【コラム】“悔しさ”を糧に飛翔したDF柳貴博…右サイドの俊英が大立ち回りを演じる

【コラム】“悔しさ”を糧に飛翔したDF柳貴博…右サイドの俊英が大立ち回りを演じる

インパクトを残した柳 [写真]=佐藤博之

 試合前から予感はあった。AFC U−23選手権予選の第2戦、カンボジアとの試合前日に行われたトレーニングで、DF柳貴博(FC東京)は快活なプレーを披露していた。

 3対3の練習ではいきなりドリブル突破でぶっちぎり、守備に回ってもモチベーションの高さを強烈に感じさせる集中力の高さを披露。調子自体も良さそうに見えたが、何よりFIFA U−20 ワールドカップ韓国2017のメンバーから漏れたあとに呼ばれたこの大会へ懸けている、そんな熱い思いが伝わってきた。

「正直に言えば、やっぱり(FC東京のチームメイトであるGK波多野)豪も入っていたし、(FC東京U−18久保)建英も選ばれていたので、自分の代の代表に年下の二人が選ばれて、自分が選ばれていない。それは本当に悔しかった。同じU−18、19(の代表)でやってきた仲間が選ばれる中に自分が選ばれていないというのも本当に悔しかった」(柳)

 代表候補だった選手が世界大会の“落選”に刺激を受け、そこからグッと伸びてくるのは珍しい話ではない。現代表でもFW大迫勇也やDF吉田麻也といった好例がある。共通するのは、その“悔しさ”を次のステージでしっかり表現していたことだ。

 そもそも最後に柳を落選させたのも内山篤監督だが、初めて年代別代表に呼んだのも内山監督である。初招集となったU−18代表の韓国遠征に際し、現状では粗削りな部分があることも認めながら、「でもサイドバック(SB)であのサイズ(183cm)は魅力なんだよね。これをきっかけに伸びてくれれば」と、ポテンシャルの高さを買っての抜擢であることを明かしていた。結局、予選から本大会まで勝負の大会メンバーリストに柳の名前が載ることはなかったのだが、現時点での不足を感じつつも、将来性への評価自体は変わらなかったのだろう。「3年後はやってくれよ」という指揮官のメッセージも感じる選考でもあった。

 そして迎えたカンボジア戦。先発の指名を受け、柳はピッチに立った。「結構、コンディションもいいので」と語りつつ、「ちゃんとした代表の公式戦は初めてだし、こんな(アウェイの)雰囲気の中でプレーしたことはないけれど、楽しみっていうか、いやでも楽しみですね」と明るく笑って試合に臨んだ。

 前半の途中からエンジンが掛かる意欲的なプレーぶりだった。相手が攻撃に人数をかけずに中央を固めてくる以上、突破口がサイドにあるのは必然のこと。SBにとっては攻撃での見せ場が自然と出てくる流れでもあった。「ミス1つでめちゃくちゃピンチのような歓声も沸いてしまうし、本当にアウェイのやりにくさは改めて感じた」と言いつつも、右からの攻撃に絡んで次々と決定機を演出する。ミスもあったが、“量”で勝負しながら、72分にはクロスボールでMF遠藤渓太(横浜F・マリノス)の先制点をアシスト。一つ結果を残しながら、初めての代表公式戦を締めくくった。

「まだまだ攻撃の部分で取られる回数も多いし、つなぎの部分でも簡単なミスが何本もあったので、そこはもっと修正したい。引いた相手でもどう崩すか、もっと頭を使いながらできれば」と反省の言葉も口にしたが、「点を取れない中で、自分のアシストで1点を取れて、チームが落ち着いたというか、もう1回、流れを引き寄せられた。そこはポジティブに考えたいし、良かったと思う」と言って、白い歯も見せた。繰り返すように続けた「本当に、ゴールに絡めたのは自分の中でも良かった」という言葉は、かつて代表候補招集時に残しきれなかった足跡を残せたという実感を表しているようでもあった。

 東京五輪は3年後。サバイバルレースとしての道のりはまだまだ長いが、U−20ワールドカップ組以外からどれだけの選手が伸びてくるのかはチーム力を大きく左右する要素だ。青赤軍団の勇猛果敢な右SBは、そのレースのスタートラインに立つことにまず成功したようだ。

文=川端暁彦

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