“あの誓い”から10年、指揮官の夢はあと一歩届かず…日大藤沢の視線は選手権へ

“あの誓い”から10年、指揮官の夢はあと一歩届かず…日大藤沢の視線は選手権へ

インターハイ準優勝の日大藤沢 [写真]=川端暁彦

 平成29年度全国高校総合体育大会(インターハイ)の男子サッカー決勝が4日に行われ、流通経済大付属柏高校(千葉1)と日本大学藤沢高校(神奈川2)が対戦し、流経大柏が1−0で勝利。見事、9年ぶりの優勝を飾ることとなった。

 喜び弾ける流経大柏の様子を、何とも言いがたい表情で見守っていた男がいた。日大藤沢を率いる佐藤輝勝監督である。自分の感情に整理を付けようとしているような様子だったが、流経大柏・本田裕一郎監督と言葉を交わすと、笑顔もこぼれた。

「『日本一のチャンスあるぞ』と言っていただいたんです」

 佐藤監督はそう言って、あこがれのスター選手から声を掛けられた少年のような表情を浮かべた。実際、この比喩はそれほどズレてはいないだろう。

 佐藤監督が日大藤沢の指揮官に就任してばかりだった07年度、いきなり全国出場を果たした若き指揮官の目に飛び込んできたビッグチームがある。FW大前元紀(大宮アルディージャ)、MF中里崇宏(横浜FC)、DF比嘉祐介(ジェフユナイテッド市原・千葉)らを擁した流経大柏だ。高円宮杯と高校選手権の2冠を達成した、「心技体のすべてを持っていた」姿に心を奪われた。同時にこう誓った。

「就任3年以内に関東大会、総体、選手権のどれかに出る。できなければ辞めるという約束をしていたので、その時にまた約束したんです。『10年以内に日本一になる』と」(佐藤監督)

 だから佐藤監督が日本一を夢見る時は、「いつも決勝の相手は本田先生率いる流経大柏だった」のだと言う。そのための支度も重ねてきた。「なんでウチにはOB会がないんだ?」という疑問から、現在は福岡の強化部長を務めるOBの大物・鈴木健仁氏に頼んで支援体制を作ってもらった。「僕自身はOBじゃないですけれど、OBも一緒になって立ち上がってくれた」(佐藤監督)。

 その鈴木氏からは試合前に「あの時、言っていたとおりになったね」というメッセージも届いたと言う。

 そう、今回の総体は佐藤監督にとって、あの誓いから10年目で迎える大会だった。その舞台で決勝進出を果たし、相手は流経大柏。これ以上ないくらいのストーリーである。運命的なものを感じたのも無理はなく、「リスペクトし過ぎないように」あこがれの気持ちは押し殺し、「絶対に本田先生を越えてやる」という気持ちで臨んだファイナルだった。

 結果から言えば、届かなかった。日大藤沢の良さは残酷なまでに最後まで消されていた。日藤は後半途中からのギアチェンジで今大会幾多の奇跡を起こしてきたチームだが、その後半のシュート数をゼロに抑え込まれた。佐藤監督が「本当に勝負に徹してきたし、選手にも徹底されていた」と脱帽したように、両雄の間に現時点での差があったのは否めない。

 では、佐藤監督と日大藤沢イレブンのストーリーは未完に終わったのかと言えば、これは「否」だろう。まだ一つ、重要なビッグタイトルが残っているし、何よりこの全国舞台で6試合を戦い抜いてファイナルのピッチを踏んだ経験値は、若き指揮官と選手たちにしっかり残っている。

「この6戦のプロセスで得たものを食いつぶすことなく噛みしめて、今後に活かす。百戦錬磨のチームと決勝でやれたことをどう活かすかだと思っている」(佐藤監督)

 敗戦後に「ゼロからのスタート」になった感覚があったかつての日大藤沢とは違う。「いまはゼロではなく、イチからのスタートになる」。チームとしての原点があり、基盤がある。その上でこの経験で得たものを冬へ向かっていかに積み上げていけるかだ。

 当然ながら神奈川の他校は「打倒日藤」という目標で選手権予選で牙をむいてくるはず。まずは「どこが出ても本当におかしくない厳しい予選」へ。

「相手の挑戦を受けるのではなく、イチからやっていきます」

 桜色の準優勝校をまとめ上げた情熱の指揮官は、そう言って次の戦いに視線を向けた。

文=川端暁彦

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