【土屋雅史氏のJ2展望】SBとWBを高次元でこなす福岡の実力者…松本vs町田の一戦は首位と3位の大一番

【土屋雅史氏のJ2展望】SBとWBを高次元でこなす福岡の実力者…松本vs町田の一戦は首位と3位の大一番

今シーズンから福岡に加入した輪湖直樹。複数のポジションを高いレベルでこなすことができる [写真]=J.LEAGUE

■攻守に堅実なバイプレーヤー…福岡の輪湖は今節も左サイドを駆ける

 岐阜と新潟相手に連勝を達成し、現在7戦無敗と好調の15位・栃木が、こちらも甲府に水戸と続いた直近の2試合で連勝を飾り、4位につけている福岡とグリスタで激突する第29節。このゲームからは福岡の左サイドを支えている実力者をご紹介したいと思います。

 輪湖直樹、28歳。今シーズンから福岡でプレーしているレフティは、4バック時の左サイドバックと3バック時の左ウイングバックを高次元でこなし、ここまでのリーグ戦では鈴木惇、ドゥドゥに続くチーム3位の出場時間を誇るなど、加入早々から井原正巳監督の厚い信頼を勝ち得ている印象があります。

 茨城県は北相馬郡藤代町の出身。2つ上の兄が在籍していた柏U−12へセレクションを経て入団すると、小学6年時には既に年代別代表にも招集されており、その時に衝撃を受けたのが柿谷曜一朗とのこと。「とにかく上手かったです。『サッカーの才能があるってこういうことなんだな』っていう感じですよね」と笑いながら話してくれましたが、2010年から徳島で2シーズンに渡って一緒にプレーしたこともあって、非常に仲が良いことも教えてくれました。

 順調にU−15、U−18と昇格していくなかで、高校3年時にはトップチームのキャンプに参加したものの、フィジカルの違いも含めたプロとの差を痛感。大学進学を志しますが、2日間の練習参加で彼の才能を見極めた甲府が、正式に獲得オファーを出すと、熟考の末に加入を決意。2008年シーズンからプロサッカー選手としての人生を歩み出すことになります。

 いきなりリーグ戦28試合に出場するなど、華々しいルーキーイヤーを過ごしましたが、以降は前述した徳島時代も含めてなかなか実戦経験を積むことができません。そんな輪湖にとって1つの転機となったのが、2012年から2シーズン所属した水戸。柱谷哲二監督の下、主力選手としてコンスタントな活躍を見せ、再び自信を回復することに。以前に水戸時代について尋ねた時にも、「自分のプレーが良くない時も使い続けてもらったということも哲さんには本当に感謝しています。本当に試合経験をたくさん積めた2年間でした」と当時を振り返っていました。

 2014年には「もう出た時から戻れないと思っていましたし、さらに年数を重ねれば重ねるほど『戻るのは無理だな』と感じていました」という古巣の柏へ復帰すると、下部組織時代にも指導を仰いだ吉田達磨氏が監督に就任した2015年シーズンに、左サイドバックの定位置を確保。攻守に堅実なプレーを計算できるバイプレーヤーとして、存在感を高めていきました。

 個人的に印象深いのは2015年AFCチャンピオンズリーグのグループステージ第3節。山東魯能を相手に、1−1の同点で突入した後半アディショナルタイム。右からクリスティアーノが上げたクロスへ、全力で走り込んでヘディングを叩き込んだのは、なんと171センチの輪湖。チームを救う劇的な決勝ゴールに、「何であの位置にいたのか分からないですけど(笑)、自分の強い気持ちを見せられたと思います」と非常に頼もしく語ってくれた姿は、あのゴールシーンとともに今でも強く記憶に残っています。

 古巣との連戦となったここ2試合もフル出場を果たし、勝利の瞬間をピッチで味わった輪湖の活躍にも期待したい今回のゲーム。とはいえ、栃木も負けにくいチームになっていることを考慮すると、ここはお互いに良い所を出し合った結果のドローを予想。「0」にマークします!

■松本の右ウイングバックを務める岩上…高校3年間は「貴重な時間」

 怒涛の5連勝で首位を堅持し続けている松本と、リーグ戦ではここ5戦負けがなく、1試合消化が少ないなかでも3位と好位置の町田がぶつかる、今節屈指の好カード。この90分間で注目したいのは、チームの中で最も大きな“47”という番号を背負う、松本の右ウイングバックです。

 3シーズンぶりに緑のユニフォームへ袖を通すと、開幕からの3試合こそベンチスタートだったものの、第4節からは右のウイングバックという新たなポジションの役割をきっちり消化し、以降はレギュラーの座を確保し続けている岩上祐三。数字的にもここまで5得点・4アシストと結果を残しており、キャリアハイだった2014年の8得点10アシストに迫る勢いで、チームに活力をもたらしています。

 茨城県は古河市の出身。2人の兄の影響でサッカーを始めると、小学校高学年の頃には県選抜へピックアップされるまでに。当時の選抜のチームメイトには横浜FMの大津祐樹がいたらしく、「彼は昔から足元の技術があったと思いますし、凄く身長も大きかったですね」と当時を思い出してくれました。

「なんか僕の中で『茨城から出たい』という感じがあった」という高校時代は、栃木の佐野日大高校や埼玉の花咲徳栄高校という選択肢もありましたが、群馬の前橋商業高校への進学を決意。「いざ入学してみると部員の数も多いですし、上手い選手も多いですし、なおかつ上下関係も厳しかったので、『うわあ、マジかよ』と思いました(笑)」という岩上にとって、前橋は自宅から通える距離ではなかったため、1人暮らしをしながらサッカーに打ち込む日々がスタートします。

 1年時の3年には、今シーズンから鳥栖でプレーしている高橋秀人も在籍。県内では前橋育英高校と双璧をなす実力を有しながら、最大の目標だった高校選手権での全国出場は一度も叶わず。2年時と3年時はともに予選決勝で前橋育英に敗れたのですが、私が現場で取材した3年時の決勝では、本人も「ポジションはあってないようなものだったので、自由にやらせてもらっていました」と笑う“超フリーマン”とも言うべき役割を担ってチームを牽引。その頃から攻守のトータル的なバランス感覚は、かなり優れたものがあったように感じていました。

 岩上にとっての高校3年間は、今でも大事にしている貴重な時間。「良い想い出です。あの時は『地獄だ』と思ったこともありましたけど(笑)、今から思うとそれが笑い話になって、いつになっても何回繰り返して話しても面白いので、そういう意味でもあの3年間は良かったです」。前橋の地で得た友人とはもちろん今でも交流があるということです。

 以前彼にいろいろな話を伺う機会をもらった時、とりわけ憶えているのは「よく『好きな選手はいますか?』って聞かれることもありますけど、好きな選手を作ってしまうとその選手を真似してしまう気がするんです。それと同じで、夢を作ってしまうと、その目的を達成した後の自分が怖いなと。達成したらそこで終わりという感じになってしまうかもしれないので、あえて作らないようにはしています」と話してくれたこと。この言葉に岩上のサッカー哲学や、ひいては人生観も凝縮されているような気がして、強く印象に残りました。

 首位と3位が直接対峙するビッグマッチ。比較的堅いスタイルで勝ち点を積み上げてきた両者だけに、おそらくはロースコアでの結末は必至。その状況でこそ生きるセットプレーにおいて、キッカーとしてもロングスローワーとしても躍動できる岩上の存在がカギを握ってきそうな90分間ですが、今回は松本がアルウィンで勝ち点3を奪い取ると予想。「1」で勝負します!

文=土屋雅史

予想難易度が高いとされるJ2は、toto当せんのカギを握る重要な要素の一つ。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ2を徹底解剖する! 『今週のJ2(http://www.totoone.jp/j2/)』はサッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/)』にて好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J2リーグ第29節
2018年8月18日(土)19時キックオフ
栃木SCvsアビスパ福岡(栃木県グリーンスタジアム)

■明治安田生命J2リーグ第29節
2018年8月18日(土)19時キックオフ
松本山雅FCvsFC町田ゼルビア(松本平広域公園総合球技場)