【現地記者に聞く】内田とウニオンの相性とは?「彼のスタイルは間違いなくチームにハマる」

【現地記者に聞く】内田とウニオンの相性とは?「彼のスタイルは間違いなくチームにハマる」

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 DF内田篤人は今夏、7年間在籍したシャルケに別れを告げ、ウニオン・ベルリンに移籍した。ブンデスリーガ2部に属するウニオン・ベルリンは旧東ドイツ出身で、熱狂的なサポーターを擁することで知られている。シャルケファンには“ウッシー”の愛称で親しまれた内田は、新天地でも愛されるのだろうか。ドイツ誌『kicker』でウニオン・ベルリンを含むドイツ北東部担当のアンドレアス・フンツィンガー記者と、2000年から地元紙『Berliner Kurier』で同クラブの番記者を務めるマティアス・ブンクス記者に、新天地ウニオン・ベルリンと内田の相性を聞いた。

■ウニオン・ベルリンが熱いサポーターを惹き付ける理由

ーーウニオン・ベルリンはどんなクラブなのでしょうか?

フンツィンガー記者:これは、『Berliner Kurier』紙(旧東ドイツ時代からの東ベルリンの大衆紙でウニオンに詳しい)のマティアスに聞いたほうが良いでしょうね。

ブンクス記者:ウニオンは、とてもファンに親しいクラブですね。会員であるサポーターは、決定権に関して、話し合いに参加することが出来ます。クラブの会長も、元々はファンの一員として参加し、今の地位についた人ですからね。それに、スタジアムの4分の3が立ち見席というのも、ドイツのサッカーファンにとってはたまらない魅力です。「ドイツサッカー文化」とはまさしく「立ち見席の文化」ですからね。ウニオンファンは「ジッツェン・イスト・フュア・デン・アルシュ(座るのはケツ(野郎)のためだ)」という合言葉があるんです。もちろん、リーグ機構によって定められたルールに従って、座席も増やしますが、意図的に立ち見席が多数を占めるように増築する予定です。

このクラブの特別なところは、選手に対して決してブーイングをしないことです。どんなに結果が悪かろうと、選手が戦っていれば、決してブーイングなどしてはいけません。チームの中から“戦犯”を探すようなこともしてはいけないし、仮に0−4で負けていようが、試合終了まで帰宅の途につくことも許されません。ウニオンは東ドイツ時代も昇格と降格を繰り返すエレベータークラブでした。クラブは常にアンダードッグでしたが、旧東ドイツ中でも人気を集めていました。ディナモ・ベルリンは警察のクラブで、政府寄りだったのに対して、ウニオンは政府に対して完全には同意していない人々が集まるクラブでしたからね。

2001年から2004年までの間には、深刻な破産危機に陥って、ファンたちが「ウニオンのために血を流せ」キャンペーンを展開し、献血をして資金を集めました。合計で146万ユーロ(約2億円)を集め、ライセンスをどうにか取得できました。2004年当時は規模が今と比べてまだ小さかったですからね。スタジアムはファンたちが自ら立てたものです。彼らは病欠したり、年間の有給を使い切ったり、考えられる限りの手段を使って、仕事を休んではスタジアムの建設に励みました。彼らは15カ月の間、どうにか上手く乗り切ったのです。

建設中の2008−09シーズンは、天敵とも言えるディナモのホームスタジアム「ヤーン・シュポルトパーク」でプレーしなければなりませんでした。このシーズンは2部昇格を果たし、チームはリーガ史上初、本拠地外のスタジアムでシーズンを過ごして昇格を果たしたクラブになりました。そのときのシャツには「敵地で昇格を果たしたクラブ」と書かれていましたよ(笑)。全試合敵地で試合をしているようなものでしたからね。

■内田はウニオン・ベルリンで成功するのか?

ーーそんな熱いファンが集まるウニオンで、内田選手は新たなスタートを切る決断をしました。

ブンクス記者:加入会見で、内田は岡崎(慎司)からマインツ時代に同僚だったセバスティアン・ポルター(2017年1月からウニオンに所属)について聞いたと言っていたよ。「ポルターは棚のような選手(優れたポストプレーヤーの通称)だから、彼をマークするディフェンスの選手は青アザができる」とアドバイスを受けたようだ。(ヘルタ・ベルリン所属の)原口元気とも話をして、どこに良い床屋があるか、どこでオフを過ごせばいいか、を聞いたと言っていましたね。

右サイドバックでレギュラーの(クリストファー・)トリンメルは昨シーズンのベストプレイヤーの1人で、今シーズンもインゴルシュタット戦でゴールを決めるなど、欠かせない選手です。それにも関わらず、ファンたちは内田のような選手が来てくれるのはウニオンの成長に非常に良いと見ています。2009年に昇格を果たして以来、ウニオンは徐々に上位に進出していき、この数シーズンは「隠れた昇格候補」として見られるまでになりました。しかし、昇格するにはまだ“青臭く”(経験不足)、常に終盤に失速してしまうのです。

ーー内田選手は性格的にも選手のタイプとしてもウニオンと相性が合いそうですか?

フンツィンガー記者:そう思いますね。

ブンクス記者:先にも行ったように、ファンはブーイングをしません。結果よりも、とにかく選手たちが必死に走り回り、100パーセント全力を尽くす姿を見たいのです。ファンたちは最後まで「血と汗を流し尽くして」びっしょりと濡れたユニフォームに身を包んだ選手たちをピッチ上で見たいのです。

フンツィンガー記者:その点で、常に全力を尽くす内田はシャルケのファンたちに好かれていました。サッカーの話をすれば、ウニオンは4−3−3でサイドバックの激しいアップダウンを要求します。イェンス・ケラー監督はサイドバックが頻繁に上がり、攻撃参加することを望んでいます。内田は、屈強な身体を武器とする相手の潰し役ではなく、クレバーな攻め上がりでチームに大きく貢献するタイプです。その点で、彼のコンディションが整ってさえいれば、ケラー監督が求める条件を全て兼ね備えていることになりますね。それはチームのクオリティを高く押し上げるものです。ウニオンはダブルボランチが中盤のサイドバックが上がったスペースをケアし、サイドバックには頻繁に高い位置を取ることを求めます。彼のスタイルは間違いなく、チームのシステムに上手くハマるでしょう。

ブンクス記者:ウニオンはオーバーリーガでプレーしていた大昔に、日本人選手がプレーしていました。ユズル・オクヤマという選手で、フォワードの選手でした。すねの骨折という大ケガをしてしまい、翌シーズンには移籍していましたが……。とにかく、彼がクラブ史上最初の日本人選手です。内田選手は2番目ですね。当時はファンも少なかったし、ジャーナリストも少なかったので、全く違う世界でしたが……。そういえば、この内田選手の記者会見は、クラブ史上初となる新加入選手のための記者会見ですよ。今までジャーナリストやテレビカメラまで入れて行うような公式の記者会見はしたことがありません。監督の場合はありましたが、普段は合流した翌日に練習場で記者たちがちょっとした囲み取材をするぐらいです。

ーー内田選手の今後の見通しはどうなると見ていますか?

フンツィンガー記者:彼の契約は今シーズンいっぱいです。まだ解釈の域を出ないのですが、契約の中に何らかのオプションが組み込まれているようです。まだ何ともいえませんが、この12カ月間でケガなく活躍できるのかを見て、昇格するならそのままクラブに残ることも考えられますね。そして、もしそのオプションが契約延長に関するものなら、問題なく契約延長できるでしょう。仮に、内田選手が活躍して、ウニオンが昇格出来ないようなら、他のクラブも獲得に動き、再びブンデスリーガのクラブでプレーすることも十分考えられます。とにかく将来に関してはまだまだオープンです。彼の今後はコンディションとケガの具合にかかっています。

ブンクス記者:彼は何としてでも日本代表でプレーしたいと言っていました。まずはウニオンで100パーセントの力を出さないと何も始まらないことも分かっています。日本代表が2部の選手を常に選出するほどレベルが低くないことは知っていますからね。仮に昇格を逃すような場合は、移籍の可能性も頭の中にはあるんじゃないか、とは思いますね。とにかく、今はウニオンのために全力を尽くすこと、彼はチームを助けたいと言っていました。他のことはまだまだ青写真に過ぎません。

フンツィンガー記者:始まる前から、あれこれ言ってもしょうがありません。今後のことは、彼が健康でシーズンを過ごせるかに全てがかかっています。彼の能力はすでに証明済みなのですから。彼が万全なコンディションなら、ブンデスリーガのトップクラスの選手です。

取材・翻訳=鈴木達朗

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