【コラム】山村和也、トップ下で新たな才能が開花…目指す理想は“あの名選手”

【コラム】山村和也、トップ下で新たな才能が開花…目指す理想は“あの名選手”

トップ下で定位置を掴んだ山村和也 [写真]=Getty Images for DAZN

 山村和也のパフォーマンスを今シーズン初めて見るファンは、ほとんどが生粋のトップ下の選手だと思うはずだ。セレッソ大阪の1トップを務め、山村の近くでプレーする機会の多い杉本健勇も、意外な発見だったとばかりに「すごくやりやすいんですよ」と言葉を弾ませる。
「本当にキープ力があるし、テクニックもあるし、走れるし、守備もできるので」

 トップ下の選手に求められる要素を、ハイレベルで搭載しているのだから無理もない。もっとも、杉本が言及した山村の武器には追加すべき項目もある。186センチ、80キロの恵まれたボディに宿る高さと強さ、そして非凡な決定力だ。

 大宮アルディージャのホーム、NACK5スタジアム大宮に乗り込んだ20日の2017明治安田生命J1リーグ第12節。セレッソの1点リードで迎えた76分に、山村がひときわ大きな存在感を放った。

 ソウザが蹴った右CK。大宮ゴール前でフリーになった山村は勢いをつけて飛びあがり、最高到達点から豪快なヘディングを見舞う。反応できなかった大宮GK塩田仁史が、その場に尻もちをついてしまうほどの強烈な一撃がセレッソの連勝と4位浮上を決めた。

 これで6ゴールの杉本に続き、マテイ・ヨニッチと並ぶチーム2位の4ゴール目。2012年から4年間所属した鹿島アントラーズ時代にあげた総ゴール数に、わずか2カ月半で追いついた。

 鹿島での主戦場はボランチとセンターバック。4位に入賞した2012年のロンドン五輪ではボランチを務め、杉本や山口蛍、清武弘嗣とともに戦った。セレッソに移籍した昨年も然り。だからこそトップ下でプレーする山村に周囲が衝撃を受け、山村本人も新しい自分との出会いに胸をときめかせた。

「トップ下でプレーするのは(国見)高校時代以来ですし、僕自身も本当に意外だったというか、できるのかなとちょっと半信半疑の部分もあったんですけど。最初は楽しみながらプレーすることができたし、周りのサポートもあって少しずつ慣れてきているのかなと思っています」

 ジュビロ磐田とのJ1開幕戦をリザーブのまま終えた山村は、続く浦和レッズとの第2節で2017年初出場を果たす。1−3と2点のビハインドを追った73分。託されたポジションはトップ下だった。

 それまで杉本と2トップを組んでいたキャプテン、柿谷曜一朗が中盤の左サイドに回り、山村とともに前線で起点を形成。試合は敗れたが、攻守両面で前半から圧倒されていた流れを幾分押し戻している。

 スコアレスドローに終わった磐田戦と浦和戦では、2月に入ってスペイン1部のセビージャから電撃的に復帰しながら、右のでん部から太ももの裏にかけて違和感を訴えていた清武を欠いていた。ゆえに山村のトップ下起用は、清武復帰までの時限措置と見られていた。

 しかし、今シーズンから指揮を執るクラブOBの尹晶煥監督は、シーズンの開幕へ向けたキャンプのなかで、山村が秘める異なる可能性に気がついた。練習試合などでトップ下を務める光景に、今シーズンから強化部門のトップとなるフットボールオペレーショングループ部長に就いた、レジェンドの森島寛晃氏は「驚きと言えば驚きでしたけど」と目を丸くしながら、うなずける部分もあったと振り返る。

「高さを生かしながら起点になれるし、(杉本)健勇とのコンビネーションも良い。もともと足元の技術が非常に高いし、昨年もJ2で6ゴールを挙げているように点を取る能力もある。何よりもトップ下の位置で守備のスイッチを入れてくれる。スピードはそれほどないですけど、運動量は本当にすごいので。彼の動きが効いてくるというか、チームに良い影響をもたらしてくれると」

 果たして、清武が復帰した北海道コンサドーレ札幌との第3節以降、山村は先発としてピッチ上で共演を果たす。1トップに杉本、トップ下に山村、2列目の左に柿谷、右に清武が入る新布陣は決して偶然ではなく、開幕前から温められてきた秘策でもあった。

「守備でも攻撃でも、距離感を大事にしています。特に僕がサイドに張る時は、バイタルエリアに生まれるスペースを(柿谷)曜一朗や(清武)弘嗣が使えるような動き出しを心掛けています。僕と(杉本)健勇の動き出しのところもかなり整理されてきました。裏に抜けるのか、あるいは足元でボールをもらうのかというところで、僕と健勇が重ならないことが一番大事なので。ちょっとずつですけど全体が連動して、攻撃につながっているのかなと思います」

 山村の中で膨らむ手応えに比例するように、セレッソの調子も右肩上がりに転じてくる。第3節以降は6勝3分け1敗。得点18に対して失点7と、攻守が抜群のハーモニーを奏で始めている。もっとも、長いシーズンはまだ22試合を残す。これからが大事だと、山村も表情を引き締める。

「僕が先発になってからというよりも、チーム全員が献身的に戦えているからだと思うし、今の姿勢を継続していくことが上位進出につながっていく。これからも全員でしっかりとサポートし合っていきたい」

 ポジションやタイプがまったく違うと前置きした上で、好きな選手としてフランス代表やレアル・マドリードで一時代を築いたスーパースター、ジネディーヌ・ジダンを挙げたことがある。尹監督の慧眼に導かれる形で、ジダンが主戦場としたトップ下で挑戦できる日々は刺激に満ちている。

「本当に大好きな選手なので。ただ、僕はボランチの経験から自分がパスを出したかったところを意識しながらパスをもらうようにしているし、センターバックが嫌がるところもある程度分かっているのでそこもどんどん突いて、チームのために戦っていきたい」

 ジダンのサイズは185センチ、80キロで山村とほとんど変わらない。憧れのヒーローの眩しい思い出に自分独自の彩りを上塗りしながら、覚醒を続ける山村がセレッソをもけん引していく。

文=藤江直人

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