【土屋雅史氏のJ3展望】沼津は敵地で連勝を伸ばすと見る…琉球は“黄金世代”のストライカーが活躍

【土屋雅史氏のJ3展望】沼津は敵地で連勝を伸ばすと見る…琉球は“黄金世代”のストライカーが活躍

FW播戸竜二は今季から琉球でプレーしている [写真]=J.LEAGUE

■“熱さ”が魅力! 沼津を率いる吉田謙監督の想い

 昨季は参入1年目ながら、最終節まで優勝争いを繰り広げるなど、J3に強烈な新風を吹き込んでくれた沼津。そのチームの指揮を執っている吉田謙監督の“熱さ”は、周囲を巻き込む大きな力を持っています。

 3チームに優勝の可能性があった昨季のJ3最終節。首位の栃木は勝ち点59、得失点差プラス20。2位の沼津は勝ち点58、得失点差プラス33。3位の秋田は勝ち点58、得失点差プラス19。この中でJ2ライセンスを有しているのは栃木のみだったため、沼津はたとえ優勝しても昇格できる訳ではありませんでしたが、順位表の一番上に立つ可能性のあるチームのプライドを懸けて、栃木をホームで迎え撃つ最後の1試合に挑みます。

 どちらも勝てば文句なく優勝という大一番。沼津は7分に幸先良く先制したものの、前半の内に追い付かれると、ここからスコアが動くことはなく、ゲームは1−1でタイムアップの笛を聞くことになります。この結果、他会場で勝利を収めた秋田が優勝。2位に入った栃木は昇格が決定。沼津は3位という悔しい終焉を迎えることになりました。

 試合後。栃木サポーターが歓喜に沸く中で始まったホーム最終戦セレモニー。マイクの前に立った吉田監督は「栃木SC、昇格おめでとうございます」と切り出すと、「ライセンスを持たない僕の気持ちを聞いてください」と続けます。「僕らは優勝しても、昇格できない。だけど、ピッチに立ったら100%でプレーする。そんな僕らの姿を、今日見ていただいたと思います。必ず僕らは、いつの日か昇格します」。この言葉に栃木サポーターも含めたスタンドからは大きな拍手が。個人的にもここ数年のJリーグにおけるホーム最終戦セレモニーでは、群を抜いて素晴らしいシーンを見せてもらったと思っています。

 その“熱さ”を直に体感するべく、今季のJ3開幕戦は沼津のアウェイゲームに足を運びました。ゲームは先制、追加点、ダメ押しと理想的な展開で3−0と勝利。試合後の会見でも随所に吉田節が炸裂します。「我々としてはスローガンが“前力”。“前力”は前の力と書いて“前力”なんですけど、前に行くことを恐れずに、これからも前に進んでいく、ひたむきにサッカーに取り組む、“ひたむき”とは『何かになりふり構わず熱中しているさま』、『熱中フットボール』がいろいろな人に伝わって、僕ららしく今日できたのではないかなと思っています」「ゴール方向に動き出す回数、エネルギーを『Jリーグで一番を目指すんだ』という、そういう“ソウリョク”、走る力とゴールへの想う力、その“ソウリョク”は絶対に負けてはいけないということで、練習に取り組んできました。その想いがあの3点というゴールに繋がったのかなと思っています」。とにかく熱い!

 ちなみに、“ひたむき”に関しては辞書で意味を調べて、それを選手に伝えたそうです。ところが、吉田監督曰く「いつもそんなことばっかり言ってるから、選手は『また始まったよ』みたいな感じなんです(笑)」とのこと。そう明かしてしまうあたりも面白いですよね。

 盛岡と対峙した前節も、10番を背負うFW青木翔大の決勝ゴールで1−0とホーム開幕戦を勝利で飾り、連勝スタートを切った沼津は『熱中フットボール』がうまく浸透している様子。一方、今節で対戦する相模原は、敗色濃厚のラストプレーでFWチッキーニョが同点ゴールを叩き込み、開幕節で勝ち点1を拾うと、前節も2点のビハインドを追い付いてのドロー。指揮官へ西ヶ谷隆之監督が新たに就任し、選手の入れ替わりも多い中で、粘り強く勝ち点を1ずつ積み重ねたとも言えそうです。ただ、この一戦ではやや沼津の勢いに分があるかなと考え、アウェイ勝利の「2」にマークしたいと思います。

■38歳のベテランフォワードは、プロとしての誇りを胸に今日も走る

 ホームで富山を、アウェイで北九州を相次いで倒し、開幕2連勝という最高のシーズンスタートとなった琉球。そんなチームにポジティブな影響を与えているのが、38歳のベテランストライカーの存在です。

 1999年のFIFAワールドユース準優勝メンバー。イビチャ・オシム監督政権下では日本代表も経験し、昨季までのリーグ戦で積み重ねたゴールは107。その確かな実力と陽気な性格で、行く先々のサポーターから愛されてきたFW播戸竜二。その彼が2018年シーズンの主戦場として選んだのは、Jリーグ最南端のクラブでもある琉球でした。

 コンディションを考慮され、86分からの出場にとどまったものの、まずはホームデビューを飾った開幕節を経て、アウェイのミクスタに乗り込んだ前節の北九州戦。「リードしていようが、リードされていようが、という所はプライオリティとしては後に来て、播戸を30分やらせると。勝っている時には勝っている時のプレーをしてくれるであろうし、負けている時は負けている時のプレーをしてくれる」と信頼を寄せる金鍾成監督が、播戸をピッチへ送り出したのは60分。「30分は俺的にちょっと長かったけど(笑)、しっかりと1−1の状況で『1点決めればいいな』と思っていた」という11番の登場に、アウェイゴール裏のボルテージも一段階上がります。

 そんな琉球サポーターが狂喜したのは、それから14分後のこと。右サイドからDF西岡大志が上げたセンタリングに、播戸が合わせたヘディングは完璧な軌道を描いて、ゴールネットへ吸い込まれます。「どの角度で、どの体勢で、どこに当てて、どこに流し込むというのは、もうだいたい体が覚えてるから」というストライカーの勝ち越しゴールは、そのまま決勝点に。リーグ戦では「福岡で前半でハットトリックして、そのまま消えて以来じゃない?(笑)」という本人の記憶通り、2015年7月18日にレベスタで福岡と戦ったJ2第24節以来となる2年8ヶ月ぶりのゴール。「久しぶりのゴールで、勝ち越しのゴールやったから嬉しかったし、みんな喜んでくれたから、なんか嬉しかったね」。シンプルな言葉に実感が籠もります。試合後はサポーターの前でおなじみの「1、2、3、バーン!」を何度も繰り返すわ、カチャーシー的な踊りを踊るわで、まさに“播戸ショー”。『琉球の播戸』を強く印象付けました。

 個人的にこの日のハイライトは、アップ時に播戸と北九州のMF本山雅志が熱い抱擁を交わしていたシーン。「試合前も『おい、モト無理すんなよ!』という話をしたら、『いや、無理していこうよ!あともう長くないからさ』とかって言ってたから(笑)、ああいうのも『なんか凄くいいな』って思って」と明かしながら、「まあ長くないのは確かやけど、こうやってその中でもやれることというのはあるから、それをやっぱり見せていかなあかんし、下に繋いでいかなあかんと思うし、そういう仕事もあるかなと思いますね」と続けた言葉に、20年に渡ってプロとしてボールを追い掛けてきた男の矜持が滲んだ気がしました。

 いわゆる“黄金世代”も今年で39歳。現役を続けている選手も年々少なくなってきています。それでも彼らの周囲に与える影響はいまだに絶大。「特に同い年のヤツらが、今日も本山(雅志)がやってたりとか、(小笠原)満男とかヤット(遠藤保仁)が頑張ってたりとか、ああいうのが凄く刺激になるし、やっぱり俺もみんなにまた刺激を与えないといけないなと思っていたから、そういう所でゴールを取ってもこれで終わりじゃないし、ここからまたしっかりと、ちょっとずつ積み上げてできたらなと思いますね」。ギラギラ系を地で行くベテランストライカーは、まだまだ貪欲に前を向き続けることでしょう。

 今節ホームで対戦する鳥取も、琉球同様に開幕2連勝とスタートダッシュの真っ只中。新加入のFWレオナルドが2戦連続でゴールを決めれば、帰ってきたFWフェルナンジーニョも安定した活躍を披露するなど、最下位に終わった昨季からの巻き返しを図っています。激戦必至の沖縄県総合運動公園陸上競技場。播戸の活躍にも期待しつつ、今回はホームの琉球が3連勝を手にすると予想。「1」にマークします!

文=土屋雅史

J3は当せんの行方を左右する重要な要素。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ3攻略のカギを語る! サッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/top/)』にて、『今週のJ3(http://www.totoone.jp/j3/)』が好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J3リーグ第3節
2018年3月21日(水)14時キックオフ
SC相模原vsアスルクラロ沼津(相模原ギオンスタジアム)

■明治安田生命J3リーグ第3節
2018年3月21日(水)14時キックオフ
FC琉球vsガイナーレ鳥取(沖縄県総合運動公園陸上競技場)