェルシーが、1試合消化試合の少ない3位リヴァプールを勝ち点1差で迎えた一戦。同時点で首位マンチェスター・Cとの勝ち点差は「11」。逆転優勝を狙うには、どちらも勝ち点3が必須の状況だった。リヴァプールは新型コロナウイルスの検査で陽性の疑いが出たクロップ監督が指揮を執ることができず。GKアリソン、DFジョエル・マティプ、FWフィルミーノが同じ理由でベンチから外れる厳しい状況。一方のチェルシーは、年末のインタビューでクラブに対する不満を吐露して物議を醸したFWロメル・ルカクがメンバー外となっていた。マネとサラーのゴールで幸先よく2ゴールを先制したリヴァプールだったが、前半終了間際に立て続けに失点を喫して試合は振り出しに。後半も互いに決定機を作ったものの、エドゥアール・メンディとクィービーン・ケレハーの両GKが好守を見せ、今季リーグ戦での対戦は2試合とも引き分けに終わった。

▼2021−22EFLカップ決勝 2022年2月27日チェルシー 0−0(PK:10−11) リヴァプール



 GKの起用法が明暗を分けた。EFLカップ(リーグカップ)では基本的にセカンドGKで戦ってきた両チーム。しかしシーズン初タイトルをかけた一戦で、リヴァプールは従来どおり第2GKのケレハーを送り込んだのに対し、チェルシーは準決勝まで全試合でゴールを守ったケパ・アリサバラガではなく、メンディを起用した。両守護神の好守も光り、スコアレスのまま時間が経過。トゥヘル監督はPK戦を見越して、延長後半の終了間際にメンディに代えてケパを投入したが、この采配が裏目に出た。フィールドプレイヤー全員がPKを成功させ、勝負の行方は最終キッカーとなった両GKに託された。先攻のケレハーがネットを揺らしたのに対し、ケパのキックは大きく枠を外した。3週間前にアフリカ・ネーションズ杯決勝でPK戦を制したセネガル代表GKをピッチから下げたことに疑問の声も挙がったが、今季のUEFAスーパー杯では同じタイミングでメンディからケパに代えてトロフィーを手にしたトゥヘル監督。FA杯決勝での采配に要注目だ。

(記事/Footmedia)

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