【コラム】力強さと迫力を前面に…武藤嘉紀、1年ぶりの日本代表復帰なるか?

【コラム】力強さと迫力を前面に…武藤嘉紀、1年ぶりの日本代表復帰なるか?

代表復帰を目指すマインツの武藤嘉紀 [写真]=Getty Images

 8月31日のオーストラリア代表戦(埼玉)、9月5日のサウジアラビア代表戦(ジェッダ)の、2018 FIFAワールドカップ・アジア最終予選天王山のメンバー発表が24日に迫った。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が目下、頭を痛めているのがFWの人選だろう。昨年11月のサウジアラビア代表戦(埼玉)から1トップのレギュラーを確保している大迫勇也(ケルン)が右足首じん帯損傷を負い、出場が危ぶまれているからだ。今シーズン、プレミアリーグ開幕2戦連発のベテラン・岡崎慎司(レスター)が好調なのは前向きな要素だが、難易度の高い相手との2連戦を考えるともっと戦力が必要になる。指揮官は国内組の金崎夢生(鹿島アントラーズ)と杉本健勇(セレッソ大阪)のいずれかの招集を匂わせたが、ドイツで気を吐いている武藤嘉紀(マインツ)も有力候補の1人なのは間違いない。

 武藤は昨年9月のUAE代表(埼玉)、タイ代表(バンコク)2連戦で招集され、タイ戦終盤に出場して以来、代表から遠ざかっている。一度は完治したはずの右ひざ負傷を再発させ、復帰までに半年を要したからだ。昨シーズン後半はほぼコンスタントに出場し、マインツの1部残留の原動力にもなった。が、ハリルホジッチ監督は5月末からの欧州組合宿にも招集せず、本人が強く願う代表復帰は叶わなかった。その悔しさを晴らすべく、3年目となるマインツで目覚ましい結果を残して最終予選ラスト2連戦で復帰しようと、本人は躍起になっている。

「自分がベストコンディションだっていうことをしっかりと(ハリル)監督にも見せないと。監督は自分のケガを気にしてくれてるんで、それを見せず、完全復活したところをアピールしてかないといけない。ワールドカップは幼い頃からの夢だし、そこに賭ける思いは強いので、ケガでどん底を味わってきた日々が報われるためにも、代表で活躍するしかない。熱い思いをプレーで見せていかないといけない」と本人も日本を発った6月末、改めて語気を強めていた。

 今シーズンのマインツは2シーズン半指揮を執ったマルティン・シュミット監督に代わり、サンドロ・シュワルツ監督が就任。メンバーもジョン・コルドバ(ケルン)やボージャン・クルキッチ(ストーク)が去り、アレクサンドル・マキシムやヴィクトル・フィッシャーら新戦力が加入した。そんな中、武藤は1トップの軸に据えられ、12日のDFBポカール1回戦・リューネブルガ戦で2ゴールといきなり結果を残した。とはいえ、相手は4部のチーム。真の評価はブンデスリーガが開幕してからと見られていた。

 重要な試金石となったのがは19日のハノーファー戦。今シーズン1部復帰組だが、かつては清武弘嗣、山口蛍(ともにC大阪)、酒井宏樹(マルセイユ)の日本人三人衆が所属していた名門チーム。その最終ラインを担うブラジル人DFフェリペやドイツ人DFフロリアン・ヒュブナーといった屈強な男たちは日本人FWを止めようと凄まじい勢いで挑んでくる。序盤から武藤は何度も体をぶつけられ、削られたが、個人トレーナーとの肉体改造の効果もあって、肉弾戦における絶対的な強さと逞しさ、タフさを前面に押し出す。フィジカル面の迫力は過去2シーズンとは比べ物にならない印象だった前線でターゲットになれるFWを求めるハリルホジッチ監督にとってこうした変化は前向きな材料と見ていいだろう。

 そこにゴールという結果がついてくれば理想的だったのだが、この日の武藤は決定機を立て続けに外してしまう。最初のチャンスは18分、ヒュブナーから奪い取ったボールをドリブルでゴール前まで持ち込んだが、フェリペに追いつかれてシュートまで行けなかった。2度目は32分、ファビアン・フライの縦パスに鋭く反応したシーン。左足シュートは惜しくもGKフィリップ・チャウナーの正面に飛び、ゴールには至らなかった。挙句の果てには後半、たった1回のカウンターから失点を余儀なくされた。まさかの開幕戦黒星に、エースFWも悔しさをひしひしと感じるしかなかった。

「今季の目標は15点。オカ(岡崎)ちゃんががそれ以上取ってるから、自分が越したいという気持ちがありますし、しっかり試合に出続けてチャンスをモノにできれば、決して不可能な数字じゃない」と彼が開幕前に強調していた通り、チャンスを確実にモノにしていけば目標達成は十分あり得る……。それだけの実力とコンディション、チーム内での存在感を今回のハノーファー戦で実証した。

 しかしながら、「FWは結果が全て」と武藤自身が口癖のように話しているように、得点を奪えなかったという厳然たる事実も残された。Jリーグ組の金崎や杉本が直近のリーグ戦でゴールしたのと比較するとややインパクトに欠けるのは確かだ。が、戦っている舞台は全く別。パワーや当たりの部分で外国人選手に負けていない今の武藤が今の代表にもたらすものは少なくないはずだ。

 清武が間に合わず、宇佐美貴史(アウクスブルク)がクラブでベンチ外、原口元気(ヘルタ・ベルリン)も同様に控えという状況も視野に入れると、左サイド要員という位置づけも考えられる。乾貴士(エイバル)より守備面で計算できる武藤を呼ばないのはもったいない。

 果たして、ボスニア人指揮官はドイツで復活しつつあるこの男を抜擢するのか否か。24日の発表が楽しみだ。

文=元川悦子

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