「バロンドーラー」「牛乳配達員が怪しい?」…時代を彩った“小柄”な名センターバックたち

「バロンドーラー」「牛乳配達員が怪しい?」…時代を彩った“小柄”な名センターバックたち

“身長のハンデ”をものともしなかった名選手たち [写真]=Getty Images

今夏にマンチェスター・Uへと加入したアルゼンチン代表DFリサンドロ・マルティネスの“高さ”が話題になっている。

 アヤックスから加入した24歳のセンターバックは身長175cm。高さが求められるポジションの選手としてはかなり低い方で、今シーズンのプレミアリーグの同ポジションにおける最低身長となっている。もちろん高さがすべてではないが、世界的なアタッカーが名を連ねるプレミアリーグでは「高さ」「強さ」「スピード」といったフィジカル面が必要不可欠だ。

 たとえば、マンチェスター・Cに加入したノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(194cm)と比べると、L・マルティネスは19cmも低いことになり、純粋な空中戦では苦戦が予想される。解説者として活躍する元リヴァプールDFジェイミー・キャラガー氏も「3バックの一角や左サイドバックなら大丈夫かもしれないが、プレミアリーグで4バックのセンターバックを任せることはできないはず」とコメントしていた。

 事実、L・マルティネスは0-4と大敗を喫したプレミアリーグ第2節のブレントフォード戦でフィジカル負けが目立ち、ハーフタイムに交代させられている。だからこそ、センターバックにとって身長は大切な要素だと思うが、過去には小柄でも活躍した名センターバックが存在した。本記事では、“身長のハンデ”をものともしなかった名選手たちを紹介していこう。

[写真]=Getty Images

■ファビオ・カンナヴァーロ(元イタリア代表) 175cm


 歴代最高の“小柄なセンターバック”と言えば、ユヴェントスやレアル・マドリードなどで活躍したファビオ・カンナヴァーロ氏しかいない。驚異的な跳躍力で“身長のハンデ”をカバーして空中戦でも強さを誇った名プレーヤーは、パルマ時代のUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)制覇に始まり、レアル・マドリードでは2度のリーグ制覇に貢献するなど、数多くの栄光を築いた。

 そして、イタリア代表としては136試合に出場。1998年から2010年まで4度のワールドカップに出場した。2006年のドイツ大会ではキャプテンとしてチームを牽引すると、大会を通じてわずか2失点という堅守を誇り、決勝ではジネディーヌ・ジダン氏を擁するフランス代表をPK戦の末に制して頂点に輝いた。そして同年の『バロンドール』を受賞。彼以降、同賞に選ばれたDFは一人もいない。カンナヴァーロ氏は小柄さを指摘されることなく、歴代最高のセンターバックの一人として歴史に名を刻んだ。

■フランコ・バレージ(元イタリア代表) 175㎝


 カンナヴァーロ氏とともに歴代最高DFの呼び声が高いのは、やはりカルチョの国の名センターバックだ。ミランでキャリアを全うしたフランコ・バレージ氏は、約20年間に渡り愛するクラブで計719試合に出場し、リーグ優勝6回、チャンピオンズリーグ(CL)/カップ制覇3回に貢献。そしてトヨタカップで来日して“世界一のクラブ”の称号も手に入れた。

 ワールドカップでもイタリア代表として輝きを放ち、1982年のスペイン大会では出場機会こそなかったが優勝メンバーに名を連ねた。さらに、1990年の母国イタリア大会では準決勝でディエゴ・マラドーナ氏のアルゼンチン代表に敗れるも3位に入り、続く1994年のアメリカ大会では決勝でブラジル代表とPK戦にもつれ込む激闘を演じ、準優勝を経験した。誰もが認める偉大なセンターバックは、1989年の『バロンドール』でミランのチームメイトだったFWマルコ・ファン・バステン氏に次いで2位に選ばれている。

■ハビエル・マスチェラーノ(元アルゼンチン代表) 174cm


 元アルゼンチン代表のハビエル・マスチェラーノ氏も歴史に名を残す名プレーヤーだったが、彼の場合は純粋なセンターバックと呼ぶことはできないだろう。現役時代に世界中を渡り歩いて活躍したマスチェラーノ氏は、2006年にイングランドのウェストハムに加入すると、契約問題などが理由であまり試合に出られず、半年後にリヴァプールへ移籍。新天地では2007年にCL準優勝などを経験し、3年半に渡って活躍したが、当時は完全に“守備的MF”だった。

 彼がセンターバックにコンバートされたのは、2010年にバルセロナへと移籍してから。バルサでは最終ラインの中央で2度のCL制覇に貢献するなど、すっかりセンターバックに定着したが、その間もアルゼンチン代表では守備的MFを務めることが多く、生粋のセンターバックとは呼べないのだ。現役引退後は指導者の道に進み、現在はU-20アルゼンチン代表で監督を務めている。

■イバン・コルドバ(元コロンビア代表) 173cm


 L・マルティネスより低い身長ながら“クラブ世界一”に輝いたのが、元コロンビア代表DFイバン・コルドバ氏だ。2000年から約12年間に渡りイタリアのインテルでプレーしたコルドバ氏は、2009-10シーズンに名将ジョゼ・モウリーニョ監督の元で“トレブル(3冠)”に貢献。そして2010年のFIFAクラブワールドカップで見事世界一に輝いた。

 コルドバ氏も“身長のハンデ”を驚異的な身体能力でカバーした選手。抜群のジャンプ力もさることながら、快速アタッカーを封じる圧倒的なスピードが魅力だった。さらにサイドバックやウィングバックもこなす万能性を発揮して指揮官に重宝された。2012年に現役を退き、現在はセリエBのヴェネツィアでスポーツダイレクターを務めている。

■プレミアリーグでは…

 こうして見ると、小柄でも世界的なセンターバックとして活躍することは可能だ。しかし、それをプレミアリーグの舞台で実証した選手は皆無に等しい。たとえば、ボローニャに所属するチリ代表DFガリー・メデルは、171cmと小柄ながらセンターバックと守備的MFをこなす。チリ代表ではセンターバックを任されることが圧倒的に多いが、2013年にカーディフへと加入すると完全に守備的MFとして起用され、チームが降格したこともあり、わずか1年でプレミアリーグの舞台を去った。

 チェルシーのスペイン代表DFセサル・アスピリクエタも同様のケースだ。彼はチェルシーで輝かしいキャリアを築いており、今シーズンも3バックの一角として起用されているが、本職は右サイドバック。3バックとしてはセンターバックも務めているが、やはり178cmの身長では4バックの中央を任されるのは難しいのかもしれない。

 マンチェスター・Uで活躍したギャリー・ネヴィル氏も、身長に悩まされた一人だ。子どもの頃は中盤の選手だったが、名門ユナイテッドの下部組織で生き残るためDFに転向。そして右サイドバックやセンターバックで起用されるようになったが、最終的には右サイドバックに落ち着いた。180cmのネヴィル氏について名将サー・アレックス・ファーガソン氏は「あと1インチ(2.5cm)でも高ければ、彼は英国最高のセンターバックになっていたはず」と語ったことがある。そして「彼の父親は188cmもあるので、私なら牛乳配達員を調べるね」と、少し下世話な冗談も付け加えた。

 そんなネヴィル氏も、古巣に加入したL・マルティネスについて「ブレントフォードとのアウェイゲームで彼が4バックのセンターバックを務めるなんて、フィジカル面的に無理だ」と断言している。

 やはり、プレミアリーグのセンターバックには“高さ”が絶対なのか……。今シーズンのL・マルティネスの出来に注目したい。

(記事/Footmedia)

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