【コラム】ボランチの大黒柱として…山口蛍はかつての恐怖を乗り越えられるか

【コラム】ボランチの大黒柱として…山口蛍はかつての恐怖を乗り越えられるか

トレーニングに集中する山口 [写真]=野口岳彦

 13日の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選・イラク戦(テヘラン)の前哨戦となる7日のシリア戦(東京)がいよいよ翌日に迫ってきた。日本代表は決戦の地・東京スタジアム(味の素スタジアム)で17時半から冒頭15分公開の最終調整を実施。4−3−3の布陣を含めて、戦術や連携面を再確認した模様だ。

 今回は右足小指骨折から復帰したばかりの今野泰幸(ガンバ大阪)が右インサイドハーフで先発出場する可能性が高いため、左インサイドハーフの香川真司(ドルトムント)、アンカーの山口蛍(セレッソ大阪)の2人にはこれまで以上のサポートが求められる。

「(今ちゃんがインサイドハーフに入るのは)、UAE戦を見れば問題ないし、あそこで攻守において出ていけるのはこのチームのストロングポイント。その回数を僕らがさらに増やしていければ、より脅威になると思う。ただ、ワンボランチ1枚しか残らないからバランスは大事。サイドバックの選手も含めてそういうリスクマネージメントが必要になってくる」と香川も中盤の連携強化の必要性を強調していたが、山口がどれだけうまく2人を動かし、守備面で穴を埋めていくかが重要ポイントになるのは確かだ。

「アンカー1枚の場合はリスクマネージメントが一番メインになる。ボランチ2枚だと前にも出て行けるし、サイドを追い越したりとかもあるけど、アンカーの場合は基本的に真ん中にいることが多いので、ポジショニングの違いはあるかなと。センターバック2枚と(アンカーの)1枚がいれば十分だと思うんで、インサイドハーフの2人には自由に前に行ってもらえたらいいと思います」と背番号16をつける男は自分自身の役割を明確に描いている様子だった。

 そんな山口だが、3月のUAE(アルアイン)・タイ(埼玉)2連戦ではやや低調なパフォーマンスが目立った。特に酒井高徳(ハンブルガーSV)と組んだタイ戦ではパスミスを連発。本来の鋭さが影を潜めてしまった。「ハセ(長谷部誠=フランクフルト)さんと今野さんがケガで離脱してしまって、周りも『ボランチは俺しかいないから』と。そのことはあんまり考えないようにしてたけど、どうしても自分の中で気負ってた部分があった。正直、やりづらさは感じました」とタイ戦から数日が経過した後、彼は正直な胸の内を吐露した。

 その失敗を糧にして、セレッソ大阪で気持ちを切り替えて全身全霊を注ぎ続けた結果、チームは14節終了時点で2位に浮上。明治安田生命J1リーグ昇格1年目のリーグタイトル獲得という、かつて柏レイソル(2011年)とG大阪(14年)が果たした偉業に手が届きそうなところまで来た。山口自身もソウザとボランチを組んで水を得た魚のようにイキイキしており、持ち前のボール奪取力のみならず、攻撃の起点となるパス出しや展開なども随所に見せている。2カ月半前の彼とは全く違うプレーヤーになったといっても過言ではないくらいの成長ぶりだ。

 そんな今だからこそ、3月2連戦の屈辱を晴らせるはず。今野は復帰したものの、長谷部という大黒柱が今回も不在なだけに、山口はボランチの大黒柱として君臨する必要があるだろう。

「自分は誰と出てもどういう状況でも自分のプレーを続けたい。セレッソではいい状態でやってるんで、同じようにアクションを起こせるようになっていければいいのかなと思います」と本人も並のないパフォーマンスを目指していくという。

 シリアは自身にとっての重要な試金石になる。というのも、16年3月の2次予選最終戦(埼玉)で鼻骨骨折および左眼窩(がんか)底骨折の重傷を負った宿敵だからだ。あのケガが彼のサッカー人生を微妙に狂わせたのは紛れもない事実。その際、正面衝突したハレド・アルムバイドが今回も帯同しているため、ピッチに立ったら怖さを感じる場面は出てくるかもしれない。「苦い思い出はあるんで、もちろん普通の状態ではないけど、それも乗り越えなくちゃいけない」と山口は自分に言い聞かせるようにコメントしていた。

 その一戦を戦い抜いた後には、昨年10月の最終予選・ホームゲーム(埼玉)で後半ロスタイムにミラクル決勝弾を挙げた相手・イラクが待っている。因縁チームとの2連戦となるだけに、蛍自身も肩に力が入ってしまう部分はゼロではないだろうが、気負ってしまったら3月2連戦と同じ轍を繰り返さないとも限らない。今回はとにかく自然体を心がけて、普段通りのパフォーマンスを出していくべきだ。

「自分を一段階飛躍させるチャンス? そうなればいいですけどね」と静かな闘志を垣間見せた日本のダイナモ。彼の一挙手一投足が日本の命運を大きく左右するといっても過言ではない。

文=元川悦子

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