【ライターコラムfrom甲府】5季連続残留を目指す甲府、逆襲の後半戦へ…ポイントは「進化」と「方向性」

【ライターコラムfrom甲府】5季連続残留を目指す甲府、逆襲の後半戦へ…ポイントは「進化」と「方向性」

前半戦14位からどこまで巻き返すことができるか [写真]=Getty Images for DAZN

 ヴァンフォーレ甲府が勝てない。何しろ点が取れない。明治安田生命J1リーグ第9節ヴィッセル神戸戦(1−0/4月30日)を最後に8試合も勝利がなく、直近の4試合は無得点だ。

 8試合のうち4試合は引き分けで、3試合は1点差負け。そんな結果を見れば分かるようにほぼ五分の試合はできている。吉田達磨監督はこう漏らす。「もどかしいんですけど、絶望的ではない。ただ、だから絶望的になっちゃう時もある」

 甲府は13年から4季連続でJ1残留を果たしている。ただ15位、13位、13位、14位という各年度の順位を見ても分かる通り、常に「ぎりぎり」だ。城福浩監督が指揮を執っていた13年には、8連敗を記録したことさえある。当時に比べると内容はずっといい。

「この状況で何か変えれば変わるんだったら変えている。絶望的にダメだというところがあれば分かりますから。そこまでズダズダになってないというところが、いったら一番痛い」(吉田監督)

 13年は後半戦からパトリックとマルキーニョス・パラナを補強。布陣も4バックから5−4−1に変えるテコ入れが奏功して一気に息を吹き返した。攻撃の組織、緻密さをある程度犠牲にしつつ、パトリックという「個」の持ち味を出させる方向に変えた。明確な行き詰まりがあったから、大胆な手を打てた。

 逆に14年はクリスティアーノが機能せず、後半戦から石原克哉と盛田剛平、阿部拓馬というユニットの連携を前面に押し出して浮上した。さて、今季の後半戦はどのような戦いを選択するのだろうか――。

 甲府は17試合を終えて14位。このままの順位を保てばJ1に残留できる。開幕前に各媒体の順位予想を見れば最下位候補筆頭で、それを考えると想像以上にやれているという評価もあろう。しかし勝ち点16は16位大宮アルディージャ(勝ち点14)と1試合でひっくり返る微差。17位サンフレッチェ広島、18位アルビレックス新潟も既に補強や監督の交代といったテコ入れを図っている。甲府と残留を争っているクラブは、人の部分で甲府以上の「プラスアルファ」を持って後半戦に臨んでくる。甲府がここから積み上げられなければ、J1に生き残ることは難しい。

 吉田監督もこう口にする。「今年のJ1は『断トツ弱い』というところが多分ない。3位で上がってきたチームがセレッソ大阪ですから。広島だったり大宮だったりという、誰が考えても『下にはいかないでしょう』というチームが下にいる」

 現在の順位、直近の戦いを見ると甲府の先行きを楽観できない。しかし“何を変えるか”という筋道が見えにくい。クラブも補強は模索しているようだが、今いる戦力より確実の上で、なおかつ予算的に届くという人材はなかなかいない。また外国人選手の枠がアジア枠も含めて4つ埋まっており、そこの活用を図るなら現有戦力を切らねばならない。そういった中でV字回復を果たす作業は容易でなく、ある意味で13年以上に厳しい状況だ。

 昨シーズンの甲府は勝ち点18、総得点18、総失点31の13位でファーストステージを終えた。今季は同じ17試合終了時で総得点10、総失点18となっており、開幕前の公約だった「守備組織の再構築」は果たせている。問題は攻撃に尽きる。

 甲府は直近のリーグ戦をウイルソンとドゥドゥの2トップで戦っている。二人は17試合を終えてそれぞれ1得点ずつ。守備やチャンスメイクでも一定の貢献を見せており、甲府的には個人能力も高い。一方で「ボールを渡せば何とかしてくれる」というほどの違いは見せておらず、コンディションの上昇を見込んで使われている部分もある。

 彼らと中盤、ウイングバックの連携ができればいいのだが、そこに難がある。吉田監督はこう説明する。「連携に関しては全然。いくつかの基準、柱はあるので、そこに対してプレーするだけでも可能性が広がる。ここに来たらここに走っていくとか、判断のベースはまだ半分も行っていない」

 もちろんラストパスやクロス、シュートの“クオリティ”の問題は別にあるが、その解消を待っていたらシーズンが終わってしまう。攻撃の厚みも必要だが、守備のベースを保ちつつそこを一気に上昇させることは難しい。

「3枚、4枚でいかにフィニッシュまで持ち込むかという連携」が甲府は築けるかどうか――。そこに一応の方向性は見いだせる。

 例えばFWが引いてボールを受け、二人目、三人目がどう呼応するか?という典型的な攻撃パターンがある。相手DFがもしFWに食いついてこれば、二人目が空いたスペースを突けばいい。逆に食いついてこなければFWはそのまま受けて前を向き、二人目は近づいてサポートしつつ、三人目がスペースに動き出せばいい。肝になるのはタイミングと距離、角度だが、そういう部分が甲府は開幕から4カ月が経った今も必ずしもスムーズでない。

 甲府のショートカウンターに対しては、相手も的確なリスク管理をするようになっている。開幕直後はフリーでエリア前に出られていた右ウイングバックの松橋優も、警戒されるようになった。ちょっとした強みはすぐに消されてしまうのがJ1の舞台。甲府は新たなプラスアルファを作っていかなければならない。

 繰り返すが今あるベース、今いる選手を活かしつつ連携を作っていくことが当面の方向性ということになるだろう。ただそこが今のペースで「間に合うのか」というリスクもある。チームが個を重んじるにせよ、連携を重んじるにせよ、ブラジル人2トップに見切りをつけるべき時期が来るかもしれない。シーズンの半ばを迎えて甲府は、残留に向けてより一層の進化と、そこに向けたはっきりした方向性が求められている。

文=大島和人

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