【コラム】2大会ぶりの栄冠に王手! 快進撃続くラ・ロヒータ、強さの裏に“ブレない信念”

【コラム】2大会ぶりの栄冠に王手! 快進撃続くラ・ロヒータ、強さの裏に“ブレない信念”

U−21欧州選手権で決勝に進出したスペイン代表 [写真]=Getty Images

 スペイン代表の勢いが、止まらない。とは言ってもフル代表ではない。現在ポーランドで開催されているU−21欧州選手権で決勝に進出したU−21代表の話だ。“小さな高貴な赤”、つまり“小さなスペイン代表”という意味の“ラ・ロヒータ”という愛称を持つチームは、準決勝でイタリアに3−1で勝利した。1978年から2年に1度行われる同大会で2013年大会以来の通算7度目の決勝進出だ。6月30日には最多優勝国のイタリアに並ぶ5回目の欧州制覇を懸けて、ドイツと戦う。

 同大会のU−21代表のゲームは、テレビ局『クアトロ』が生中継している。準決勝イタリア戦では実況が何度も「スペシャルなチーム」と連呼し、称えた。それもそのはず。年代別代表とはいえ、メンバーには欧州の各クラブでレギュラーで活躍する選手が揃う。ミランのジェラール・デウロフェウがキャプテンを務め、レアル・マドリードのマルコ・アセンシオが攻撃をけん引し、アトレティコ・マドリードのサウール・ニゲスが中盤で攻守の軸となり、右サイドではアーセナルのエクトル・ベジェリンが再三攻撃に参加していた。

 スペインは11年、13年と連覇を果たしており、13年のチームにはダビド・デ・ヘア、チアゴ・アルカンタラ、イスコ、ダニエル・カルバハル、アルバロ・モラタ、ハビ・マルティネス、コケ、アシエル・イジャラメンディら今はフル代表で活躍する選手ばかりだ。当時もその陣容は注目されたが、今大会のメンバーはそれ以上に注目度が高い。

 1994年1月1日生まれ以降の選手が参加する同大会に挑むU−21スペイン代表の市場価値の総額は2億6450万ユーロ(約336億円)であるとドイツ移籍情報サイト『トランスファーマーケット』の情報を元にスペイン紙『アス』が報じていた。最も市場価値が高いのはアトレティコ・マドリードのサウールで、4000万ユーロ(約50億円)と査定されている。

 今回のチームはこのように市場価値が高い。さらにそれに加えて知名度も高い。彼らの何名かは今がまさに真っ盛りの移籍のニュースにおいても、何度も名前を大きく報じられている。

 準決勝のイタリア戦でハットトリックを達成し、大会3試合5得点と活躍するサウールは、バルセロナの補強ターゲットとして紙面を賑わしている。バルセロナがパリ・サンジェルマンのイタリア代表マルコ・ヴェラッティを獲得できなかった場合は、サウールの獲得に動くというのだ。サウールの違約金は8000万ユーロ(約101億円)と高額だ。かつアトレティコ・マドリードは今夏補強禁止のため、獲得は難しいと予想されている。またアーセナルのベジェリンの獲得、デウロフェウの買い戻しといった話題も紙面を埋める。レアル・マドリードはその高いスキルで攻撃に変化を生み出しているベティスのダニ・セバージェスの名前が獲得候補として挙がっていた。他にも同大会に参加するレンタルで出していたヘスス・バジェホ、マルコス・ジョレンテが新シーズンは戻り、ジダンのチームでプレーするだろうと伝えられている。イタリア代表のジャンルイジ・ドンナルンマほどではないが、移籍市場で名前がクローズアップされている。

 チームを指揮するのは、現役時代にバルセロナ下部組織で育ち、その後バルセロナとレアル・マドリードでプレーし、代表でも各年代でプレーしたアルベルト・セラーデスだ。13年にU−16スペイン代表を率い、14年5月に現フル代表監督フレン・ロペテギがポルトの監督の就任したため、U−21スペイン代表の監督に昇格した。セラーデスは大会前にスペイン紙『エル・パイス』のインタビューでU−21代表の強さの秘密について、こう語っていた。

「16歳以下の代表にすごく重要性を見出しています。なぜなら最初だし、初めてフィルターにかけるのは、すごく難しいからです。毎年60から70人の16歳以下の選手をラス・ロサス(スペインサッカー協会施設)に招集し、トレーニングと親善試合を行います。各州の地域の協会の活動も私たちの探知を助けてくれます。彼らを見て、招集して、そして代表チームで機能するか見極める。マジョラル、アセンシオ、サンドロ、サウール、デニス・スアレス、バジェホ、デウロフェウ、メレ、ベジェリン、ジョニー、彼ら全員はそういうふるいにかけられてきました」

「この年代においてのミスは避けられないものです。ですが、成長過程を進むために、そして毎年20名の選手を入れ替えないためにも私たちが、多くの勘違いをしないことが重要です。私たちがいいU−16をつくることができれば、いい道筋ができます。なぜなら同じプレースタイルでどの年代の代表もプレーしているからです。長くスペイン代表にいればいるだけで、適応するのはシンプルになります」

 16歳の代表に重きを置くことが、セラーデスはスペイン代表の強さの秘訣だと語る。またU−21代表は協会だけの仕事で成功を掴めているわけではないと加える。

「いい指導者といいトレーニングメソッドがある多くのクラブの育成は素晴らしいものです。私たちは協会において、各クラブのその仕事の成果をうまく活かさなければいけません」

 イケル・カシージャス、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタらを中心にスペイン代表はメジャー大会3連覇を達成した。その後、フル代表は国際大会で上位になれていないが、イスコ、チアゴ・アルカンタラ、デ・ヘアらの出現を見て、国民や地元メディアはスペイン代表がすぐさま弱くなるわけではなく、今後も数年はタイトルを狙えるチームであることを実感した。そして今、アセンシオ、サウールらのパフォーマンスを見て、もう世代に関係なくスペインはブラジルやアルゼンチンのように優秀な選手を継続的に生産する下部組織の仕組み、システムを手にできたという確信を得たに違いない。世界を制した国は、自分たちのスタイルに対する確固たる自信、信頼を手にできるからその後もブレることがないので、強い。

文=座間健司

関連記事(外部サイト)