ドイツ人記者に聞く日本サッカーに“必要なもの”「武器は勇気と積極性」「ユースに優秀なコーチ」

ドイツ人記者に聞く日本サッカーに“必要なもの”「武器は勇気と積極性」「ユースに優秀なコーチ」

日本代表新監督の森保一 [写真]=Getty Images

 日本代表にとって大会前の状況を考えれば“予想外”と言える結果となったロシア・ワールドカップ。

 その結果を次の4年、8年、さらにその先へつなげるために何が必要で、今どこを改善すべきなのか。大手メディア『ESPN』でドルトムント番記者を務め、日本人選手のプレーをよく知るステファン・ブツェコ記者に、W杯を振り返ってもらいつつ、何が必要かを説いてもらった。

 大会2カ月前の監督交代劇にブツェコ記者も「日本のW杯での戦いについて大いに疑問を抱いていた」と考えていたが、「今まで見てきたサムライブルーの試合の中で、最も素晴らしい戦術的パフォーマンスを見せていた」と続け、日本がとった戦略をこう評価した。

「とても入り組んだポジショナルプレーを採用し、高い技術を持つ選手たちにしっかりと合ったスタイルの確立に成功していた。相手からプレッシャーをかけられても、選手たちがトライアングルを作ってポゼッションを保つことに役立ち、チームは受け身ではなく、より積極的なプレーができていた。ボールポゼッションを守備的な手段としても有効に使っていた」

 個人のプレー面においても、「ほぼ全ての選手がとても精確なファーストタッチを持っている。だからこそ安定してボールをキープでき、素早くパスで攻撃を組み立てることができていた。ほとんどの中盤やサイドバックは、決定的なスルーパスをチャンスにつなげることができていた。それは選手が流動的なポジションでプレーでき、マンツーマンの守備に対応しやすくなることを意味している」と、テクニックの高さを評価している。

 ゴール前でのアクションについても「まだ無駄が多い」と前置きしつつ、「1試合の平均シュート数はブラジルW杯が16.3本、ロシアW杯は10.5本だったが、ショットセレクションは確実に良くなっていた。2014年はエリア内からのシュートが半分以下だったが、今回は7割以上となった」と、効率は上がったと向上していると話す。

 もちろん、まだまだ足りない、改善できるところもたくさんある。

「個人のタレント力を考えると、ベスト4や8を目指していくなら、さらに2〜3人のワールドクラスの選手が必要だろう。ロシアW杯では、まだ黄金世代のチームではなかった。次の4年で、より多くの日本人選手がヨーロッパのトップクラブでプレーすることが重要になる。欧州のスカウトは中盤の選手に注目する傾向があるので、特にDFにとっては難しいことだろう。最終的に今大会も、CLの上位クラブで活躍している選手が多くいるような代表が成功を掴むことを証明していた」

 このように守備を課題に挙げたブツェコ氏は、これまでの代表に大きく貢献した川島永嗣、長谷部誠、長友佑都といったベテラン選手の後継者探しが数年かかる可能性を指摘。さらに「センターバックでは吉田麻也の相棒として、より背のある選手が欲しい。それはベルギー戦で如実に表れていた」と、CBの層や身体的な部分を挙げた。

 では今後、日本はどういった道を歩めばいいのか。

「僕の見解として、日本はすでに順調な道を歩んでいると思う。戦術面ではポゼッション重視のスタイルを貫き、よりポジショナルプレーを磨くべきだ。たとえそれが、うまくいかない場面になったとしても、自陣で相手プレッシャーをかわす守備的な手段としてボールキープを強化すべきだと思う。大舞台で自陣に引いて、後方に数をかける守備的なやり方で、日本が成功できるとは思わない。最大の武器は勇気とアグレッシブな姿勢だ。今大会でもボールを敵陣深くまで追いかけていたし、今後もそんな戦い方を見たい」

 戦い方に提言をくれたことに続き、やはり“育成の重要度”が挙げられた。ドルトムント生まれのブツェコ記者。ロシアW杯こそ“失敗”に終わったが、近年最強の名をほしいままにしたドイツは育成を見直し、国を挙げて強化体制を再構築したからこそ、その地位を得た。

「最終的に今後の成功は、どれだけ育成がうまくいくかに懸かっている。多くの才能ある若手を適切に育てるために、ユースアカデミーに優秀なコーチを揃えなければいけない。Jリーグは若手がプロにステップアップするには素晴らしいリーグだろうけど、国際的に高いレベルで経験を積み、視野を広げるためには、多くの選手が海外移籍を必要とするはずだ」

 20年前に比べればはるかに指導者のレベル底上げはされている日本だが、まだまだ欧州をはじめとした強豪国に学ぶべき“サッカーのベース”はある。元イタリア代表GKのルカ・マルケジャーニとマルコ・アメーリアもW杯後に実施した『サッカーキング』のインタビューで、「優秀なコーチ」が日本に必要なものとして真っ先に挙げてくれた。選手のレベルは決して低くはない。あとは、その選手をたくさん増やすため、しっかりと導ける“世界レベルを知る指導者”の存在が、この先求められることになる。

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