【コラム】ぶっつけ本番の1トップは「50点」 目立った本田の勝負強さとコンディション不良

FW本田が自身に50点と採点

【コラム】ぶっつけ本番の1トップは「50点」 目立った本田の勝負強さとコンディション不良

【コラム】ぶっつけ本番の1トップは「50点」 目立った本田の勝負強さとコンディション不良

豪MFジェディナクと競り合う本田圭佑 [写真]=Anadolu Agency/Getty Images

 攻撃陣の右のトライアングルがどうなるか注目されていた11日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選第4戦・オーストラリア戦(メルボルン)。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が勝ち点1以上を確保するために採った秘策は、やはり本田圭佑(ミラン)の1トップ起用だった。2列目右サイドに予選初先発の小林悠(川崎フロンターレ)、トップ下に6日のイラク戦(埼玉)でスタメン落ちした香川真司(ドルトムント)を配するという形は非常にリスクも大きかった。それを承知のうえ、指揮官は思い切った勝負に出たのだ。

 その不安を本田がいきなりかき消してくれた。開始5分に原口元気(ヘルタ・ベルリン)のボール奪取からカウンター。長谷部誠(フランクフルト)を経由し、タテパスを受けた背番号4は反転して相手最終ラインの裏にワンタッチでスルーパスを通す。これに反応した原口がGKとの一対一から左足を一閃。敵地での待望の先制点を大黒柱がアシストしたのだ。

「元気は俺が持った時に早く動き出しすぎる傾向があった。『もう1個、溜めて出したい』って話を前々日にしてて、あの場面は元気もだいぶ理解して、1個遅らせて出たことでオフサイドにもならずに、かつ、DFの重心をうまく生かして逆を取ることができたのはありましたけどね」と本田はしてやったりのお膳立てに納得の表情を浮かべていた。

 2012年10月のブラジル戦(ヴロツワフ)以来の最前線先発にもかかわらず、このプレーを筆頭に、前半の本田は相手陣内で体をしっかりと張って起点を作り、日本の攻撃にリズムをもたらした。本人も「ぶっつけ本番でもあれ1本出せたっていうのは、自分自身にホッとしてる部分もある。僕がやるってことはおそらくゼロトップ風な形で、僕がFWをやることで周りが点を取る可能性が高まると思うんですよ。僕自身が取れなくても、それがよさだと思うんで」と自分の役割をしっかりと理解し、ピッチ上で実践できたという前向きな手ごたえをつかんだようだ。

 けれども、問題は後半だった。オーストラリアが一気にギアを上げ、51分に原口がペナルティエリア内でトミ・ユリッチ(ルツェルン)を倒してPKを献上。これをミル・ジェディナク(アストン・ヴィラ)に決められると、そこからの日本は防戦一方の戦いを余儀なくされる。それがハリルホジッチ監督の選択した戦い方とはいえ、本田は違和感が拭い切れなかったという。

「いいように支配されて…。前半はちょっとだけ『支配させる』っていう感覚でいられたけど、後半は『支配される』に変わった。あれは大きな課題やと思ってます。後半も支配させるゲームプランのまま、2点目を狙いにいけたんであれば、もう少し評価はできたんでしょうけど、後半は反省の方が多かったですね」と彼は不完全燃焼感を露わにしたのだ。

 ミランで今季わずか19分しかピッチに立っていない影響もあったのか、本田自身の運動量も徐々に減り、前からボールを追いかけることもできなくなった。チーム全体が低い位置でブロックを作るようになり、彼にしてみれば、まるで2010年の南アフリカ・ワールドカップの再現のように思えたことだろう。結局のところ、後半のシュートチャンスは皆無に近いまま、残り7分というところで浅野拓磨(シュトゥットガルト)との交代を告げられる。チームも1−1で勝ち点1を確保するのが精一杯。本田は自分自身のパフォーマンスに「50点」という辛い評価を下した。

「妥当な引き分けという意味では、まあ50点くらいの採点になるのかなと。個人的には全然よくなかったし、もっとできたと思う。いつもぶっつけ本番感は強いよね、FWやる時は特に(苦笑)。自分の中である程度、腹くくって特性ではないと分かってる右サイドで『スピードがなくても点取れる』って証明しようと気張ってやってる中で、今回みたいにぶっつけ本番でいきなりFWになったりすると、サイドと求められてる役割が全く違ってくる。悔しいけど、50点くらいにしかならないよね。にわか仕込みのFWではオーストラリア相手には厳しいのかな」と本人は自戒の念を込めてこう語っていた。

 それでも、岡崎慎司(レスター)が左足首ねん挫で3日間の練習欠席を余儀なくされ、マインツで1トップを務めている武藤嘉紀も不在となると、屈強なフィジカルを誇るオーストラリアDFと互角に渡り合えるのはFWは本田しかいない。ハリルホジッチ監督もそう考えたから、あえてこの男を抜擢したのだろう。6年前の南アフリカW杯同様、指揮官のサプライズ起用に最大限応え、得点に直結する大きな仕事を果たした。その勝負強さだけは他の選手には真似できない。今回のオーストラリア戦は本田の存在価値を再認識させる好機となったのではないか。

 だからこそ、このままミランでベンチに座っていていいはずがない。彼自身も「もし試合に出ていなくても、プラスアルファの練習を自分に課して、試合に出ている以上のコンディションで戻ってこられるようにこの1カ月を準備したい」と語気を強めていたが、それはまさに最低ノルマ。11月のサウジアラビア戦(埼玉)は絶対に勝ち点3が求められる大一番。本田にはどんなタスクを与えられても十分こなせる状態に仕上げてきてもらわなければならない。

文=元川悦子

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