【ライターコラムfrom浦和】「この移籍は間違ってなかった」…GK榎本哲也に芽生えたさらなる向上心

【ライターコラムfrom浦和】「この移籍は間違ってなかった」…GK榎本哲也に芽生えたさらなる向上心

今季から浦和に加わった榎本哲也 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 5月10日、韓国のソウルワールドカップスタジアム。AFCチャンピオンズリーグ グループステージ最終戦となったFCソウル戦で、GK榎本哲也は浦和での公式戦デビューを飾った。試合は0−1の敗戦となり、初陣を笑顔で終えることはできなかった。だが、それでも榎本はある種の高揚感に包まれていた。

「またうまくなりたいという気持ちにさせてくれるサッカーでした」

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が志向するサッカーは、リスクを恐れずに自陣でからのビルドアップを非常に大切にする攻撃的なスタイルであり、ゴールの門番であるGKにもフィールドプレーヤーとしてのパスワークが求められる。それは榎本にとって「ずっと守るだけのGKでやってきたのですごく新鮮」な役割だった。浦和で触れるサッカーは、これまでのキャリアで経験したことのないものだった。

 まず、練習の時点で衝撃を受けた。ペトロヴィッチ監督のトレーニングでは毎日のように紅白戦が行われるが、試合と同じ広さのピッチで行われることはまずない。通常よりも狭いフィールドで11人対11人、時にはそれよりも多い人数でゲームが行われるため、選手が受けるプレッシャーは試合以上に強い。

 選手たちはそのスモールフィールドの中で行われる紅白戦でもパスを繋ぐプレーが求められるため、攻守の入れ替わりが実際の試合以上に目まぐるしく、チャンスが即ピンチに変わることも珍しくない。その展開の早さ、受ける圧力の強さは榎本がこれまでのキャリアで感じたことがないものであり、「みんな縦パスをどんどん狙っていって、取られたらすぐシュートゾーンまで来られる。その準備ができてなくて、うまくいかないことがありました。自分の中ではそんなところで取られるという風にやってきていないので」と驚きを隠せないものだった。

 ただ、それでも練習を重ねることで感覚をつかみ、レベルの高いプレーを求められることにやりがいも感じた。そういった中、榎本はACLで実戦のチャンスを得た。試合には勝てず、このチームで求められるGKのプレーに関しても課題が残る内容だったと反省したが、だからこそ心が奮い立った。

「もっとこうしておけば、というのがすぐに出てきました。GKをよく使うビルドアップで、もうちょっと正確に、もうちょっと絡んでいきたかった。余裕もあった中で自分のファーストタッチが悪くて、視野が狭くなったりしたので、そういう部分を向上していけば、もっとビルドアップに参加できると思ったし、今の経験を次に生かすための頭の整理もできた。そういう意味で、すぐにもう一度試合に出たいという気持ちになりました」

 今オフ、榎本は苦渋の思いでサッカー人生そのものだった横浜F・マリノスを離れ、浦和にやってきた。34歳、すっかりベテランと言われる年齢になったが、戸惑うことも珍しくない。堅守が伝統と言われる横浜FMで守護神を務め、リーグ史上2位のJ1通算防御率1.018の数字を残す実績があっても、簡単には活躍できない舞台があった。だが逆に言えば、まだまだ成長できる余地が残されていたということだ。今はそれが嬉しくて仕方がない。

「あと何年、サッカーができるかわからないけど、このサッカーを肌で感じられたのはすごくよかったです。今後のプラスに絶対になります。この移籍は間違ってなかった」

 榎本は今、新たなサッカー人生を楽しんでいる。

文=神谷正明

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